メンテナンス強化でオーデマ ピゲに死角なし

2023.06.09

東京・銀座6丁目に拠点を構える旗艦店、オーデマ ピゲ ブティック 銀座。同ビル内にカスタマーサービスセンターを併設するのが特徴で、顧客のためのメンテナンスサービスを行っている。このたび、新たに国内で対応可能となったトゥールビヨンをはじめとするコンプリケーションモデルのメンテナンスについて、ウォッチメーカーに話を聞いた。

オーデマ ピゲ ブティック 銀座

三田村優:写真 Photographs by Yu Mitamura
阿形美子:取材・文 Text by Yoshiko Agata
Edited by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2023年7月号掲載記事]


AUDEMARS PIGUET CUSTOMER SERVICE

オーデマ ピゲ ブティック 銀座 ストラップ専用サロン

オーデマ ピゲ ブティック 銀座の2階、カスタマーサービスに併設された「ストラップ専用サロン」では、ストラップ交換などのカスタマイズが可能だ。その際に、時計の簡易的な状態チェックとクリーニングを無償で受けられる。

 オーデマ ピゲのカスタマーサービスセンターでは、現在、13名のウォッチメーカーを含む約40名のスタッフが在籍し、毎月250〜290本のメンテナンス・修理を行っている。従来、ここでは現行品であればパーペチュアルカレンダーを含むコンプリケーションモデルも対応していたが、ハイコンプリケーションは、スイス本国に送らなければならない状況だったという。しかし、ウォッチメーカーのひとり、ウルバン・エメリ氏が2022年にスイス本国にてトゥールビヨン用のトレーニングを修了したことで、日本国内でもトゥールビヨンの修理が可能となった。

ウルバン・エメリ

ウルバン・エメリ氏。2007年にスイスの時計学校を19歳で卒業後、ショパールのトゥールビヨン専門部門に就職。BNBコンセプトに転職後、ロレックスで5年間、新キャリバーの設計に関わる。16年にオーデマ ピゲに入社し、香港のカスタマーサービス部門で3年勤めた後、日本の同部門へと移籍。ウォッチメーカーの中では珍しい経歴だという。

「日本のカスタマーサービスセンターではこれまで4名のウォッチメーカーで、パーペチュアルカレンダーまでのコンプリケーションに対応してきました。日本はパーペチュアルカレンダーの人気が高いので、他の地域に比べてメンテナンスに出される個数が多いですね。今回、さらに私がスイスでトレーニングを受けたことで、トゥールビヨンも日本で修理できるようになりました」

 スイス本国でのトレーニングについて尋ねると「今回は、3週間で4種の複雑系ムーブメントのメンテナンス資格を取得しました。研修ではトレーナーの指導を受けながらトレーニング用ムーブメントを分解することで構造を理解し、その後、お客様に渡せる状態にまで再び組み直します。これは完全な独力で行います。各ムーブメントの検定のプロセスには基本的に3日かかるので、今回はギリギリのスケジュールでしたね」とのこと。

パーペチュアルカレンダーのムーブメント

取材時はパーペチュアルカレンダーのメンテナンスの真っ最中。どのウォッチメーカーの机にも複数本の腕時計が置かれ、まさしく“フル稼働”の様子だった。

 それでは、トゥールビヨンの修理が国内でできるようになったことで、これまでと比較して所要日数はどのくらい短くなるのだろうか?

「スイスへの配送期間分、つまり2〜3週間ほど短縮できるため、お預かりから1カ月ほどで対応することができるようになります」

修理用工具

使いやすいように並べられたエメリ氏の修理用工具。中にはエメリ氏が手ずから製作した工具も多い。
ムーブメント用のワインダー

カスタマーサービスセンター内には数多くの検品用機材が備えられる。写真はムーブメント用のワインダー。通常、ワインダーはメンテナンス・修理終了後の最終チェックとして、ケーシング後に使用するが、これはムーブメント単体での姿勢差チェック用だ。

 高額品となるハイコンプリケーションを短期間で国内修理できるとあらば、顧客の安心感はひとしおだろう。特に、初めてハイコンプリケーションを購入するならこれほど心強いことはない。

 高品質なハイコンプリケーションや自社製ムーブメントがオーデマ ピゲの大きな魅力だが、その分、ウォッチメーカーには高い技術も要求される。その点はどう思っているのだろうか。

「オーデマ ピゲでは、ムーブメントごとにメンテナンス資格を取得する必要があります。所属するウォッチメーカーは皆、『ウォッチメーカー パスポート』を持っていて、扱えるムーブメントには認印が与えられます。だから、新規のムーブメントが開発されるたびに、扱うための検定があるんですね。これは大変ではありますが、ウォッチメーカーとしては楽しみな体験ですし、コンプリケーションを扱えるのも、オーデマ ピゲで働く美学だと思います」

ウォッチメーカー パスポート

オーデマ ピゲの全てのウォッチメーカーが所持する「ウォッチメーカー パスポート」。これはエメリ氏のもの。修了したトレーニングの内容や、取り扱い可能なムーブメントが記載されている。

 ウォッチメーカーとしてオーデマ ピゲのカスタマーサービスの魅力は?

「ふたつあります。まず、いろいろな種類の、かつ、時代を超えたムーブメントを扱えるところ。例えば、ロイヤル オークには、50周年でCal.7121に替わるまで、半世紀にわたってずっとCal.2121が使われ続けてきました。名機を長い期間作り、メンテナンスし続けるのは面白い点だと思います。ふたつ目は、ひとりのウォッチメーカーが全工程を行うところです。実は、他のブランドでは各人に1工程のみを専門で作業させることが多いんです。1本の時計を受け取り、分解して問題を追究して、お客様に返せる状態にまで直す。この一連を任せてもらえるのはウォッチメーカー冥利に尽きますし、自分の仕事に対して誇りを持つことにつながります」

 長い期間、中には世代を超えて使い続けられる機械式時計だからこそ、アフターサービスの安心感も購入時の大切な決め手となる。国内でのサポートを充実させたオーデマ ピゲは、時計愛好家からいっそうの信頼を獲得していくことだろう。

LINE公式アカウント

 オーデマ ピゲのカスタマーサービスセンターでは、便利な無料配送サービスを実施している。LINE公式アカウントから集荷・配送の依頼が可能で、銀座へ直接足を運ばずとも、時計の発送から受け取りまでをスムーズに行える。

カスタマーサービス専用 LINE公式アカウント
友達追加用URL:https://line.me/R/ti/p/%40002kprij
営業時間 11:30~19:30

ウォッチメーカーを募集中

 オーデマ ピゲ ジャパンでは、経験豊富なウォッチメーカーを募集しているので、興味のある方は下記人事・採用担当まで。

【人事・採用担当】
APJP.HR@audemarspiguet.com


Contact info: オーデマ ピゲ カスタマーサービス Tel.03-6830-0789


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