今や時計好き以外からも厚い支持を受けるオーデマ ピゲ。2023年の最新作では内外装の融合がより強調された。
今のオーデマ ピゲを象徴するモデル。角張った造形に合わせて、シンメトリーなオープンワークがムーブメントに採用された。仕上げを含む、内外装の統一感は類を見ない。自動巻き(Cal.4407)。73石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。Tiケース(直径43mm、厚さ17.4mm)。5気圧防水。時価。
(右)CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ スターホイール
極端にベゼルを絞ったCODE 11.59。大きな表示が似合うのは当然か。1991年に登場したスターホイールが復活した。軽量化のためディスクはアルミニウム製。自動巻き(Cal.4310)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18KWG×セラミックケース(直径41mm、厚さ10.7mm)。3気圧防水。715万円(税込み)。
(左)CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ ミニッツリピーター スーパーソヌリ
ケース素材や造形に音量・音質を左右されにくいスーパーソヌリ。2023年は他にはない18KWGとセラミックスのコンビケースが採用された。軽くて実用にも向くだろう。傑作Cal.2953の仕上げも申し分なし。手巻き。32石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KWGケース(直径41mm、厚さ13.6mm)。2気圧防水。時価。
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2023年5月号掲載記事]
“内外装の融合”を目指したオーデマ ピゲの2023年新作モデル
ムーブメントに続いて、外装の内製化を果たしたオーデマ ピゲ。ハイエンドなメーカーならば当然だが、明確な狙いを持っていたのが他社との違いだ。目指したのは、内外装の高度な融合。CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ(以下、CODE 11.59)で明確にされた方向性は、2023年の新作でより強調された。
まず見るべきは、「ロイヤル オーク コンセプト スプリットセコンド クロノグラフ GMT ラージデイト」だ。同社はかつてもスプリットセコンドクロノグラフをリリースしていたが、本作はベースが自社製の4400系に置き換わった。しかし、このベースムーブメントは、機構を詰め込み、スペースに余裕がない。対して、ルカス・ラッジ率いる研究・開発チームは、ローターの軸を円状に広げ、内側にスプリット秒クロノグラフ車を加えるという離れ業を選んだ。
ラッジは「このアイデアは『ユニヴェルセル』から転用したもの」と語る。にもかかわらず、ムーブメントは薄くないが、クロノグラフの軸を強固に固定することで、針のブレを抑えている。もっとも、ムーブメントの厚みは8.9mmもあるため、厚みのある「コンセプト」ケースが採用された。内外装の融合で言えば、CODE 11.59のトゥールビヨンと本作は双璧ではないか。
個人的な好みは、新しく加わったCODE 11.59のステンレススティール版である。素材を置き換えただけと思いきや、文字盤は精密なプレス仕上げになり、インデックスも標準的なバーに改められた。また時分針にも「ジェンタ風」の夜光塗料が盛られている。加えて、文字盤外周のフリンジ正面にも筋目が施された。厚いラッカーを強調した18Kゴールド版とは打って変わって、ステンレススティール版では軽快さが打ち出された。ファブリックのストラップもそういったキャラクターを強めるものだ。
新しく加わったSS版。文字盤と針に夜光塗料が加えられたほかリュウズの角も丸められた。落ち着いたグリーン文字盤はPVDによるもの。かなり軽いため取り回しにも優れている。自動巻き(Cal.4401)。40石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41mm、厚さ12.6mm)。3気圧防水。434万5000円(税込み)。
こちらはSSとセラミックスのコンビネーションケース。文字盤外周のフリンジをなだらかにし、角を立てることで既存モデルと見え方を変えている。繊細なパターンを生かすため、文字盤はメッキ仕上げ。自動巻き(Cal.4302)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS×セラミックケース(直径41mm、厚さ10.7mm)。3気圧防水。346万5000円(税込み)。
とはいえ、ありきたりのカジュアルウォッチに仕立てなかったのはオーデマ ピゲだ。角の立った文字盤のプレスは、鏡面仕上げのインデックスと合わせて、本作をカジュアルウォッチではない何かに見せている。また、ケース全面に施された筋目も、あえて弱めである。ストラップをアリゲーターに替えたら、それこそビジネスシーンでも多用できるはずだ。
こういうさじ加減は、直径43mmの新しい「ロイヤル オーク オフショア クロノグラフ」にも見て取れる。造形を突き詰めた前作と異なり、今回は使いやすさにも目が向けられた。造形は従来にほぼ同じだが、リュウズやリュウズガードの角は落とされ、ストラップも交換可能なインターチェンジャブル式に改められた。シャツの袖を傷めにくく、ストラップを替えればスーツにも映えるという打ち出しを、ディテールで示すのはさすがにうまい。
2023年に一新された43mmモデル。造形を引き継ぎつつも普段使いに向くよう見直しが加えられた。抑えられたエッジを含め装着感は軽快だ。食わず嫌いの人にこそお勧めの新作。自動巻き(Cal.4401)。40石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18KYG×セラミックケース(直径43mm、厚さ14.4mm)。10気圧防水。748万円(税込み)。
また搭載するムーブメントも、ロイヤル オークに同じ、最新の4400系となった。大きなフリースプラングテンプで精度と耐衝撃性を高めたこの自動巻きは、スポーツシーンにも向くはずだ。
同じオフショアでも、あえて造形に振り切ったのがクロノグラフのブラックセラミックモデルである。造形は初代1993年モデルにまったく同じ。角張ったリュウズガードやリュウズもそのままである。今のオーデマ ピゲならば、あえて丸めるという選択もあっただろう。事実、その肌当たりは好みの分かれるものだ。しかしあえて造形を変えず、しかも加工の難しいセラミックスで実現したところに、今のオーデマ ピゲらしさがある。
正直、どの新作も決して安くはない。しかし、触れば納得できることは、筆者が保証する。
1993年発表のRef.26238をセラミック外装に置き換えた新作。プチタペストリー模様も再現されている。ムーブメントは最新のCal.4404。切削の手間を考えれば、この価格もやむなし。自動巻き。40石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。セラミックケース(直径42mm、厚さ15.3mm)。10気圧防水。1045万円(税込み)。
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