キングセイコーゆかりの地である亀戸にちなみ、縁起の良い「亀甲紋」をダイアルに型押しした記念モデル。現行キングセイコーの優れたパッケージングが魅力の1本である。
搭載するCal.6R31は約70時間のパワーリザーブを備え、マジックレバーによる高い巻き上げ効率も期待できる。自動巻き(Cal.6R31)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径37.0mm、厚さ12.1mm)。10気圧防水。世界限定1200本。23万6500円(税込み)。
Text by Shin-ichi Sato
Edited by Kouki Doi (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2023年5月号掲載記事]
「亀甲紋」ダイアルのキングセイコー
キングセイコーの名は、2021年に限定モデル「SDKA001」として復活後、22年にレギュラーモデルとしてラインナップされることとなった。発表当初に筆者は、ケース径37mmのサイズ感とノンデイト仕様は、やや玄人向けの趣のある組み合わせであると感じていた。
本作はこのレギュラーモデルをベースとしたセイコー腕時計110周年を祝う記念限定モデルである。その選択は、セイコーにとってキングセイコーが重要なコレクションであるのと同時に、人気も高まっていることを示しているのであろう。
ダイアルには、かつてのキングセイコーを生み出した亀戸の地名から着想を得た「亀甲紋」の型打ち模様があしらわれ、ダークブラウンに仕上げられている。近年のセイコーは、ダイアルに凹凸を与える手法を積極的に採用しており、その技術が本作にも注がれている。このような凹凸による表現は模様を印刷するのと異なり、差し込む光によって見栄えが大きく変わり、思いもよらぬ表情を見せる面白さがある。ダークブラウンのグラデーションも奥行き感を生み出すのに寄与している。
本作は従来モデル同様に、エッジの効いたケース造形とブレスレットを備える。特に、ブレスレットの仕上がりが良く、筆者がキングセイコーを高く評価する理由のひとつだ。さらに本作には交換用として専用バックルを備えたレザーストラップが付属する。接続部の両側2点をステッチで留めるカジュアルなデザインで、フォーマルなデザインの選択が多かった頃からの変化を感じる。これは、腕時計の幅広い楽しみ方の浸透や若年層へのアプローチの成功を反映しているのかもしれない。
このような背景の中、本作を通じてキングセイコーへの注目度がさらに高まることを筆者は期待している。
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