日本の鉄道は、おそらく世界で最も正確な定時運行を行っているだろう。その理由として、日本人が伝統的に時間厳守の認識を持っていることが挙げられる。それに加えて、運転席に備え付けられたセイコーの懐中時計も、定時運行に貢献していることだろう。
2023年7月5日掲載記事
1929年から鉄道用懐中時計の製作を続けるセイコー
もしあなたが東京を訪ねる機会があれば、パリの8倍の面積を持つこの都市を一周する環状線、JR線に乗ることになるだろう。
その際には、運転室がある先頭車両か最後尾車両に乗るようにしよう。運転室はガラス張りになっているため、流れていく景色を眺めることができる。それだけでなく、時間厳守が伝統となっている運転士や車掌たちの働きぶりを目の当たりにすることができる。
停車駅に列車が到着するごとに、運転士や車掌たちは列車から降り、時計を確認してから再び乗り込む。ぎりぎりで飛び乗ろうとする人がいないかどうか確認し、ドアを閉める。そしてまた時計を確認し、列車を出発させるのだ。
彼らは時刻を確認するために、自分の腕時計か、車掌室の所定の場所に格納されたセイコーの懐中時計で行う。この懐中時計は、現在直径50.4mmの耐磁性に優れたクォーツ式が採用されている。
20世紀初頭、日本の鉄道の運転士や車掌はウォルサムやゼニス、オメガ、エルジンなどの懐中時計を使用していた。スイスの時計メーカーによる独占状態に対抗するため、セイコーは自社の時計の精度向上に着手する。国内の鉄道関連市場の奪還を目指し、そして大きな成長を遂げたのだ。
セイコー初の懐中時計は1895年に登場した。そして1929年、懐中時計「セイコーシャ」が当時の鉄道大臣によって鉄道時計に指定された。その2年後の1931年には、運転士や車掌たちのために特別に設計された「初代24時表示鉄道時計」が発表されている。鉄道輸送の世界におけるセイコーの挑戦は、順調に進んでいたのである。
この時計は1971年まで製造され、その間ムーブメントには何度も改良が加えられていった。1976年になると最初のクォーツモデル(Ref.38RW)が登場し、1978年に鉄道向けの時計は耐磁性を有するクォーツ式となった。
日本における私の時計愛好家の友人たちは、時計の精度にも情熱を注ぐ人が多い。彼らの正確な時間への情熱は、時計製造の知識だけでなく、日常生活にも表れている。
日本人は、おそらく世界で最も時間に正確だろう。2013年は、日本航空(JAL)のフライトの88.94%が時間通りに到着した。この実績によって、JALは2012年と2013年に、世界で最も正確な運行を行う航空会社として表彰された。
日本の新幹線の平均遅延時間は20〜30秒で、これは1964年の新幹線開業以来変わっていない。他の列車の平均遅延時間は約50秒だ。たとえわずかな遅延であっても、発生した際にはその原因を探るための調査が行われる。フランスで頻繁に列車を利用し、SNCF(フランス国鉄)の行き当たりばったりの時刻表に慣れている人なら、きっと驚くことだろう。
新幹線の運転士は全員、最終目的地へ到着予定時刻から5秒以内に到着し、所定の停止位置から1m以内に列車を停止させることができるのだ
日本の鉄道システムは、年間230億人の乗客を運んでいる。そのうちの4分の3は、列車が時間通り来ないことに耐えられないと答えている。
実際、日本の友人たちは遅刻することを心から恐れており、約束の時間には必ず間に合う。翌朝の商談時間に遅れず到着するため、会合場所近くのホテルに一泊するという人もいるほど、みな時間に厳しいのだ。
https://www.webchronos.net/features/95504/
https://www.webchronos.net/features/97260/
https://www.webchronos.net/features/47568/