オメガを代表するコレクション「スピードマスター」には、どのような種類があるのだろうか? スピードマスターの誕生と歴史をひもといたうえで、各シリーズの特徴を写真とともに紹介する。この機会にスピードマスターを、より深く理解しよう。
スピードマスターの誕生と歴史
オメガのスピードマスターは、1957年の発表から66年を数え、長年ファンから愛されているシリーズだ。まずはスピードマスターの誕生から、その歴史を振り返ってみよう。
プロフェッショナルラインの誕生
オメガのプロフェッショナルラインは、1957年に誕生した。創設されたスピードマスター、シーマスター、レイルマスターは、今日もオメガを代表する3コレクションである。
シーマスターは海底を探索するダイバー、レイルマスターは鉄道員や技師を対象としている。スピードマスターは元々レーシングモデルとして誕生し、モータースポーツやラリーのドライバーから高い評価を受けていた。
経過時間を読み取りやすい視認性に長けたデザインは、レーサーやレース関係者の注目を集め、現在の「スピードマスター レーシング」にも引き継がれている。
スピードマスターと宇宙飛行の歴史
スピードマスターはレーシングモデルとしての地位を確立したのち、さらに宇宙飛行士や宇宙機関からも高い関心を得ることになる。1962年、アメリカ初の有人宇宙飛行「マーキュリー計画」に臨んだウォルター・シラーが、スピードマスターを身に着け宇宙に飛び立っている。
1965年には過酷なテストを経てNASAの認定を受け、宇宙飛行にも耐えられると認められたスピードマスターは、1969年7月の月面着陸でも使用された。月で着用された経緯から、「ムーンウォッチ」の名が付いている。
アポロ11号の宇宙飛行士バズ・オルドリンが身に着けた時計として広く名が知られ、現在でも多くの宇宙機関に選ばれ続けているシリーズだ。
スピードマスターの代表的な種類
スピードマスターの代表的なモデルといえば、ムーンウォッチ。宇宙飛行と深い関わりがあるシリーズを紹介しよう。月や宇宙に憧れを持っているなら、最初に押さえておきたいシリーズだ。
ムーンウォッチ プロフェッショナル
手巻き(Cal.3861)。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径42mm、厚さ13.2mm)。5気圧防水。107万8000円(税込み)。
「スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル」は、現行モデルだけで21本がラインナップされている。そのうちヘサライトガラス風防(強化プラスティック風防)のモデルは、ナイロン製ファブリックストラップとステンレススティール製ブレスレットの2タイプから選択が可能だ。
サファイアクリスタル風防は、ステンレススティールモデルであれば、レザーストラップとステンレススティール製ブレスレットの2タイプが用意されている。
ムーンウォッチ プロフェッショナルは、月面着陸に使用された1964年の第4世代のスタイルを採用。クラシックな雰囲気をまとうモデルだ。ムーブメントはCal.3861を搭載している。パワーリザーブは約50時間、毎時2万1600の振動数を有する。
ムーンウォッチ プロフェッショナル ゴールドモデル
手巻き(Cal.3861)。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。ムーンシャイン™︎ゴールドケース(直径42mm、厚さ13.2mm)。5気圧防水。657万8000円(税込み)。
ムーンウォッチ プロフェッショナルには、18Kゴールドをケースに使用したゴールドモデルがある。主な素材は、オメガ独自の「セドナ™︎ゴールド」「ムーンシャイン™︎ゴールド」「カノープス™︎ゴールド」だ。
ゴールドモデルには、ブレスレットに18Kゴールドを使用したタイプと、レザーストラップを使用したタイプがある。
セドナ™︎ゴールドはローズゴールド合金で、赤みがかった色合いが特徴だ。小惑星「セドナ」にちなみ、その名が付けられている。
ムーンシャイン™︎ゴールドはイエローゴールド合金で、月の光を思わせる淡く柔らかな印象が特徴。カノープス™︎ゴールドは恒星の名が付けられたホワイトゴールド合金。ほかの18Kゴールドとは違った、白さと明るさを備えている。
ダーク サイド オブ ザ ムーン
手巻き(Cal.3869)。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。セラミックスケース(直径44.25mm、厚さ13mm)。5気圧防水。220万円(税込み)。
「ダーク サイド オブ ザ ムーン」は、月面着陸の際にも使用されたスピードマスター プロフェッショナルのオマージュモデルだ。ブラックのカラーが特徴で、ダークサイドの名にふさわしいスタイリッシュなデザインの時計がそろっている。
このうち、「ダークサイド オブ ザ ムーン アポロ8号」は、はじめて月軌道を周回したアポロ8号ミッションから50周年を記念して作られたが、2024年1月にアップデート。現行スピードマスター ムーンウォッチに搭載される手巻きムーブメントCal.3861をスケルトナイズし、ブラックの地板とブリッジに月面のレリーフをあしらったCal.3869となっているのだ。すなわちマスター クロノメーター認定機となり、1万5000ガウスもの超耐磁性能を有している。
当シリーズにはこのほか、「グレーサイド オブ ザ ムーン」「ホワイトサイド オブ ザ ムーン」など、ブラック以外のカラーをまとったモデルも存在する。
スピードマスター ヘリテージモデル
スピードマスターには、名作を再現したヘリテージモデルがある。各シリーズの特徴と、主な種類を紹介しよう。クラシカルなデザインを愛するファンなら、ヘリテージモデルに魅力を感じるはずだ。
スピードマスター '57
手巻き(Cal.9906)。44石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径40.5mm、厚さ12.99mm)。5気圧防水。146万3000円(税込み)。
「スピードマスター '57」は、1957年に誕生した初代スピードマスターのイメージを色濃く残すシリーズだ。キャンペーンには、ジョージ・クルーニーとヒョンビンが起用され、ドライブシーンでのスピードマスター '57の魅力を感じさせる内容となっている。
スピードマスター '57には、ステンレススティールのブレスレットタイプとレザーストラップの2タイプがある。ダイアルとケースのカラーリングの違いを含めると8タイプあり、好みに合わせて選べるのも魅力。
ムーブメントはCal.9906を搭載しており、パワーリザーブ約60時間、毎時2万8800振動という性能を持つ。薄型の手巻きムーブメントであるため、コンパクトかつ繊細で、クラシカルな雰囲気を感じさせるモデルだ。
スピードマスター キャリバー321 カノープスゴールド™︎
手巻き(Cal.321)。17石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約55時間。18Kカノープスゴールド™︎ケース(直径38.6mm、厚さ13.9mm)。6気圧防水。1408万円(税込み)。
スピードマスターには、キャリバー321搭載のモデルが複数ある。キャリバー321は、月面着陸プロジェクトで使用されていたスピードマスターに搭載された有名なムーブメントだ。
当時の仕様に沿い性能をアップデートした腕時計が、キャリバー321シリーズだ。シリーズ名でもある搭載ムーブメントCal.321はパワーリザーブ約55時間、1万8000振動/時のロービートで、ヴィンテージ感のあるデザインも特徴的である。
キャリバー321搭載モデルの一例である「スピードマスター キャリバー321 カノープスゴールド™︎」は、1957年発表の初代スピードマスター「CK2915-1」のオマージュモデルだ。
ケースにはホワイトゴールド合金を使用、ブラックオニキスのダイアルにはホワイトゴールドの針とインデックスを配している。洗練されたクラシカルデザインが特徴だ。
スピードマスター 2カウンター
スピードマスターには、ふたつのカウンターを備えるモデルがある。2カウンターに分類されるシリーズを紹介しよう。
スピードマスター クロノスコープ
手巻き(Cal.9908)。44石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径43mm、厚さ12.8mm)。5気圧防水。146万3000円(税込み)。
クロノスコープは、1940年代から続く「クロノグラフ リストウォッチ」の流れをくむモデルとして知られている。
クロノスコープシリーズの文字盤には、3つのクロノグラフスケールがプリントされている。スピードと距離を測定するタキメータースケール、脈拍測定のためのパルスメータースケール、音速を利用した距離測定に使われるテレメータースケールの3種類だ。
ムーブメントは、Cal.9908が搭載されている。パワーリザーブ約60時間、2万8800振動/時のメカニズムを持つ。
クロノスコープシリーズは複数のデザインを展開しており、雰囲気の異なるカラーリングを楽しめるのも特徴だろう。ステンレススティール製のブレスレットとレザーストラップを選択でき、さまざまなシーンで活用できるモデルとなっている。
スピードマスター ムーンフェイズ
自動巻き(Cal.9904)。54石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径44.25mm、厚さ16.9mm)。10気圧防水。172万7000円(税込み)。
「スピードマスター ムーンフェイズ」も他のシリーズ同様、スイス連邦計量・認定局(METAS)による基準をクリアした認定モデルだ。METASでは8つの精度テストが行われ、厳しい基準をクリアした時計だけが「マスター クロノメーター」として認定される。
そんな高性能な本作は、さらにタキメータースケールにはリキッドメタルが使用され、他のスピードマスターとは一味違う雰囲気を感じられるのが特徴だ。月の満ち欠けを示す機能を備え、月齢を正確に把握できる。調整が必要となるのは10年後で、リュウズを数回まわすだけで手軽に設定が可能だ。
また、本物に限りなく近い月の姿も特徴である。これはNASAの鮮明な写真を使用しているからであり、宇宙飛行士の足跡までみることができる。
各モデルには、Cal.9904または9905が搭載されている。どちらのムーブメントも自動巻きで、パワーリザーブ約60時間、2万8800振動/時の性能を備えるムーブメントだ。
その他のスピードマスター
スピードマスターは、多数のシリーズから構成されている。ムーンウォッチやヘリテージモデル以外にも、魅力的なモデルは豊富だ。スピードマスターの種類を知る上で、押さえておきたいシリーズを見ていこう。
スピードマスター 38mm
自動巻き(Cal.3330)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約52時間。SS×18Kセドナ™︎ゴールドケース(直径38mm、厚さ14.7mm)。10気圧防水。176万円(税込み)。
「スピードマスター 38mm」は、細身のストラップが特徴のユニセックスモデルだ。男女を問わず、オメガのスピードマスターを楽しめる。
ケースとストラップのバックルに18Kゴールドを使用し、ベゼルにダイヤモンドを加えることも可能な高級感あるデザインが魅力だ。ケースバックには、スピードマスターのシンボルである“シーホース”が刻印されている。
繊細なデザインを好むのであれば、スピードマスター 38mmが候補になるだろう。
淡く彩られたストラップカラーが魅力のカプチーノモデルには、ベゼル内側にあるブラウンカラーのリングにタキメータースケールが搭載されている。時針・分針・クロノグラフ秒針にはホワイトのスーパールミノバが塗布されており、爽やかで明るい印象を与えるモデルだ。
スピードマスター X-33
クォーツ(Cal.5622)。Tiケース(直径45mm、厚さ14.9mm)。3気圧防水。107万8000円(税込み)。
「スピードマスター X-33」には、スカイウォーカーやマーズタイマーなどいくつかの種類がある。
スカイウォーカーは1998年発表のスピードマスター プロフェッショナル X-33の上級モデルだ。欧州宇宙機関(ESA)の認定を受けており、プロフェッショナルから一般使用に至るまでバリエーション豊富な機能を備えている。
マーズタイマーは、欧州宇宙機関との共同開発で生まれたモデルだ。チタン製ブレスレットまたは、NATOストラップの付け替えが可能で、火星の探索に向けた機能が搭載され、火星の時間を表示できるのが特徴だ。
スピードマスターは豊富な種類をそろえるシリーズ
オメガのスピードマスターには、さまざまな種類がある。中でも代表的なシリーズは、ムーンウォッチだ。宇宙飛行に臨んだ飛行士たちが実際に身に着けたモデルを継承し、ヴィンテージ感のある仕上がりになっている。
過去の名作を再現したヘリテージモデルや、月面着陸の際に使われていたムーブメントを再現したモデルなど、多くの種類から選択できるのがスピードマスターの特徴だ。スピードマスターを手に入れたいと考えているなら、まずは気になるシリーズをピックアップした上で、デザインやストラップの種類を決めていくのがよいだろう。