グランドセイコーが新作で示したのは日本の情景美! 白樺林の雪景色を表現した「エレガンスコレクション SBGZ009」

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2023.04.20

日本ブランドとして唯一、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2023に出展したグランドセイコー。この世界一の時計見本市で発表された「エレガンスコレクション SBGZ009」は、白樺林の雪景色をケースの彫金と文字盤の型打ちによって表現した日本由来のラグジュアリーウォッチだ。

三田村優:写真
Photographs by You Mitamura
鈴木裕之:文
Text by Hiroyuki Suzuki
2023年4月20日掲載記事

エレガンスコレクション SBGZ009

グランドセイコー「エレガンスコレクション SBGZ009」
手巻きスプリングドライブ(Cal.9R02)。39石。パワーリザーブ約84時間。Ptケース(直径38.5mm、厚さ9.8mm)。世界限定50本(うち国内25本)。951万5000円(税込み)。


ジュネーブで披露された日本の情景美

 パレクスポのエントランスを抜けて左に進むと、そこには旧バーゼルワールドを彷彿させる情景が広がる。最前列にはパテック フィリップやロレックス。ブースの造作はメッセバーゼルで目になじんだもので、これはショパールやチューダーなども同様だ。

 そうした中でまったく新しい設えで出迎えてくれるのがグランドセイコー。昨年のウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2022から出展を開始したグランドセイコーのブースは、ブランドフィロソフィーである「THE NATURE OF TIME」を体現するかのような、ウッディな和テイストで出迎えてくれる。

グランドセイコー ウォッチズ&ワンダーズ ブース

 海外市場におけるグランドセイコーの認識は、我々が思うような“セイコーの最上位ブランド”ではなく、完全に独立したものと捉えられているようだ。そうした中で彼らが発信するものは、日本由来のラグジュアリーである。

 グランドセイコーに表現される“日本らしさ”の源流は、最高峰モデルを組み上げるふたつの工房がある土地に由来する。今年大きな話題をさらったテンタグラフなどに搭載される9Sメカニカルは岩手・雫石。印象的なダイアル地のパターンは、霊峰・岩手山の山肌をイメージしたものだ。

 しかし、もっと直裁に日本的な情緒を表現したモデルとしては、9Rスプリングドライブを搭載する「マスターピースコレクション SBGZ009」のほうが印象的だった。

 2021年にGPHG(ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ)のメンズウォッチ部門賞を獲得した“ホワイトバーチ”(白樺ダイアル)の流れを汲む本作は、やはり9Rスプリングドライブや9Fクォーツを手掛ける長野・塩尻のマイクロアーティスト工房の周囲に点在する白樺林をモチーフとしたもの。

 今回は信州・北八ヶ岳の八千穂高原に広がる白樺林の雪景色を造形の中に落としこんでいる。

エレガンスコレクション SBGZ009

 直径38.5mm、厚さ9.8mmのスリムなケースにはプラチナ素材が奢られ、その全面に手彫りによる彫金が施されている。プラチナ特有の静謐な輝きの中に1本1本の刃跡が整然と並ぶ様は、白樺の木肌のようでもあり、一面の雪景色の中に広がる鬱蒼とした林のようにも見える。