パルミジャーニ・フルリエCEO、グイド・テレーニが語る「トンダ PF」のデザインコード

FEATUREWatchTime
2023.05.24

ブルガリ グループに20年以上在籍し、時計部門責任者も務めたグイド・テレーニは、現在CEOとしてパルミジャーニ・フルリエを牽引している。彼のリーダーシップのもと、ブランドイメージの若返りを目指して生み出されたのが「トンダ PF」だ。本コレクションのデザインコードについて、グイド・テレーニにインタビューを行った。

グイド・テレーニ

グイド・テレーニ
パルミジャーニ・フルリエCEO。1969年、イタリア生まれ。2000年、スイスに移住し、ブルガリグループのウォッチメイキングディビジョンへ入社。メンズウォッチのプロダクトマネージャー、ウォッチプロダクト全般の責任者を務めた後、マーケティングディレクターを経て、時計部門の責任者に就任。2021年1月より現職。
Originally published on watchtime.com
Text by Rüdiger Bucher
2023年5月24日掲載記事


パルミジャーニ・フルリエというブランドの価値

「パルミジャーニ・フルリエに入社して最初にしたことは、いくつかの基本的な問いを明確にすることでした。それは、パルミジャーニ・フルリエというブランドの存在意義や、どのように認知されているのか、ということなどです。パルミジャーニ・フルリエの根源的な価値はふたつあります。

 ひとつは、創業者ミシェル・パルミジャーニの時計作りに関する深い知識です。ミシェルは世界最高の時計修復家のひとりです。時計修復家というのは、最高レベルの時計製造技術を習得していなければなりません。これには、技術的なスキルと歴史全体に関する知識の両方が含まれます。

 ふたつめの価値は奥ゆかしさです。良い時計修復家は目立たない存在でなければなりません。時計の修復というのは、オリジナルを作った職人が再び脚光を浴びるための緻密な作業であるからです。ミシェル・パルミジャーニが完璧に体現している熟練と自制の組み合わせは、ブランドを定義するものでもあります」


「トンダ PF」のデザインコードを考案

トンダ PF GMT ラトラパンテ

「トンダ PF GMT ラトラパンテ」
自動巻き(Cal.PF051)。31石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。SS×Ptケース(直径40mm、厚さ10.7mm)。60m防水。423万5000円(税込み)。

「30代から50代の若い顧客層に訴求するために、私たちは「トンダ PF」のラインを生み出しました。1996年の創業から約25年、パルミジャーニ・フルリエはお客様とともに年を重ねてきました。ただ私たちは、生活や嗜好、ファッションがよりインフォーマルになったという事実に対する、ブランドとしての答えを持っていませんでした。

 そこで、私たちはいくつかのデザインコードを考案しました。ひとつめは「PF」の文字を用いた楕円形のロゴです。これまではムーブメントやリュウズトップなど目立たない場所に配されてきましたが、それを文字盤に配しました。

 ふたつめは、文字盤の装飾です。ギヨシェは一流の職人技ですが、少し古めかしい感じがしました。このギヨシェをどうしたらもっと現代的にできるのか? その解決法は、より細かくすることでした。これにより、パターンを一種のテクスチャーに変えることができたのです。例えば仕立ての良いスーツのように、視覚的というよりは感覚的に感じとることができるようになりました。

 3つめは、すでにあったシースルーのデルタ型の針です。4つめはすでにいくつかのトンダモデルで実践されていた、特に小さなインデックスの採用です。

 5つめのデザインコードについて、私はちょっと幸運でした。ある日、視覚的錯覚を作り出すヒジュラ暦の画像に行き当たりました。円周のミニッツトラックが、まるで文字盤より少し低くなっているように見えたのです。実際は単なる影だったのですが、私たちはこのミニッツトラックを低くするという考えをトンダ PFに取り入れたのです。

 これと小さなインデックス、ロゴ、シースルーの針の採用が、文字盤とマイクロギヨシェ模様に広がりを与え、視覚的に立体感が出ました。おわかりのように、これらのコードはすべて洗練と控えめな表現に関係するため、パルミジャーニ・フルリエによく似合うのです。また結果として、若い顧客層に対しより強く訴求できるデザインとなりました」


光の当たり方によって質感が変わるマイクロギヨシェ

トンダ PF

文字盤の小さなギヨシェが、パルミジャーニ・フルリエのデザインコードのひとつとなった。

「ごく小さな模様が出るようなギヨシェが欲しい。これが私からチームに与えた課題でした。ある日、開発責任者がやってきて私にこう言いました。『非常に細かいギヨシェがご希望だと伺いましたので、そのようにしました』と。そのギヨシェは、ほとんど視認できないほど小さなものだったのです! そこで、いくつかのバリエーションの試作を依頼しました。+10%、+20%、+30%と、大きさの異なるものです。最終的に、プロトタイプより+10%のものが最適であるという決断を下しました。

 このようにしてトンダ PFのギヨシェは非常に特別なものとなりました。細かくて見えないように思えますが、きちんと視認できるのです。光の当たり方によって、滑らかにも、立体的にも見えます。細かくすることで古めかしく見えるというギヨシェの課題を解決し、若い顧客層にとっても魅力的に映るようになりました。

 トンダ PFの文字盤に施されたギヨシェ模様は、垂直方向のバーリーコーン、フランス語でいうグラン・ドルジュです。これはパルミジャーニ・フルリエの多くのコレクションで採用されているもので、例えば「カルパ」や「トリック」では円形に施されています。「トンダ GT」には、より幾何学的でスポーティなクル・トリアンギュレールモチーフが採用されています。トンダ PFでは、垂直方向の小ぶりなパターンにしました」


「トンダ PF」スタイルの確立

「私たちの祖父の世代は、食事に行くときにタキシードを着ていました。昔はすべてがもっとフォーマルでしたが、同時にそれはある種の安心感を与えてくれました。ルールに従えば、大きく間違うことはなかったからです。

 現在ではフォーマルな機会が減ってルールが緩和された分、個人の選択に委ねられています。ですから、自分自身のスタイルを確立することが重要なのです。センスの良いものを見極めるには、見分ける力を養う必要があります。

 控えめで繊細さのないものは、トンダ PFにはふさわしくありません。どのようにこのコレクションを拡充するか考える時、私たちはトンダ PFのスタイルというものを考慮する必要があります。なぜなら、技術的なものであっても絶対にデザインが関わってくるからです。逆に言えば、テクニカルな要素のなかにも美は存在します。過去を模倣するだけでは面白くありません。むしろ、より現代的なデザインの視点から、時計作りの伝統を再解釈する必要があるのです」



Contact info: パルミジャーニ・フルリエ pfd.japan@parmigiani.com


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