アクアノート・コレクション初の年次カレンダー搭載機となった「アクアノート・ルーチェ 年次カレンダー」。従来から表示を反転させた新ムーブメントを搭載しつつ、絶妙なサイズ感を狙ったユニセックスモデルの好例だ。
Photograph by Ryotaro Horiuchi
鈴木裕之:文
Text by Hiroyuki Suzuki
2023年4月30日掲載記事
実用コンプリケーションを搭載する初のアクアノート!
実用的なコンプリケーションの製作も得意とするパテック フィリップ。その代表的な機構が年次カレンダーだろう。閏年が絡む2月以外のカレンダーを記憶するこの機構で日付調整が必要となるのは、1年のうちで3月1日のみ。カム&レバーではなく輪列を主体とした機構部分の構成は、信頼性も高い。
そんな同社を代表する実用コンプリケーションを搭載する初のアクアノート・コレクションは、なんとレディスピースとしてスタートを切った「アクアノート・ルーチェ」だった。ただし新作のRef.5261にジェムセッティングはなく、男性でも十分に使えるミディアムサイズウォッチとなった。
自動巻き(Cal.26-330 S QA LU)。34石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KRGケース(直径39.9mm、厚さ10.9mm)。3気圧防水。827万2000円(税込み)。
強いて言うならユニセックスモデルだろうか? フェミニンとマッシブの中間を狙ったコンセプトは、微妙に40mmを割る直径39.9mmというサイズ設定からも読み取ることができそうだ。
12時位置にムーンフェイズを持ってきた新レイアウトの年次カレンダームーブメント「Cal.26-330 S QA LU」は、従来の年次カレンダー機構を上下に反転させたもの。
ただしモジュールの向きを入れ替えたわけではなく、ベースムーブメントのリュウズ位置を左右で反転させている。ベースムーブメント自体は2019年の「カラトラバ・ウィークリー・カレンダー Ref.5212A」に初搭載されたCal.26-330系に刷新されているが、これを左リュウズ仕様に改めたうえで、搭載位置を左右反転させているのだ。
ダイアルを彩るブルーグレーのカラーリングは、下地に設けられたキメの細かいオパーリンによってしっとりとした印象に仕上げられているが、この色味の面白さは同時に発表された「カラトラバ・パイロット・トラベルタイム・クロノグラフ」の18KWGケース(Ref.5924G)と比べてみることで倍加する。
パッと見の印象はまるで異なるのだが、実はこの両者に用いられるガルバニック加工はまったくの同色なのだ。トラベルタイムの下地はサンレイだが、つまりダイアルの反射のみで、色の表情を一変させているのだ。もっとも、アクアノート・ルーチェのオパーリンダイアルのほうからは、ややマットな印象を受けるので、ひょっとしたらフィニッシュワークのクリアコーティングの際に、ツヤ感を微妙に変えているのかもしれない。
2023年のテクニカルハイライトとなった24時間表示のトラベルタイム(Ref.5224)でも、ダイアルの仕上げ(特にインデックスの細かな作り込み)は突出していたが、このアクアノート・ルーチェもなかなか負けていない。シックに見える装いの中に、かなり綿密なプラント細かな作り込みが見て取れるのだ。
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