いつの時代も人々を魅了する天体の営み。人類は、その神秘を解き明かさんと、天球儀をはじめとする道具を生み出してきた。天文時計は、その延長線上で今なお進化を続ける。
18世紀にオランダの天文家、アイゼ・アイジンガーが自宅の居間の天井に製作した機械式プラネタリウム。これを腕時計として再現したのがこのモデル。自動巻き(Cal.CVDK7386)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約96時間。18KWGケース(直径40mm、厚さ14.7mm)。5気圧防水。世界限定6本。1210万円(税込み)。
Text by Tsubasa Nojima
Edited by Kouki Doi (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2023年5月号掲載記事]
クリスティアン・ヴァン・デル・クラーウが生み出す天文コンプリケーション
ランダムなパターンが神秘的なグリーンのメテオライトダイアルに、月の質感を再現した高精度の3Dムーンフェイズを搭載する。自動巻き(Cal.CVDK7382)。35 石。2 万8800振動/時。パワーリザーブ約96時間。SSケース(直径40mm、厚さ14.7mm)。5気圧防水。748万円(税込み)。
オランダには、天文コンプリケーションを専門とするユニークな時計工房がある。クリスティアン・ヴァン・デル・クラーウだ。同社の天文時計は、流れゆく時間の単位が、天体の動きを基に導かれた尺度であることを再認識させてくれる。同社の時計に共通するデザインが、12時の太陽と、その太陽を通るように弧を描いて配置されたインデックスだ。3時から9時までを真っすぐにつないだ線を地表として、上半分を空に見立てている。
2021年のジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリでカレンダー&アストロノミー賞を獲得した「プラネタリウム アイゼ・アイジンガー リミテッド・エディション」は、オランダの天文家であるアイゼ・アイジンガーが、自宅の天井に製作した、現存する世界最古の機械式プラネタリウムを再現している。その天井を再現したダイアルは、ノスタルジックな印象を醸し出す。6時位置には、太陽系をモデルに水星、金星、地球、火星、木星、土星の公転周期を表す世界最小の機械式プラネタリウムが配されている。
地球に住む我々にとって、最も身近な衛星が月だ。「リアルムーン ヤウレ グリーン・メテオライト」は、その満ち欠けを立体的に表す。6時位置に輝くのは、1万1000年に1日しかズレを生じさせない、世界で最も正確と評される機械式3Dムーンフェイズだ。グリーンに染められたメテオライトダイアルが、その神秘性を増幅させている。
これらの作品にあしらわれた星々は、時針の動きすら忙しなく感じさせるほどに、ゆっくりとした速度で動く。それらが体現する悠久なる時の流れは、見る者の心を肉体から離れさせ、オランダの小部屋や夜空に浮かぶ月に連れて行ってくれることだろう。
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