新社長のジャンマルク・ポントルエが就任して以降、ライフスタイルを全面的に打ち出したパネライ。しかし2023年は、全面的に「ラジオミール」を打ち出した。見るべきは、レトロ風の仕上げ。往年からのパネリスティなら、感涙間違いナシの快作だ。
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
2023年4月16日掲載記事
文字盤はじめ、エイジド加工が目を引く
新社長のもと、ラインナップの整理を続けてきたパネライ。ワイヤラグのラジオミールは、パネライの歴史を強調するだけでなく、コンプリケーションのベースと再定義されなおした。その方向性を強く打ち出したのが、2023年のラジオミールだ。目を引いたのはレトロ風の仕上げを加えた、「ラジオミール トレ ジョルニ」である。
このモデルは、2022年の末に、ブラック(PAM01334)とブルー(PAM01335)の文字盤でリリースされた。文字盤は荒らしたようなラッカー仕上げで、ケースにも、細かいブラスト処理が施されていた。レトロ風のディテールを好んできたパネライは、いよいよ、使い込んだような仕上げ採用するようになったわけだ。
今年、このラジオミール トレ ジョルニに追加されたのが、退色したようなベージュ文字盤のモデルである。パネライが言うところの「ベージュシェード」文字盤は、周囲を黒く落とした仕上げを持つもの。ただ最近流行のツートーンというよりも、日焼けした感じを出したかったのだろう。
PAM01350。トレ ジョルニとは、“3日間”の意味。その名の通り、約3日間のパワーリザーブを持つ。2022年のモデルに比べて、よりエイジング感が強調された。手巻き(Cal.P.6000)。19石。2万1600振動/時。SSケース(直径45mm)。100m防水。93万9400円(税込み)。
ラッカーの色味だけで色あせを表現しているが、違和感はない。ツヤが残っているとあざとく見えるが、パネライはツヤを上手くコントロールすることで、落ち着いた印象とした。
併せてラジオミール トレ ジョルニは、ケースにもエイジド加工を施している。詳しい製法は不明だが、鏡面で仕上げたケースに、弱くブラストを当てているのだろう。その証拠に、ケースの角はきちんと残っている。
個人的には、もうすこしムラのあったほうが好みだが、パネライはあえて押さえたに違いない。アンティークを目指すが、やり過ぎないバランス感が、かつてとの違いか。ともあれ、梨地を思わせる落ち着いたケースの仕上げは、色調を落とした文字盤と上手くマッチしている。
搭載するムーブメントは、自社製のCal.P.6000。約3日間のパワーリザーブを持つ手巻きのムーブメントである。P.3000ほど「玄人好み」ではないが、ベーシックな手巻きとしては十分以上だろう。
ただ、個人的な好みを言うと、リュウズのエッジはもう少し落としてある方が望ましい。社長肝入りのコニカル(円錐型)のリュウズは本作にマッチしているが、操作性を考えれば、まだ角は落とせるはずだ。