G-SHOCK誕生40周年を祝う新作「GMW-B5000PS-1JR」をレビュー。再結晶化技術による“煌めく”外装に釘付け!

2023.04.19

インプレッションを行うのは、G-SHOCKの誕生40周年を祝う「リクリスタライズドシリーズ」に属する1本、「GMW-B5000PS-1JR」だ。フルメタル仕様の完成度もさることながら、ケースやブレスレットの表面を再結晶化したきらめく外装は、G-SHOCKに新たな魅力を打ち出している。惜しむべきは、本作が限定モデルであるということか。

GMW-B5000PS-1JR

G-SHOCK「GMW-B5000PS-1JR」
クォーツ(モジュール3539)。パワーリザーブ:発電無しで機能使用:約10ヵ月、パワーセービング状態:約22ヵ月。SSケース(縦49.3×横43.2mm、厚さ13mm)。20気圧防水。12万1000円(税込み)。
佐藤しんいち:文
Text by Shin-ichi Sato
[2023年4月19日掲載記事]


フルメタルG-SHOCKの高い完成度

 今回のインプレッションは、G-SHOCK 40周年を祝う「リクリスタライズドシリーズ」の「GMW-B5000PS-1JR」である。

 最初にお伝えすべきことは、本作には「オリジン」デザインを愛する人が期待するものと新しい表現手法が融合しており、G-SHOCKを使い慣れた人、特にメタルモデルユーザーに何の違和感も生じさせずになじむことだ。そして、本作に限らずオリジンのメタルシリーズは、どのモデルであっても金属外装のツールウォッチにおける局所的最適解である。

GMW-B5000PS-1JR

 これらから導き出される結論は、本作の完成度は非常に高いということである。

 筆者の本心を述べると、今回のインプレッションはこれだけで締めくくりたかった。しかし、そういうわけにもいかない。そこで、本作の特徴的な「結晶粒がきらめく外装」に着目してインプレッションを始めよう。


G-SHOCK 40周年を祝う「リクリスタライズドシリーズ」

 1983年4月に誕生したG-SHOCKの40周年を祝うシリーズとして発表されたのが「リクリスタライズドシリーズ」である。テーマはリクリスタライズド、すなわち再結晶化によりキラキラとした外装を与えた点だ。このテーマに筆者は、これから先のG-SHOCKが、従来のG-SHOCK像を逸脱しない範囲で成長を続けるのではなく、すでに作られたイメージをドラスティックに変化させて新たな魅力を生み出してゆく意気込みが込められているように感じた。

GMW-B5000PS-1JR

 さて、通常のステンレスは微細な結晶が均等に並んでいる状態であり、それを研磨することで鏡面を生み出している。これに対して本作は、ステンレスに熱処理を加えることで大きくワイルドな結晶を作り出す再結晶化処理を施し、表面にキラキラとした模様を浮き上がらせている。

 鋼材の特性は、結晶粒が小さくて均一であるものの方が優れている面が多く、結晶粒をわざと大きくすることは無い(言い切っても良いレベル)なので、本作は逆転の発想であると言えるだろう。

GMW-B5000PS-1JR

 また本作では、深層効果処理が施されていて素材の硬度が高められている。その効果は、コーティングよりも深くまで硬度を高めることができる点だ。その詳細は語られていないが、情報を集めたところ真空浸炭か、それに類する処理であると筆者は予想している。

 処理時間によって硬化層の深さを調整できるため、そのあたりにノウハウが隠れていると筆者は考えている。本作ではその上にチタンカーバイド(TIC)処理を施して、表面硬度を高めている。


特徴的なきらめきと肌触りの良さが特徴の外装

 さて、質感を眺め直してみよう。マットな質感の中にキラリとした結晶が浮かび上がっている。太陽光の下で鑑賞すると金属らしい反射が引き立つが、室内での印象は(適切な表現を探すのが難しいのだが)マットで無機質と言うべきだろうか、写真における「Low-key」な印象である。

 触った印象は金属よりも石に近い。ザラザラ感は無いがマットであることに加えて、どこか肌になじむというか吸い付く感触である。これは表面のTIC処理の影響だろうか、それとも大きな結晶がランダムに析出していることは石との共通点であり、そのことが影響しているのかもしれない。この感触が筆者の好みだった。

 ケースとブレスレットは同じ素材であるはずだが色味が少し異なっていた。(なお、その差は写真の方が目立ちやすいように思う。)また、ブレスレットのコマも、細かいものから荒々しいものまで結晶の出来具合が異なっている。個性ということもできるが、均一な見た目を好む人は注視すべきポイントだろう。

 なお、インプレッションを行った個体はサンプルであり、製品版、あるいは今後登場するかもしれない同様のモデルでも引き続き注目したい点だ。