パテック フィリップにはふたつのラグジュアリースポーツウォッチがある。天才デザイナーであるジェラルド・ジェンタが手掛けた「ノーチラス」と、独特の丸みを持つ「アクアノート」だ。それぞれの特徴とおすすめモデルを紹介していこう。
スポーツウォッチの金字塔「ノーチラス」
ノーチラスはパテック フリップの定番スポーツウォッチである。クォーツの台頭によって混迷の時代に突入した1970年代に誕生し、時計業界に新たなる価値観を示した。
オーデマ ピゲの「ロイヤル オーク」を手掛けた、ジェラルド・ジェンタがデザインを担当している。
唯一無二のフォルム
ノーチラスの特徴は、一目でどの時計を身に着けているか分かる唯一無二のフォルムだ。舷窓をモチーフとしたオクタゴンベゼルや、耳と呼ばれる左右に飛び出した突起が、独特の存在感を放つ。
発売当初はゴールドケースよりも高価なステンレス製スポーツウォッチに、否定的な意見が目立っていた。しかし時が経つにつれ、ラグジュアリースポーツウォッチとして高く評価されるようになっていく。
薄型と防水性能の共存
薄型設計と防水性能が高い次元で共存している点が、ノーチラスの魅力である。一般的に時計は防水性能を高めるほど厚みが出てしまうが、ノーチラスはドレスウォッチさながらの薄さを誇りながらも、120mの防水性能を有する。
特徴的なデザインのひとつである左右の突起部分も、防水性を高めるための重要なパーツだ。一体化構造のケースとベゼルを固定することで、高い防水性能を確立している。
実用性を高めた派生モデル「アクアノート」
アクアノートはノーチラスのデザインをベースに、ベゼルとミドルケースを一体化させることで誕生したスポーツモデルだ。
ファーストモデルから現行モデルに至るまでの変遷と共に、アクアノートならではの特徴を紹介しよう。
アクアノートの変遷の歴史
アクアノートの初出は1997年。ノーチラスに次ぐスポーツウォッチとして発売された。ファーストモデルはソリッドバック仕様で、ラバーベルトを装備した「アクアノート5060」である。その独自性により話題を生むが、わずか1年で製造終了となった。
セカンドモデルは5065だ。基本的なデザインは5060と大きく変わらないが、ケース径が38mmにサイズアップしている。裏蓋はソリッドバックからトランスパレントバックに変更されており、Cal.315/290の精密な動きを楽しめるようになった。
なお、5065と同時に「アクアノート ミディアム 5060」も展開されている。38mm径の5065に対し、5060は34mm径で作られた。
第3世代として製造されたのは、現在もアクアノートの定番として親しまれる「5167」である。ケース径は38mmから40.8mmとさらに大型化され、インデックスの大きさや文字盤中心の凹凸の形状に大幅な変化が加えられた。
従来のアクアノートよりもスポーティーかつ先進的な印象となっており、ステンレスモデルだけでなくゴールドモデルも高い人気を誇っている。
ノーチラスよりカジュアルなデザイン
アクアノートのデザインは、ノーチラスよりもカジュアルな印象を与える。どちらも八角形ベゼルを持つ点は共通しているが、アクアノートはベゼルが丸みを帯びた設計で、ラウンド型に近いフォルムとなっている。
また、インデックスに関しても大きな違いがあり、バータイプが主流であるノーチラスに対して、アクアノートはアラビアインデックスが基本だ。洗練された雰囲気はそのままに、よりスポーティーな雰囲気を高めている。
ブランド初のラバーストラップ
パテック フィリップのストラップは、レザーストラップとメタルブレスレットが基本仕様である。しかし、アクアノートの発表に伴い、ブランド初となるラバーストラップが採用されることになった。
アクアノートに用いられるラバーストラップは、2種類以上の素材を組み合わせたハイテク・コンポジット素材だ。「トロピカルバンド」と称され、防水性、牽引耐性、紫外線耐性に優れる。
ノーチラスのおすすめモデル
ラグジュアリースポーツウォッチの代表格であるノーチラスは、個性的なディティールを持ちながらもエレガンスを放つ。シンプルな3針からグランド・コンプリケーションまで多種多様なバリエーションがあり、いずれのモデルも、その端正な佇まいに目を奪われる。
象徴的なデザインを再解釈「5811/1G-001」
自動巻き(Cal.26-330 S C)。30石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KWGケース(10時〜4時方向の径41mm、厚さ8.2mm)。12気圧防水。1052万7000円(税込み)。
「5811/1G-001」はノーチラスの定番として愛された、5711/1A-10の後継機として誕生したモデルだ。基本的なデザインは5711/1A-10を踏襲しているが、5811/1G-001はステンレススティールではなくホワイトゴールドが採用されている。
ホワイトゴールドの採用によって高級感がより高められており、ノーチラスに新たなる歴史を刻んだ。ケース径は41mmにサイズアップしており、オリジナルモデルと同じ2ピース構成のケースが使われている。新しいモデルではあるが、クラシカルな趣も感じられる。
複数の複雑機構を搭載「5740/1G-001」
自動巻き(Cal.240 Q)。27石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。18KWGケース(10時〜4時方向の径40mm、厚さ8.42mm)。6気圧防水。2283万6000円(税込み)。
コレクション初のグランド・コンプリケーションモデル「5740/1G-001」は、年次カレンダーとムーンフェイズを搭載した贅沢な1本だ。
ケースは8.42mmの極薄設計となっており、その洗練された顔立ちはラグジュアリースポーツウォッチの名にふさわしい。搭載されるムーブメントは超薄型の名機 Cal.240 Qだ。防水性能は6気圧を誇り、高い実用性も有している。
フライバッククロノグラフ「5980/1AR-001」
自動巻き(Cal.CH 28-520 C)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。SS×18KRGケース(10時〜4時方向の径40.5mm、厚さ12.2mm)。12気圧防水。1177万円(税込み)。
「5980/1AR-001」は、華やかな印象を与えるステンレススティール×ローズゴールド仕様で、ノーチラス誕生30周年を記念して発表されたアニバーサリーモデルである。
日付表示機能付きのフライバッククロノグラフムーブメントCal.CH 28 520 Cを搭載した。調整システム付の折りたたみ式バックルは、特許を取得している。裏蓋はトランスパレントバック仕様なので、ムーブメントの繊細な動きを楽しみたい人も満足できるだろう。
アクアノートのおすすめモデル
アクアノートの魅力はカジュアルシーンで存在感を放つことだ。ノーチラスと同じく最高品質のラグジュアリースポーツウォッチであるが、アクアノートはよりアクティブな印象を与える。おすすめのモデルを参考に、好みに合う1本を探してみよう。
黒とシルバーのコントラスト「5167A-001」
自動巻き(Cal.26-330 S C)。30石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。SSケース(10時〜4時方向の径40.8mm、厚さ8.1mm)。12気圧防水。366万3000円(税込み)。
ステンレススティールとブラックダイアルのコントラストが美しい「5167A-001」は、アクアノートの定番モデルとして人気を博している。
最大の特徴は凹凸のある格子状の文字盤デザインだ。ファーストモデル、セカンドモデルよりもモダンな雰囲気を放つ。
ムーブメントには日付表示機能を備えたCal.26-330 S Cを搭載し、防水性能も12気圧防水と非常に優秀だ。
カジュアルなアクセント入り「5968A-001」
自動巻き(Cal.CH 28-520 C)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。SSケース(10時〜4時方向の径42.2mm、厚さ11.9mm)。12気圧防水。829万4000円(税込み)。
「5968A-001」はアクアノートの中でも、カジュアルテイストを強めたモデルだ。フライバッククロノグラフムーブメントCal.CH 28-520 C/528を搭載した機能性にも優れた1本である。
オレンジのクロノグラフ針がアクティブな印象を与えるとともに、オレンジとブラックのラバーストラップが付属するため、付け替えることでドレスチェンジが可能だ。コーディネートや気分に合わせてストラップを選んでみよう。
トラベルタイムモデル「5164R-001」
自動巻き(Cal.26-330 S C FUS)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KRGケース(10時〜4時方向の径40.8mm、厚さ10.2mm)。12気圧防水。946万円(税込み)。
トラベルタイム「5164R-001」は、出発地と現地の時刻を表示するデュアルタイムゾーン機構を搭載する。アクアノートにおける傑作モデルのひとつといってよいだろう。
ローズゴールド製のケースとエンボス加工が施されたブラウンダイアルの組み合わせは、華やかでありながらも落ち着いた雰囲気を放つ。複雑機構搭載モデルでありながら視認性に優れ、ビジネスシーンで活用できるのも大きな魅力だ。
名門が誇るエレガントなラグスポをその手に
ノーチラスとアクアノートは、普通のスポーツウォッチでは満足できない時計愛好家におすすめしたい逸品だ。時計としての華があるだけでなく、機能性や実用性も兼ね備え、さらにはステータスも十分。一度手にすれば、その魅力の虜となることだろう。
紹介したモデル以外にも、ノーチラスとアクアノートにはさまざまなバリエーションがある。それぞれの変遷にも思いをはせながら、長く愛用できる1本を選んでみてほしい。
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