人気Youtubeチャンネル「腕時計のある人生 Channel」を運営するRYが、2023年に発表された新作時計の中で最も気になったモデルは、ジャガー・ルクルトの「レベルソ・トリビュート・クロノグラフ」だ。レベルソの文字盤反転機能を活かしたクロノグラフウォッチで、驚異的なパッケージングであると評価した。
手巻き(Cal.860)。パワーリザーブ約52時間。2万8800振動/時。18KPGケース(縦49.4×横29.9mm、厚さ11.14mm)。30m防水。563万2000円(税込み)。
2023年4月25日掲載記事
ドレッシーとスポーティー、ふたつの顔を持つ「レベルソ・トリビュート・クロノグラフ」
2023年も各社魅力的な新作時計を発表しているが、中でも最も気になった時計はジャガー・ルクルトの「レベルソ・トリビュート・クロノグラフ」で、特に18Kピンクゴールドモデルである。
レベルソの文字盤を反転させるという斬新な発想と紡いできた歴史、知性と品を感じるレクタンギュラーケースに惚れ込んでおり、レベルソは筆者のWish Listに長らく鎮座している。
通常、筆者にとって18Kピンクゴールドケースは着けこなしが難しいと感じてしまう(目立ちすぎてしまうのではないかと考えてしまう)のだが、レベルソの持つ雰囲気とは絶妙にマッチしているように感じるのだ。特に、黒文字盤と18Kピンクゴールドの組み合わせはシックで粋な大人の雰囲気が香る。
まだまだ程遠いが、いつかはそんな大人になりたいという意味も込めて、現行モデルのラインナップの中では「レベルソ・クラシックデュオ・スモールセコンド」の18Kピンクゴールドモデルが特に気になっていた。
そのような背景がある中で登場したのが今回のモデルである。筆者の求めていたレベルソの黒文字盤×18Kピンクゴールドケース、しかも文字盤を反転させればクロノグラフが登場するというサプライズに興奮した。
元々ポロの競技中に風防を守るための文字盤反転機能だが、現代ではTPOに合わせて楽しむ人が多いと思う。その点、クラシックでドレッシーな“トリビュート顔”の表面と、スポーティでメカメカしいクロノグラフを備える裏面を持つ本作は、数あるレベルソの中でも最も振り幅あるTPOを楽しめるレベルソではないだろうか。
それこそ、パーティからドライブまで何でもござれという懐の深さを感じ、個人的には次のジェームズ・ボンドウォッチに推薦しても良いとさえ思う(おそらく防水性の観点で落選してしまうとは思うが)。
気になるサイズは49.4mm×29.9mmで、厚さは11.14mm。これは同社が昨年発表した「レベルソ・トリビュート・デュオ・カレンダー」(49.4mm×29.9mm、厚さ10.9mm)と同じサイズで、厚さが0.24mmだけ厚いということになる。腕周り15.5cmと比較的小さい筆者にとって、ラグ長さ49.4mmはギリギリ腕幅に収まる範囲で、厚さ11mm前後はレベルソという観点から見れば若干分厚さを感じるというのが正直な感想だ。
しかしクロノグラフという複雑機構を積んでおり、ふたつの文字盤を備えることを考えれば素晴らしいスタイリングであるし、驚異的なパッケージングであるとさえ思える。
スケルトン加工を緻密に施した裏面のダイヤルからは新しい自社製ムーブメント、キャリバー860を鑑賞することができ、リューズ側に備えたプッシュボタンを押すと、厚みを抑えるために採用された水平クラッチを備えたコラムホイールの動きを楽しむこともできる。また、30分積算計はレトログラード式にして、レクタンギュラー型に収まるようにしている点も見逃せない。
レギュラーモデルのレベルソで、ムーブメントを(しかもクロノグラフを)見ることができるとは誰が想像できただろうか。スケルトン文字盤が採用されたことは、非常に喜ばしいことだと思う。
18Kピンクゴールドモデルで563万2000円、ステンレススティールモデルで321万2000円という価格は確かにとても高額ではあるが、これだけのエンジニアリングを搭載して、エレガントなスタイリングを実現していることを考えれば納得できる範囲であろう。
問題は、レベルソが欲しいという欲求は、レベルソを購入することでしか満たされず、他のどの時計によっても決して解消されることがないという点である。それだけレベルソは唯一無二の存在であり、ましてやスケルトン仕様のクロノグラフを積んだ本作はなおさらだ。
筆者のレベルソ探しの旅はまだまだ続きそうである。
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