カルティエを代表する腕時計コレクション「サントス ドゥ カルティエ」と、オリジナルの「サントス」が持つ特徴を現代によみがえらせた「サントス デュモン」を例に、カルティエのウォッチメイキングの非凡さを伝える。両モデルが持つ優れたパッケージングは、ムーブメントだけでなく、外装までも自社で手掛けるカルティエならではの魅力だ。
また、記事の最後にホディンキー・ジャパンの関口優編集長、ウォッチ情熱応援団・団長とクロノス日本版編集長広田雅将の3人で「サントス ドゥ カルティエ」に関して語った対談動画を掲載する。
[2023年6月30日公開記事]
自社製外装によって飛躍した「サントス ドゥ カルティエ」
世の中にはさまざまな時計メーカーがある。しかし、明確な目的を持って、マニュファクチュール化したメーカーはそう多くない。例外のひとつがカルティエだ。同社はまずムーブメントの内製化に取り組み、続いてケースやブレスレットも自社で作るようになった。カルティエの狙いは明快だった。つまりはムーブメントだけでなく、見た目もエレガントな時計を作ること、である。
同社がマニュファクチュール化して以降、カルティエの時計は明らかに質を高めた。ケースの表面の歪みは小さくなり、ブレスレットのガタも抑えられた。もちろん、かつてのカルティエも良質だったが、今のモデルは、カルティエという名前なしでも、選ばれるだけの質を持っている。
クオリティーを高めた同社は、続いて、内外装を統合した、エレガントな時計を作るようになった。その最も優れたサンプルは、「サントス ドゥ カルティエ」のブレスレット付きだろう。
1911年に完成した「サントス」を、よりポピュラーにしたのが、78年の「サントス ガルベ」だった。カルティエは、ステンレススティール製の防水ケースとブレスレットを加えることで、「サントス」を、どこでも使える万能時計としたのである。今風にいうと、これはカルティエが作り上げた初の「ラグジュアリースポーツウォッチ」だろう。
その後継機である「サントス ドゥ カルティエ」も、基本的には「サントス ガルベ」と同じ構成を持っている。丈夫なケースに、そして良質なブレスレット。しかしムーブメントは自社製の自動巻きに置き換わり、ブレスレットも簡単に取り外しができるようになった。
自動巻き(Cal.1847 MC)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。SS×18KYG(縦47.5×横39.8mm、厚さ9.38mm)。10気圧防水。交換可能なカーフスキンストラップ付属。168万9600円(税込み)
ムーブメントもケースも自社で作るメリットは、薄いケースが示すとおりだ。「サントス ドゥ カルティエ」の載せるCal.1847 MCは丈夫で、巻き上げ効率に優れた自動巻きである。その証拠に、今やこのムーブメントは、カルティエだけでなく、同社の属するリシュモン グループでも広く使われるようになった。
しかし、その厚みはわずか3.765mm。「サントス ドゥ カルティエ」は10気圧防水にもかかわらず、極めて薄いケースを持てるようになったのである。LMサイズの9.08mm、そしてMMサイズの8.8mmという厚さは、スポーツウォッチの中では最薄級だ。
ブレスレットの完成度も高い。ケースに合わせて、ブレスレットも薄く作られているため、時計部分とブレスレット部分の重さのバランスが取れている。長い間腕に載せても、疲れにくい理由だ。また、ブレスレットの長さも簡単に調整できるため、パートナーとのシェアもできてしまう。
加えてボタンを押すだけでブレスレットとストラップを外せる「クイックスイッチ」のおかげで、気分によって、ブレスレットやストラップを変えることが可能だ。つまり、新しい「サントス ドゥ カルティエ」は、キャラクターを変えることなく、よりいっそうの洗練を得たわけだ。
グラデーションダイアルで得た更なる個性
そんな「サントス ドゥ カルティエ」には、近年、もうひとつの個性が加わった。ブルーやグリーンのグラデーションダイアルは、かつてのカルティエには見られなかったもの。中心は明るく、外周に向けて暗くした文字盤は、この5年ほど、各社が取り組むものだ。とはいえ、カルティエのグラデーション文字盤は、他社のそれとは明確に異なる。
自動巻き(Cal.1847 MC)。SSケース(縦41.9×横35.1mm、厚さ8.83mm)。10気圧防水。102万9600円(税込み)。
(右)サントス ドゥ カルティエ
自動巻き(Cal.1847 MC)。SSケース(縦41.9×横35.1mm、厚さ8.83mm)。10気圧防水。102万9600円(税込み)。
というのも、カルティエの文字盤は明るい色と暗い色の境目がないのである。当たり前のように見えるが、数百万の時計でも、こういった仕上げを持てる物は少ない。エレガンスを目指すカルティエは、いよいよ文字盤にも手を加えるようになったわけだ。
【カルティエ「サントス ドゥ カルティエ」公式サイト】
https://www.cartier.jp/ja/collections/watches/all-watches/santos-de-cartier-all.html
外装とムーブメントに注力した「サントス デュモン」
外装とムーブメントの高度な融合をいえば、「サントス デュモン」の新作も興味深い。オリジナルの「サントス」を受け継ぐこのモデルは、「サントス ドゥ カルティエ」よりさらに薄いケースを持つ。傑作Cal.430 MCを載せた手巻きモデルはカルティエを代表する傑作だが、クォーツを載せたモデルも、劣らぬほど完成度が高い。
クォーツ。18KYGケース(縦43.5×横31.4mm、厚さ7.3mm)。日常生活防水。190万800円(税込み)。
「サントス デュモン」のケース厚は手巻きモデル、クォーツにモデルともにわずか7.3mmと、手巻きの「サントス ドゥ カルティエ」よりもさらに薄い。普通、これだけケースを薄くすると耐久性は下がってしまうが、自社製のケースは、「サントス ドゥ カルティエ」同様、かなりカッチリできている。その証拠に、薄いケースにもかかわらず、「クイックスイッチ」が採用された。
ムーブメントも優秀である。カルティエは、わざわざクォーツムーブメントを開発し、このモデルに採用した。今までとの違いは消費電力だ。徹底して電力を抑えることで、約8年間、バッテリーを交換する必要がないとカルティエは説明する。
もちろん機械式の手巻きも素晴らしいが、薄い「サントス」を気兼ねなく使いたい人にとって、クォーツという選択は大いにアリだろう。しかも、今のカルティエらしく、ケースや文字盤の完成度は非常に高いのだ。機械式だけでなく、クォーツでも手を抜かないというのが、今のカルティエなのである。
手巻き(Cal.430 MC)。Ptケース(縦46.6×横33.9mm、厚さ7.5mm)。日常生活防水。世界限定200本。予価344万5200円(税込み)。
(中)サントス デュモン
手巻き(Cal.430 MC)。18KYGケース(縦46.6×横33.9mm、厚さ7.5mm)。日常生活防水。世界限定200本。予価260万400円(税込み)。
(右)サントス デュモン
手巻き(Cal.430 MC)。18KPGケース(縦46.6×横33.9mm、厚さ7.5mm)。日常生活防水。世界限定200本。予価260万400円(税込み)。
ここで挙げたモデルに限らず、「サントス」を含む今のカルティエは、どれも非凡な完成度を持っている。個人的には、時計に知識を持っている愛好家の人にこそ、今のカルティエに触れて欲しいと思う。よく磨かれたケースや、ガタの少ないブレスレット、そして長時間着けても疲れないパッケージなどは、カルティエのイメージを変えるほどの驚きを与えてくれるに違いない。
Chronos × HODINKEE × ウォッチ情熱応援団 スペシャル対談
小誌編集長・広田雅将と、時計メディアであるホディンキー・ジャパンの編集長・関口優氏、ウォッチ情熱応援団・団長のスペシャル対談企画。
各々が感じるカルティエ「サントス」の魅力とは何か。今年の「サントス」の新作を交え実機を手に取り、時にカジュアルに、時に深く、3者が語り合った。
【カルティエ「サントス ドゥ カルティエ」公式サイト】
https://www.cartier.jp/ja/collections/watches/all-watches/santos-de-cartier-all.html
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