有給休暇を使っても行く価値がある! 「パテック フィリップ・ウォッチアート・グランド・エキシビション 東京 2023」

現在、新宿住友ビル 三角広場(地図を開く)で開催中の「パテック フィリップ・ウォッチアート・グランド・エキシビション 東京 2023」。スイス・ジュネーブを拠点とする世界最高峰の老舗高級時計マニュファクチュール、パテック フィリップの壮麗な世界を東京に再現することを目指し、見事にそれを成し遂げた類稀なる規模のエキシビション。会期は2023年6月25日(日)までと、あとわずかとなった。

見逃すと間違いなく一生後悔することになるこの世紀のエキシビションの見どころを、ジュネーブの本拠地の様子も知り尽くしたジャーナリストの渋谷ヤスヒト氏が、分かりやすく解説。

結論ーー老若男女を問わず、休暇を取ってでも今すぐに行くべきだ!

キャリバー89

創業150周年記念モデル「キャリバー89」(1989)。33の複雑機能を搭載。
渋谷ヤスヒト: 写真・文 Photographs & Text by Yasuhito Shibuya
(2023年6月18日掲載記事)


パテック フィリップ・ミュージアムにもない、感動の展示

「え! ジュネーブのパテック フィリップ・ミュージアムだって、こんなに間近では観られない!」「まさか、これが東京で、こんな風に鑑賞できるなんて!」

 会場に入って鑑賞を始めると、思わずそんな言葉が出た。そのくらい素晴らしい時計が、素晴らしいかたちで展示されているのが、 2023年6月10日から東京・新宿の新宿住友ビル 三角広場で始まった「パテック フィリップ・ウォッチアート・グランド・エキシビション 東京 2023」だ。

 時計愛好家なら絶対に一度は足を運んで心ゆくまで、できれば何日も通って鑑賞したいのが、パテック フィリップが2001年11月にオープンさせた世界最高峰の時計ミュージアム「パテック フィリップ・ミュージアム」。筆者もこれまで何度も訪れたことがある。ここには16世紀に製作されたドラム型の最初期の機械式時計から現在の超複雑時計まで、500年を超える時計作りの歴史とパテック フィリップの偉大なクリエーションを、その実物で鑑賞できる。

会場はJR新宿駅西口、東京メトロ・新宿駅、都営地下鉄線・都庁前駅からすぐにアクセスできる新宿住友ビルの三角広場。

 ところが、東京・新宿で開催中の「パテック フィリップ・ウォッチアート・グランド・エキシビション 東京 2023」に入場して驚いた。ミュージアムに展示されていたあの時計、たとえば伝説的な超複雑懐中時計の傑作「キャリバー89」(1989年)や「スターキャリバー 2000」(2000年)や、やはり伝説の天文コンプリケーションウォッチ「スカイムーン・トゥールビヨン 6002モデル」、さらに20の複雑機構を搭載する「グランドマスター・チャイム 5175モデル」(2014年)やその最新現行モデルが、まさかまさか、こんな近くで観られるなんて!!!

西暦2000年を記念して開発された超複雑懐中時計「スターキャリバー2000」(2000年)。

 また大英帝国のビクトリア女王が愛用したポケットウォッチを筆頭に、世界史に残るセレブリティたちが愛した傑作も、ジュネーブのミュージアムよりさらに身近に鑑賞することができる。こうしたモデルの数々も必見だ。


圧巻のジャパン・リミテッドエディション!

「絶対に見るべき!」時計はこうしたパテック フィリップの過去の傑作で終わらない。

 まず観ておきたいのが、今回で6回目を迎える「ウォッチアート・グランド・エキシビション」で、世界で初めて発表・展示されるリミテッド・エディション。今回の〈東京 2023〉では、6点のリミテッド・エディションが登場した。

 なかでも見逃せないのが、新しい自動巻きのカドラプル(4種類の)・コンプリケーション(5308P-010モデル)、現地時刻と同期した日付表示を備える最初のワールドタイム(5330G-010モデル)という、世界初公開の画期的な新技術を搭載した2モデル。

5330G-010

現地時刻と同期した日付表示を備える最初のワールドタイムウォッチ、5330G-010モデル

 このモデルに関しては、この新技術がどのようなものなのかを、樹脂製の模型とともに解説してくれる技術解説コーナーも設けられている。こちらもパテック フィリップが誇る自社製ムーブメントの展示とともに、webChronosの読者には見逃さずに観てほしいところ。

330G-010モデルの構造模型

5330G-010モデルの構造模型。しっかりその機能を再現してくれる。

 さらにもうひとつのジャパン・リミテッド・コレクションも見逃せない。それが、日本の文化をテーマに最高峰の職人技で製作されたユニークピースの数々。思わずその美しさ、芸術性に見惚れてしまう、ドーム型のテーブルクロックやポケットウォッチなどの希少なハンドクラフト・タイムピースだ。

このコレクションには、七宝細密画、クロワゾネ七宝、手彫金、細密な木象嵌、手仕上げのギヨシェ装飾、ジェム・セッティングなどパテック フィリップが細心の配慮を注いで保護育成してきた希少なハンドクラフト技術が駆使されている。さらに、エナメル細密画の巨匠アニタ・ポルシェさんを筆頭に世界最高峰の職人の作業の実演も見ることができる。


時計の歴史を実物で辿る歴史的展示も

 また最初に紹介したパテック フィリップの歴史的な傑作に加えて、特に時計の歴史について書くことが増えた筆者にとってはそれ以上に見逃せないのが、ふだんはパテック フィリップ・ミュージアムの歴史コーナーに展示されている、16世紀のドラム式機械式時計を筆頭にした、450年を超える時計の歴史を語るパテック フィリップ・ミュージアムの「オールド・コレクション」だ。

ペンダント・ウォッチ「ローズ・デ・ヴァン」

今回のパテック フィリップ・ミュージアム所蔵のオールド・コレクションで最も古い逸品。1548年にドイツのニュルンベルクで製作されたとされるペンダント・ウォッチ「ローズ・デ・ヴァン」。

 その中にはクロノメーターの開発で知られたフランス人時計師フェルディナント・ベルトゥーや、イギリス人時計師ジョン・アーノルドが製作したものも。ひとつひとつに釘付けになってしまうものばかり。

 加えて日本の時計コレクターが所有する、パテック フィリップの希少なプライベートコレクションの展示もある。


終了期間が迫っている! 有給休暇を使っても絶対観るべき!

 ジュネーブの旧市街から大噴水を背景にジュネーブ湖畔にある花時計を望む景色を再現したエントランスのように、このエキシビションは「ジュネーブのパテック フィリップの世界を東京に再現すること」が大テーマのひとつ。

会場の入り口にはジュネーブのシンボル、花時計と噴水の風景が再現されている。

 だが「歴史的な傑作時計を鑑賞する」という意味では、ジュネーブ以上の恵まれた理想的な展示が行われている。

 これは時計好きはもちろん、芸術、工芸が好きな人なら、絶対に絶対に観るべきコレクション。これが無料で観られる、しかもアクセスしやすい新宿で観られるのだ。期間は6月25日まで。時間はあまりない。午前10時から、なんと夜の20時まで観られる。入場は1時間前までだから、つまり夜の19時に間に合えばOKだ(ただし最終日の25日は17時までで、最終入場は16時まで)。

 おすすめは比較的空いている、だからじっくり自分が観たいものを観られる平日の昼間。1日でも半日でも、有給休暇を取ってぜひ新宿・三角広場に足を運んではどうだろう。現在はオンライン予約なしで観られるから、いっそう行きやすくなった。 新宿の近くにいて、一瞬時間が空いたら、さあ三角広場の「パテック フィリップ・ウォッチアート・グランド・エキシビション 東京 2023」へ。新宿駅西口、地下一階のコンコースの駅前交番あたりの紫の看板を目印に!


いま見ておかないと一生の損! パテック フィリップの「ウォッチアート・グランド・エキシビション 東京2023」もうすぐ終了!

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パテック フィリップが好例を示す「弾性」、困難から立ち直る力

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