ブライトリング、チューダー、セイコーなど10ブランドから選ぶ、高性能な“ツールウォッチ”

「ツールウォッチ」という呼び方は、特定の作業を行うための“道具”として機能する時計に由来するものだ。例えば、ダイバーズウォッチは回転ベゼルや耐圧性を備え、水中での使用を想定して設計されている。堅牢で高精度、視認性も高く、なおかつ使用の際に傷が付く可能性を考えると高価すぎないことが理想的だ。今回は、ツールウォッチとして魅力的な10本の腕時計を紹介しよう。

ジン「T50」

　ジンは2023年、「T50」という新しいダイバーズウォッチを発表した。“50”という数字は、50気圧の防水性能、すなわち水深500mの水圧に耐えられることを示している。そして“T”は、海水に強い素材であり、ケースに採用されているチタンから来ている。

　リュウズが手の甲に当たらないよう、4時位置に配置されているのも特徴だ。特殊結合方式で固定されたセーフティーダイバーベゼルはテギメント加工が施されており、セラミックと同等の硬度を持つとともに耐傷性も高い。ベゼルは反時計回りにのみ回すことが可能で、さらに意図せぬ回転を防ぐため、回す際にはベゼルの2カ所を押し下げる必要がある。

　ジン独自のArドライテクノロジー搭載により、気温が低下しても風防がくもらない。時計内部のパーツはバイトンシール、充填不活性化ガス、湿気を吸収するカプセルにより、水分から守られている。T50はまた、ヨーロッパのダイビング潜水器具規格に準拠したDNV（旧Germanischer Lloyd）のテストと認定を受けている。まさにダイバーのためのツールウォッチだ。

チューダー「ペラゴス FXD」

　バネ棒の代わりに固定のラグを備える独特な意匠を持つのが、チューダーが2021年に発表した「ペラゴス FXD」だ。チューダーは1956年から、フランス海軍の潜水を任務とする特殊部隊にダイバーズウォッチを納品していた。

　当時受けていた要求は、傷に強いセラミックスのスケールを備えた両方向回転式のベゼルなどに生かされている。C.O.S.C.認定を受けた自社製自動巻きムーブメントCal.MT5602が高い精度を担保し、約70時間のパワーリザーブを保持している。海水に対する耐食性が高いチタン製のケースを備え、水深200mでの水圧に耐えることができる。

ハミルトン「カーキ フィールド チタニウム オート」

　ハミルトンは第1次世界大戦において鉄道時計を米軍に提供したことを契機に、今日まで数多くのミリタリーウォッチを製造してきた。第2次世界大戦中には、一般向けの製造を中止して軍用時計の製造に専念、100万個以上の時計を米軍に供給した。

「カーキ フィールド」コレクションは、そんな同社のミリタリーウォッチ製造の歴史で培われたノウハウが生かされた、耐久性と精密性、そして機能性に富んだ腕時計である。「カーキ フィールド チタニウム オート」に搭載されるのは、ETA C07.611をベースとした自動巻きムーブメントのCal.H-10で、約80時間のパワーリザーブを備えている。

　ケースは軽量で、耐久性も高いチタン製だ。文字盤は、ミリタリーウォッチでは一般的な24時間表記。グリーンのヴィンテージ調のスーパールミノバによって、暗所での視認性も確保している。

セイコー「プロスペックス 1970 メカニカルダイバーズ 現代デザイン 植村直己 限定モデル」

　セイコー プロスペックスは、ダイビングやトレッキングなど、スポーツ、アウトドアシーンに対応する本格機能を備えたコレクションだ。「プロスペックス 1970 メカニカルダイバーズ 現代デザイン 植村直己 限定モデル」は、世界的冒険家である植村直己の偉業をたたえる限定モデルである。

　植村直己は世界初の五大陸最高峰登頂者であり、世界初の単独北極点到達を成し遂げた人物である。本モデルは、植村直己が犬ぞりによる北極点到達へ挑戦した際に携行されていた、1970年発売のメカニカルダイバーズウォッチを着想源としたものだ。

　最大の特徴は4時位置のリュウズと、ケースサイドからラグにかけて一体化したデザインのリュウズガードである。またムーブメントは、雫石高級時計工房で製造されているCal.8L35を搭載している。

ビクトリノックス「I.N.O.X. カーボン メカニカル」

　ビクトリノックスの「I.N.O.X. カーボン メカニカル」は、直径43mmのカーボンファイバー製ケースとサファイアクリスタルを備えたチタン製ケースバック、そしてチタン製フォールディングクラスプが付属するラバーストラップという組み合わせで、税込み19万2500円という価格を実現している。

　宇宙での使用を想定し、ケースには大気圏再突入時の1260℃という過酷な条件にも耐えられるカーボン複合素材を使用。この素材は抗アレルギー性、耐傷性に優れている。

　時計の納品時には、13ものツールを備えたビクトリノックスのマルチツールナイフが、ブラックプラスチック製保護バンパーとともに付属する。200mの防水性能を持った、軽量で耐熱性の高いケースに内蔵されているのは、自動巻きムーブメントのセリタSW200だ。

ミューレ・グラスヒュッテ「S.A.R.ミッション-タイマー」

　2002年以来、ドイツ海難救助協会（DGzRS）と連携してきたミューレ・グラスヒュッテ。その20周年を記念して、海難救助隊の仕様に基づいて開発された「S.A.R. レスキュータイマー」とともに、新しい「S.A.R.ミッション-タイマー」を発表した。

　このモデルは、チタン製の直径43mmの流線型ケースを備えている。500mという高い防水性能を持っているほか、文字盤にくぼみをつけ、蓄光塗料で縁取りした文字盤レイアウトは個性的だ。

　S.A.R.ミッション-タイマーにはデイト拡大鏡がないが、これは搭載されている自動巻きムーブメントCal.セリタSW400がラージデイト・リングを備えていて拡大鏡が不要なためだ。また、ミューレ・グラスヒュッテはムーブメントを改良し、ウッドペッカー型緩急針調整装置、独自のローター、表面のポリッシュなどを施している。

ラコ「スクワード アタカマ.2」

　強靭さと高い品質、機能性を追求したラコのミリタリーウォッチシリーズが「スクワード」だ。このシリーズより展開された「アタカマ.2」の開発と設計において、ラコはドイツ軍、そして特殊部隊と協力した。

ブラックPVD加工を施した直径46.25mmのステンレススティール製ケースは、高い耐傷性を備える。ラコはリュウズを12時位置に移し、ブレスレットに一体化することで、負荷から保護している。カウントダウン・ベゼルは両方向に回転し、時間計測に使うことができる。

　アタカマ.2の機能的な特徴は、ケースと同様に光の反射を抑えたマットブラックの文字盤によって強調されている。蓄光性のアラビア数字インデックスは太く明瞭で、日中でも夜間でも高い視認性を担保している。搭載されている自動巻きムーブメントCal.Laco200は、サファイアクリスタルのケースバックから鑑賞可能だ。

オリス「プロパイロット アルティメーター」

　オリスの「プロパイロット アルティメーター」は、世界で唯一、機械式高度計を備えた自動巻きの機械式時計である。2014年に発表された前作の特徴を引き継ぎつつも、より軽量かつ強靭に仕上げるため、ケース素材にはカーボンファイバーが採用された。軽量さも特徴であり、重さはわずか98gである。

　カーボンファイバーケースで強度が増したことで、前作よりも時計の厚さが1mm薄くなった。また、前作が高度4500mまでの対応であったのに対し、本作は6000mと性能が大きく向上している。ムーブメントは厚みを抑えたCal.793を採用。パワーリザーブは約56時間に延長された。

フォルティス「ストラトライナー S-41 ホワイトダスト」

　フォルティス「ストラトライナー S-41」は、ラ・ジュー・ペレによるCal.WERK17を搭載したクロノグラフウォッチだ。ストラトライナーとは“成層圏”を意味し、この名を冠したストラトライナーシリーズは、1962年から空や宇宙でのミッションで貢献してきたシリーズである。

　ストラトライナー S-41は、リサイクルステンレススティールをケースに採用し、持続可能性に重点を置いている。着色処理されたケースバックからは、コラムホイールを採用するWERK17の駆動が鑑賞可能だ。

　文字盤の3時位置には、デイ・デイト表示がホワイトまたはグレーで配されている。ライトブルーのマーカーは、宇宙飛行に重要な時間のインターバルを示す。フォルティスはこれを宇宙の成層圏への観光フライトを想定して開発した。これらのフライトは3つのフェーズに分かれている。90分の上昇、90秒の離陸フェーズ、そして最大15分続く無重力状態である。そのすべてが計測できるのである。

ブライトリング「アベンジャー クロノグラフ 45 ナイトミッション」

　ミリタリーにインスパイアされたブライトリングの「アベンジャー クロノグラフ 45 ナイトミッション」は、DLCコーティングが施された特徴的なチタン製ケースを備えている。これにより、わずかな光の反射も抑えられた。

　逆回転防止機能付回転ベゼル、ねじ込み式リュウズ、300mの防水性を備え、ダイビングにも適している。ブラックのケースは文字盤やミリタリー調のオリーブグリーンのストラップとも相性が良い。アラビア数字インデックスは、ミリタリーアイテムや防災機器に使用されていたステンシル書体を思い起こさせるものだ。

　頑丈なベゼルと、特別なグリップパターンがあしらわれたリュウズとクロノグラフのプッシャーにより、アベンジャー クロノグラフ 45 ナイト ミッションは、グローブを装着していても簡単に操作できる。搭載されるCal.13はC.O.S.C.の認定を取得している。