原点回帰で過去作を意欲的に復活させるカルティエ。2023年は、なんと伝説ともいうべき「タンク ノルマル」をラインナップに加えた。しかも、外装の加工精度は今のカルティエなのだから申し分ない。ただし、ブレスレット付きは、プラチナケースと18Kイエローゴールドケースがそれぞれ限定100本ずつ。正直、お金があれば欲しい1本です。
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
2023年4月9日掲載記事
50年ぶりに復活した「タンク」の原点
カルティエの過去作をリバイバルさせる「カルティエ プリヴェ」。2023年に加わったのは、王道中の王道である「タンク ノルマル」だった。
1917年に登場したタンク ノルマルは、傑作タンクの原型となったモデル。後のタンクに比べてケースが正方形に近く、ケースも全体的に太い。カルティエはこのケースを1973年に復刻させて以降、長らくラインナップに加えてこなかった。しかし2023年に、満を持してプリヴェに加えたわけだ。
『クロノス日本版』やwebChronosで何度も取り上げてきた通り、マニュファクチュール化を進めて以降、カルティエは時計の質を大きく高めてきた。ムーブメントを内製し、続いてはケースとブレスレットを自社で製造する。その狙いは、時計としての完成度を高めることだった。
「パシャ」「サントス ドゥ カルティエ」など、近年のカルティエが作る時計は、いずれも細部までよく出来ている。とりわけ自社製のブレスレットは、20年前のカルティエを思えば別物であり、ひょっとして同じ価格帯では最も優れたもののひとつ、かもしれない。
そんな今の加工水準で、タンクの原型がリバイバルしたのだから、一部の時計好きや関係者が大騒ぎするのは当然だろう。23年のウォッチズ&ワンダーズで会った多くの時計関係者(彼ら・彼女らの大多数はマニアだ)は、見るべき時計のひとつにタンク ノルマルを挙げていた。
高い外装クオリティはやはり現代のカルティエだからこそ
本作で見るべきは、やはりオリジナルを再現したケースである。厳密に言うと、細かなモディファイは加えられているが、タンク ノルマルのコードからは逸脱していない。
かつてもカルティエはタンク ノルマルをリバイバルさせたが、加工技術の上がった新作のほうが明らかに出来は良い。角が立ち、面の歪みが小さいケースは、1917年のオリジナルもそうだったのではないか、と思わせるものだ。
感心させられたのは風防である。ガレットのように中心が盛り上がった風防は、なんとサファイアクリスタル製。造形を優先するプリヴェコレクションは、その多くが有機ガラスを採用してきた。
筆者はその風合いを好むが、実用性を考えれば、サファイアクリスタルの方がもちろんいい。また、防水性能もちゃんと3気圧あるし、リュウズのガタもよく押さえられていた。
用意されたのは7種類。ケース素材は18Kイエローゴールドとプラチナのみ。それぞれアリゲーターストラップ付き(各限定200本)と、ブレスレット付き(各限定100本)があるほか、限定50本生産の18イエローゴールドとプラチナケースのスケルトンモデルと、そこにダイヤモンドをあしらったPtスケルトン(限定20本)がある。