優れた耐衝撃性能はもちろんのこと、外装に金属を採用し、細部に至るまで丁寧な仕上げを施すことで、G-SHOCKの最高峰ラインにふさわしい力強さと高級感を見せるMR-G。その屈強な佇まいに日本のブランドらしいコンセプトを与え、国内はもとより世界中で高い支持を獲得しているのが、“赤備え(あかぞなえ)”ならびに“勝色(かちいろ)”と名付けられた、ふたつの「MRG-B2000B」だ。
第1弾となる「MRG-G1000B-1A4JR」(“赤備え”)が誕生してから約6年。これだけ長い間、“赤備え”そして“勝色”モデルが多くの人々を引き付けてやまないのには理由がある。その理由を具体的に解説することで、ふたつの「MRG-B2000B」の真価を明らかにする。
竹石祐三:取材・文 Edited & Text by Yuzo Takeishi
[2023年6月xx日掲載記事]
“赤備え”と“勝色”が示すMR-Gの力強さ
耐衝撃性や耐傷性を備えた、力強くも洗練された雰囲気を持つ外装が、かつて武士たちが身に付けていた武具とシンクロしていることに着目し、2014年以降は、甲冑をイメージしたモデルを積極的に展開してきたMR-G。その中でも、耐衝撃フルメタルボディとGPSハイブリッド電波ソーラーを備えた「MRG-G1000DC-1AJR」をベースに、より明快なテーマ性を付与したのが、2017年に誕生した「MRG-G1000B-1A4JR」、通称“赤備え”だ。
2022年2月に発売された“赤備え”の第2弾モデル。基本的なデザインは前作を踏襲しているものの、モジュールが変わったことに伴い、すっきりとしたダイアルデザインに。深紅を取り入れたデザインは、G-SHOCKのブランドカラーである黒×赤のイメージとも重なり、より屈強な雰囲気が漂う。タフソーラー。フル充電時約26カ月(パワーセーブ時)。Tiケース(縦54.7×横49.8mm)。20気圧防水。34万6500円(税込み)。
そもそも“赤備え”とは、戦国時代から江戸時代にかけて編成された、朱塗りの武具で統一した部隊のこと。“赤備え”の中でもとりわけ有名なのが甲斐武田軍。現在放送中の大河ドラマ「どうする家康」で、武田信玄率いる大軍が真っ赤な武具をまといながら合戦に挑む、あの壮大なシーンを覚えている人も多いだろう。この、古くから強さの象徴とされてきた色を、日本の伝統色・深紅(こきべに)で表したのが「MRG-G1000B-1A4JR」であり、まさに最強の武田軍を想起させる力強い表情は、G-SHOCKファンのみならず、多くの時計愛好家をも魅了してきた。それは2022年に登場した“赤備え”の第2弾モデル「MRG-B2000B-1A4JR」にもしっかりと継承され、なおも高い人気を誇っている。
一方、初代“赤備え”モデルの好評を受けて、2021年にリリースされたのが「MRG-B2000B-1AJR」。こちらも同様に日本の伝統色を取り入れているものの、“赤備え”とは対照的な、濃く深い藍色である“勝色”をイメージして製作されたモデルだ。この勝色は、もともと“褐色”や“搗色”などと記され、古くは平安時代に、装束などに用いられて武人たちに親しまれた色である。その後は験を担ぐために“勝ち色”と表記され、伊達政宗をはじめとする多くの武将が甲冑に取り入れ、また時代を超えた現在でも、サッカー日本代表のユニフォームで採用されるなど、士気を高める色として日本人に親しまれている。
“赤備え”の第2弾に先駆け、2021年2月に発売されたのがこの“勝色”。アクセントカラーには“勝色”を想起させるブルーを用い、さらにダイアルには代表的な和柄のひとつである“鱗紋(うろこもん)”をプリントするなど、“赤備え”とは異なる表情に仕上げている。タフソーラー。フル充電時約26カ月(パワーセーブ時)。Tiケース(縦54.7×横49.8mm)。20気圧防水。34万6500円(税込み)。
両モデルとも誕生以来、高い人気を獲得しているが、それは甲冑というデザインモチーフをさらに深化させた、日本のブランドらしいテーマ設定に加え、G-SHOCKの主幹性能である“タフさ”をより分かりやすく伝えるコンセプチュアルなモデルとしているからこそ、日本だけでなく、ワールドワイドで高い支持を獲得しているのだ。
コンセプトを具現化した屈強な外装と、ジャパンメイドを表現したダイアル
“赤備え”そして“勝色”という独創的なテーマは、甲冑を彷彿とさせるMR-Gの勇壮なデザインに加え、ハードなシーンでの着用にも耐える耐衝撃性や耐傷性──つまり“タフさ”を備えていることを踏まえて生み出されたものだ。
「MRG-B2000B」がケースやベゼル、ブレスレットに採用しているのは、軽量かつ錆に強い純チタン。それだけでも十分に実用的なのだが、カシオではさらに深層硬化処理と、素材表面の耐傷性を高めるDLCコーティングという二重の硬化処理を施し、最高峰ラインのMR-Gにふさわしい強靭かつ、チタン素材の上質感を長く愉しめる外装を作り上げている。しかも、重厚感のあるブラックのケースとブレスレットには、一部にザラツ研磨を施して艶のあるアクセントを加えるなど、武将たちの甲冑に通じる格調高いデザインに仕上げていることも、人々を魅了する理由だろう。
こうしたタフな外装に加え、耐衝撃性をより高めているのが、リュウズとプッシュボタンに採用されたクラッドガード構造だ。そもそもメタル素材を外装に用いたMR-Gは、落下時の衝撃からムーブメントを保護するために、樹脂製のG-SHOCKとは異なる耐衝撃構造を採っているが、内部機構と直結したリュウズに外圧が加わってしまうと、ムーブメントがダメージを受けてしまう可能性がある。そこで考案されたのが、リュウズユニットの内部にαGELを装填してからリュウズカバーを被せることで衝撃を緩和させる、独自の構造。しかもリュウズのみならず、プッシュボタンにもカバーを付けて耐衝撃性を確保するなど、G-SHOCKブランドに対する信頼性の高さも、「MRG-B2000B」の人気を支える重要なファクターだ。
一方でダイアルは、“赤備え”や“勝色”のテーマ性をより明確に表すデザインに。各モデルを象徴するアクセントカラーを用いているだけでなく、ダイアルの外周には扇や屏風をイメージしたカット面を採用し、さらにインデックスは、刀の反りに着想を得た、トップが緩やかにカーブを描くユニークな形状としている。このインデックスは、万が一、腕時計が落下したときでも文字盤から外れてしまうことがないよう、軽量な樹脂で製作されているのだが、電鋳技術によって稜線のエッジを際立たせたり、挽き目細工を施したりするなど、山形カシオが有するナノ加工技術によって金属製と見紛うほどの仕上がりに。こうした妥協のないクリエイションもまた、「MRG-B2000B」の魅力を高めている。
(右)「MRG-B2000B-1AJR」のダイアルには鱗紋をプリント。濃淡のあるパターンにより、ダイアルには立体感が生まれている。
電波受信×Bluetooth通信機能によって向上した実用性
もちろん、「MRG-B2000B」においては充実した機能も見逃せない。“赤備え”の第1弾となった「MRG-G1000B-1A4JR」ではGPSハイブリッド電波ソーラーを搭載していたが、現行の「MRG-B2000B」ではこの機能がなくなり、代わりに標準電波受信機能とBluetooth通信機能を装備。これによりスマートフォンと連携できるようになり、国内外を問わず、常に正確な時間を表示できるようになった。27のタイムゾーンに対応していることに加え、サマータイムの自動設定機能も付いているなど、実用的にアップデートにされている。
また、JIS1種の耐磁性能や20気圧の防水性能、さらには高輝度なLEDライトによるスーパーイルミネーターで暗所での視認性も確保するなど、G-SHOCKブランドに求められる基本性能も抜かりない。
2014年の再始動から現在まで、MR-Gの企画に携わっているカシオ計算機の石坂真吾氏は、“赤備え”と“勝色”の両モデルが長く愛されている理由について「信頼できる性能と、G-SHOCKらしい特徴でありながらもベーシックなデザインを持っていること」と分析する。
「トレンドに左右されず、長期にわたって支持されるには普遍的なスタイルを持つことがとても重要です。この絶対的基盤の上に特徴的なストーリーが加わることで初めて、魅力的な製品になると考えています。この前提がある上で、ストーリーは個性を際立たせるポイントになり、とても重要なファクターであると考えています。“赤備え”や“勝色”といった甲冑のコンセプトは、G-SHOCKの耐衝撃性を体現しており、しかも甲冑は世界的に認知されていることから、ワールドワイドで展開するうえで最適なテーマのひとつであると考えています」
G-SHOCKに求められる基本的な性能や機能をしっかりと備えながら、その主幹性能を表現する、明快なコンセプトのデザインで作り上げられた「MRG-B2000B」。最高峰レベルのクォリティを持ったロングセラーモデルは、この先もまだ、世界中の時計愛好家を引き付けていくに違いない。
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