時計ブランドとアーティストによるコラボレーションモデルの発表は、もはや毎年恒例のものとなった。通常モデルとは異なる型破りなデザインは、時計愛好家を驚かせるものばかりだ。今回はウブロ、ロジェ・デュブイ、モーリス・ラクロアから発表された、4本のアーティストコラボウォッチを紹介しよう。
ウブロ × 村上隆
スイスの時計ブランド、ウブロと日本人アーティストの村上隆は、その美学と境界を超えたいという願望によって結ばれている。1962年生まれの村上隆は、彼のトレードマークである“お花”でアートの世界のルールを覆した。ウブロは時計業界におけるスタイルの常識に抗い、新たなスタイルを確立してきた歴史を持つ。
「アート・オブ・フュージョン(異なる素材やアイデアの融合)」をコンセプトとするウブロは、ストリートスタイルやブランド独自の素材と、貴石や高級ブランドらしい仕上がりのムーブメントを組み合わせてきた。このブランド哲学によって、村上隆のように「ハイ」と「ロー」のカテゴリーを融合させたトレンドセッターとなったのだ。
近年、ウブロの独創的なモデルにユーザーたちも多少慣れてきてはいるが、いまだに驚きをもって迎えられるモデルも多い。2021年に発表されたウブロと村上隆のコラボレーション第1弾「クラシック・フュージョン タカシムラカミ オールブラック」は、大きな驚きをもたらした。
ウブロと村上隆の関係は非常に良好なようで、2023年には13本のユニークピースと13点のユニークNFTアート作品からなるコレクションが発表された。このコレクションの13番目のモデル「クラシック・フュージョン タカシムラカミ ブラック セラミック レインボー」は、コラボ第1弾、第2弾のモデルからインスピレーションを得たものだ。
自動巻き(cal.UNICO)。30石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。ブラックセラミックケース(直径45mm、厚さ13.45mm)。384石のカラー貴石を配した12枚の花びら装飾の回転式文字盤。50m防水。ユニークピース。(問)LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン ウブロ Tel.03-5635-7055
ウブロ × サミュエル・ロス
自動巻き(Cal.HUB6035)。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。Tiケース(直径44mm)。30m防水。世界限定50本。1482万8000円(税込み)。
ウブロは、さまざまな分野で活躍するアーティストと協働したいという思いから、“Hublot Loves Art”プロジェクトを実施している。このプロジェクトによって、数々の才能あるアーティストやデザイナーとコラボレーションを行ってきた。
そのひとりであるサミュエル・ロスもまた、枠にとらわれず活躍するアーティストだ。1991年生まれの英国人である彼は、2021年に逝去したファッションデザイナーのヴァージル・アブローの後押しを受けた、デザインシーンの天才である。サミュエル・ロスは舞台美術だけでなくグラフィックデザインでも才能を発揮し、ファッション分野では自身のレーベルも立ち上げている。
そんなサミュエル・ロスとウブロがコラボレーションして生まれたのが、独創的な外観と複雑機構を備える「ビッグ・バン トゥールビヨン サミュエル・ロス」だ。彼のデザインに共通するヘキサゴンパターンは、サファイアクリスタル製の文字盤やケース、ケースバック、そしてストラップに使用されているチタニウム製メッシュにも反映されている。
また、ダークグレーのチタニウムケースに明るいオレンジを組み合わせることで、スポーティなコントラストを生み出している。スケルトン構造の自動巻きトゥールビヨンムーブメントであるCal.HUB6035は、パワフルでクールなウォッチデザインにぴったりだ。
ロジェ・デュブイ × 空山基
自動巻き(Cal.RD720SQ)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。Tiケース(直径42mm、厚さ12.7mm)。100m防水。世界限定28本。完売。(問)ロジェ・デュブイ 銀座ブティック Tel.03-5537-5317
ロジェ・デュブイとコラボレーションしたのは、イラストレーターの空山基だ。1947年生まれの空山は、メタリックで超写実的な立体感を持つ女性ロボットの絵で名を馳せている。ロジェ・デュブイは、空山らしいデザインを非常にクリエイティブな方法で時計に取り入れた。
「エクスカリバー ソラヤマ MB」には、エクスカリバーシリーズではおなじみのスケルトンムーブメントが搭載されている。存在感のある星形のブリッジは、空山らしいデザインに変更された。曲線的な丸みのあるフォルムと磨き上げられた艶やかな表面は、彼の代表作「セクシーロボット」をオマージュしたものだ。
モーリス・ラクロア × ベンジラ
クォーツ。オーシャンバウンド・プラスチック製ケース(直径40mm、厚さ11mm)。10気圧防水。9万7900円(税込み)。(問)モーリス・ラクロア(DKSH MES ジャパン)cg.csc1@dksh.com
モーリス・ラクロアは「アイコン タイド」シリーズをベースとする、タイ人アーティスト、ベンジラ(BENZILLA)とのコラボレーションモデルを発表した。
1984年生まれのベンジラは、ストリートカルチャーやファッション、音楽、キャラクターデザインから影響を受けた芸術表現を生み出した。彼は、コミックのようなダイナミズムを持つ色鮮やかなアート作品を制作している。またベンジラは、壁や持ち運び可能な素材など、広い範囲に色を吹き付けることを好む。
これまでいくつかのブランドとコラボレーションしてきたベンジラが、モーリス・ラクロアとの協働で作り上げたのは「アイコン #タイド ベンジラ」だ。文字盤には、彼の代表的なモチーフである3つ目のエイリアン「LOOOK」を中心としたカラフルなモチーフがデザインされている。
オレンジの再生プラスチック製ケースと、ターコイズカラーのラバーストラップが文字盤のイラストを引き立て、クールでポップな1本に仕上げている。
時計業界を活気づけるアーティストとのコラボウォッチ
同じウブロの時計でも、サミュエル・ロスのコラボモデルは、村上隆のコラボモデルのようなインパクトのある造形とはかけ離れたところにある。しかし、この2本の時計に共通しているのは、現代的なアーバンカルチャーの造形やモチーフを取り込んでいることだ。
ロジェ・デュブイと空山基、モーリス・ラクロアとベンジラのコラボレーションについても同じことが言えるだろう。4人のアーティストはみな浮世離れすることなく、それぞれがストリートやファッション、ポップカルチャーで起こっていることからインスピレーションを受けている。そして、文字盤やケース、ブレスレットといった小さなスペースでも、多くのクリエイティビティを発揮することができるということを証明しているのだ。
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