LUNA SEAのフロントマン、河村隆一氏はアーティストとしてだけでなく、時計好きとしても非凡な審美眼を持つ。価格帯やブランドを問わず、モノの本質を突き詰める姿勢は、普通の時計好きの域を超えている。そんな彼に、ウォッチズ&ワンダーズ2023で発表された新作からベスト5本を選んでもらった。選出された時計は、河村隆一氏が言うところの「真ん中」を体現したもの。河村氏ならではのチョイスを、深いコメントとともに堪能あれ。
・パテック フィリップ「グランド・コンプリケーション Ref.5316」
河村隆一氏が1本目に選んだのは、ミニット・リピーターにトゥールビヨン、そしてレトログラード日付表示針付永久カレンダーを加えたRef.5316。パテック フィリップの「全部載せ」というだけでなく、サファイアクリスタルにオニキスを埋め込んだトランスパレント文字盤を採用した超大作だ。
「パテック フィリップのRef.5316は完成形だと思っていました。以前のモデルはエナメル文字盤を採用していましたが、新しいものはサファイアクリスタルにオニキスを貼った文字盤に変更されましたよね。傑作Ref.5016の系譜を受け継いでいるのに、さらにチャレンジして、更新している。ブラックエナメルで本当に完成していたのに、さらに未来を目指す姿勢には脱帽です」
ミニット・リピーター、トゥールビヨンにレトログラード日付表示針付永久カレンダー、そしてムーンフェイズ表示を備えた超大作。手巻き(Cal. R TO 27 PS QR)。28石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。Ptケース(直径40.2mm、厚さ13.23mm)非防水。価格要問い合わせ。
・IWC「インヂュニア・オートマティック 40」
さまざまなメーカーに目を向ける河村氏。選んだのはリバイバルを遂げたインヂュニアだった。ベーシックだが、このモデルも河村氏のいう「真ん中」だ。
「いろいろなメーカーが、ジェラルド・ジェンタデザインの“ラグスポ”を出しましたけど、まだIWCは手がけていなかった。でもここにきて、あのインヂュニアは生まれ変わって登場した。
ただ復刻版というよりも、ジェラルド・ジェンタさんが76年に完成させたデザインをちゃんと生まれ返らせたというのが正しいと思うんです。どの文字盤色も良いと思ってしまいます。コレは本物の時計メーカーがリリースした時計ですね」
往年のデザインを巧みにリバイバルさせたマルチパーパスウォッチ。約4万A/mという耐磁性も備えている。自動巻き(Cal.32111)。21石。パワーリザーブ約120時間。SSケース(直径40mm、厚さ10.8mm)。10気圧防水。156万7500円(税込み)。
・ショパール「アルパイン イーグル 41 XPS」
時計愛好家たちの注目を集めたアルパインイーグル×L.U.C.の組み合わせ。当然、河村氏も選に加えている。
「今回選んだのはL.U.C.を載せたモデルです。このムーブメントの評判は世界に轟いているでしょう。マイクロローターで、ローターが小さいのにこれだけ美しいと思ったのは、ノーチラスが載せているCal.240とコレですね。
受けなどのバランスもいいし、テンプの動きを見ているだけで幸せになりますよね。また、ブレスレットの作りも、1970年代から80年代のデザインを受け継いだ独自のものだけど、『自分にはど真ん中』なんです。
コマの細かいブレスレットが好き、あるいは大きいのが好きって人に対しても、このブレスレットは『そんなことはどうでもいいからまずは腕に載せて、このしなやかさを評価してください』という潔ささえ感じますね」
傑作、Cal.L.U.C 96.01-Lから日付表示を外したムーブメントを搭載。当然ジュネーブ・シール付きだ。ショパールの「ジャンボ」という評価もむべなるかな。自動巻き(Cal.L.U.C 96.40-L)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。SSケース(直径41mm、厚さ8mm)。100m防水。316万8000円(税込み)。