【個性派】視線を奪う変わったデザインを備えた世界の腕時計を紹介

この世には、驚くほどに変わったデザインをしている腕時計が存在する。日々の相棒となる実用時計とは180度違う、個性的な魅力を持った腕時計。本記事では腕時計のデザインを決定づけるポイントについて解説するとともに、ユニークなデザインを備えた6本の時計を紹介する。

デザインを決める要素

腕時計のデザインを決める要素はどこだろうか。モデルの魅力をとくに大きく左右する3つの要素を見ていこう。

ダイアル

ひとつ目にダイアルの色が挙げられる。同じデザインでも白文字盤と黒文字盤では印象が変わるのはもちろん、アイスブルーをはじめとした青文字盤なら一気にトレンド感溢れる仕上がりに。

また、ダイアルの色に加えて、ダイアルに施されるパターンや加工も時計の雰囲気を変える大きなポイントだ。ギヨシェ彫りやブランドオリジナルのパターンなど、加工を施すことでコンセプトやモチーフに沿ったダイアルデザインが作れる。

素材

高級時計に用いられるケース素材の中でもスタンダードなのがステンレススティールだ。とりわけSUS316Lは一般的なステンレススティールの中でもランクが高く、耐磁性や耐食性に優れ錆びにくい。またアレルギーを起こしにくく、肌あたりがなめらかで高級感のある輝きも時計の素材に選ばれる理由のひとつである。

ただし時計の素材はこれだけではない。ステンレススティールに次いでゴールドやプラチナも高級時計にはよく見られる。加えて、昨今ではチタンやセラミックを採用するブランドも増えてきた。

チタンはステンレススティールよりも軽く、セラミックはステンレススティールよりも硬い。それぞれ質感にも違いがあるため、素材が変わるとモデル全体の雰囲気が変わる。

ケース

時計の印象をもっとも大きく変えるのが、ケースの形だ。一般的にはラウンド型が多いが、スクエア型や長方形のレクタンギュラー型も目にすることが多いだろう。こうしたケース形状の中でも変わったデザインとして挙げられるのが、トライアングル型やトノー型、オーバル型、オクタゴン型だ。

トライアングル型はこの後紹介するハミルトンの「ベンチュラ」、トノー型はフランク ミュラーの「トノウ カーベックス」といったモデルが代表的。オーバル型はレディース時計によく見られ、オクタゴン型は多くのブランドが展開しているラグジュアリースポーツウォッチやブルガリの「オクト」、さらにはG-SHOCKなどにも用いられている。

シンプルなスクエアケースでもサイズによってはインパクトが大きくなる。たとえば、ベル＆ロスの「Instruments」シリーズは、手首まわりが隠れんばかりの大判スクエアケースが特徴だ。形だけでなく、大きさもデザインに大きく影響することが分かる。

ダイアルデザイン

まずは、ダイアルデザインに特徴を持つふたつのモデルを紹介する。

F.P.ジュルヌ　アストロノミック・スヴラン

F.P.ジュルヌは、1999年にスイスのジュネーブで誕生した時計ブランド。ブランド名は、創立者であり現代の天才時計師との呼び声が高いフランソワ-ポール・ジュルヌに由来している。

「アストロノミック・スヴラン」は、2019年に開かれたオークション「オンリーウォッチ」にて出品されたプロトタイプを製品化したもの。このモデルはF.P.ジュルヌに所属する2名の時計師しか組み立てられないため、年間生産数はわずか4本のみだという。

ダイアルを見てわかるとおり、本モデルはいくつもの機能と複雑機構を搭載している。デュアルタイムにムーンフェイズ、日の出・日の入り表示、年次カレンダーなど、その機能数はなんと18。これだけの機能を搭載しているにもかかわらず、ダイアル上の情報量はまとまり、リュウズのみで各操作ができる。

パテック フィリップ　コンプリケーション 5935A

パテック フィリップからは、ブランドを象徴する機能を搭載したコンプリケーションを紹介する。ワールドタイムといえばパテック フィリップだが、それもそのはず、ワールドタイム機能を開発したのは同ブランドと時計師のルイ・コティエなのである。

なめらかな輝きを見せる絶妙なカラーのダイアルには、オパーリンにローズゴールドのめっきが施されている。中央部分に施されているパターンはカーボンをモチーフにしたもので、光の当たり方で濃淡が変化し、意匠が際立つようになっている。

世界24のタイムゾーンに対応しているモデルだが操作はいたってシンプル。10時位置に配されているプッシュボタンひとつで表示が変えられるという直感的な操作感も魅力的だ。

個性派ケース

ここからは、ケースの形状や構造が特徴的なモデルを紹介する。

ミナセ　セブンウインドウズ

切削工具メーカーの協和精工を母体とするミナセは、秋田県皆瀬にて誕生したブランドだ。日本の伝統工芸や職人技巧を腕時計に落とし込んだ個性的な国産モデルが人気を呼んでいる。

「セブンウインドウズ」はその名の通り、ケースに施された“7つの窓”が特徴。通常よりも開けた風防に側面、そして裏蓋を含めた窓は空間を強く意識させる。窓から窓へと光が通り、他にはない別次元の立体感と抜け感が感じられる。

この超立体的構造を可能にしているのが、ミナセ独自のケースインケースだ。ケースの中にあるダイアルは、文字盤としての役割を果たしながらも“第2のケース”を担っている。ムーブメントを守るように何層にも重なり、独特の空間を生み出している。

ハミルトン　ベンチュラ

ハミルトンを代表するモデルといえば、トライアングル型のケースが特徴的な「ベンチュラ」だろう。しなやかな曲線で描かれるトライアングルは、高級感を漂わせつつもドレッシーさやモードな雰囲気も感じられる。

個性派として名を馳せるベンチュラだが、実は普段の装いに合わせやすい。メンズ、レディースともに展開されており、とりわけレディースのゴールドカラーケースにキャメルのレザーストラップを組み合わせたモデルは、カジュアルスタイルとの相性抜群だ。メンズモデルもカラーバリエーションやデザインが豊富に展開されているため、ひと癖あるペアウォッチを探している人にもおすすめしたい。

機能

最後に紹介するのは、機能面において特徴的なモデルだ。男心に刺さるであろう2本をセレクトした。

グラハム　クロノファイター ヴィンテージ

グラハムは1995年に創業し、そのブランド名はイギリスの天才時計師、ジョージ・グラハム（1673-1751）の名前に由来する。グラハムは“クロノグラフの父”と称えられ、シリンダー脱進機をはじめとしたさまざまな機構を発明している。

「クロノファイター ヴィンテージ」はグラハムのアイコンともいえるコレクション。大胆なデザインを特徴とするクロノグラフで、グレネード手榴弾を想起させるケース9時側のコントロールレバーが目を引く。このデザインは第二次世界大戦中、イギリス空軍パイロットのために開発されたもので、飛行中などグローブを装着したままでもクロノグラフの操作が行えるようにトリガー型のプッシャーになった。

ジャガー・ルクルト　レベルソ・クラシック スモールセコンド

ジャガー・ルクルトは、1833年創業のスイスの時計ブランド。時計愛好家からの支持が高く、マニュファクチュールとして数ある時計ブランドの中でも一目置かれる名門だ。

「レベルソ クラシック」は、ジャガー・ルクルトを代表するコレクション。一見シンプルなクラシカルウォッチだが、レクタンギュラー型のケースは反転する仕様になっている。

これは、1930年にイギリス発祥のスポーツ“ポロ”をきっかけに誕生したギミック。馬に乗りながらスティックで球を打つポロは非常に激しいスポーツであり、ポロの競技中に時計のガラスが損傷しないように考えられたのが、ケースが反転するレベルソ クラシックだった。「レベルソ・クラシック スモールセコンド」は、裏面がシンプルな鏡面仕上げとなっているが、第2の文字盤が備えられているモデルも展開されている。

無限の可能性を秘めた腕時計たち

今回ピックアップした個性派腕時計は、ごく一部。本記事だけでは紹介しきれないほど、特徴的なデザインを持った時計が存在し、それぞれに魅力が備わっている。

実用性に優れたモデルはもちろん素晴らしいが、心に刺さり踊るような変化球的時計にも目を向けていきたい。