イギリス国王のチャールズ3世は、パルミジャーニ・フルリエの「トリック」を愛用していることで知られている。しかし、これ以外にもパテック フィリップや、カルティエ、ジャガー・ルクルト、また60歳の誕生日に贈られたブレゲのレギュレーターなどを身につけている。何世紀にもわたっていくつもの王室と関係を持つブレゲという時計ブランドと、イギリス王室との長年にわたるつながりを見てみよう。
2023年7月6日掲載記事
イギリス国王で最初のブレゲの顧客となったジョージ3世
1760年から1820年まで在位したジョージ3世(1738-1820)は、1780年代にブレゲの顧客のひとりとなった。実際イギリスは、パリに拠点を構えたニューシャテル出身のアブラアン-ルイ・ブレゲの作品に興味を持った、最初の国のひとつであった。
1789年春、ロンドンに出張したアブラアン-ルイ・ブレゲは、王室への滞納金を清算すると同時に、ジョージ3世とその息子であるジョージ王太子、つまり未来のジョージ4世(1762-1830)に新たな時計を売ることを望んでいた。そして、その目的は果たされた。
ロンドンには才能ある時計職人が多数いたにもかかわらず、ジョージ3世とジョージ4世親子の時計への関心は、そのほとんどがブレゲへと向けられていたのだ。ブレゲの前衛的な技術とシックなスタイルは、ふたりを強く魅了した。彼らは目の肥えた顧客として、ブレゲの最高級の時計を手に入れたのである。
1808年にジョージ3世に売却されたブレゲのトゥールビヨン「No.1297」は、パリのケ・ド・ロルロジェの工房から出荷された3番目のトゥールビヨンモデルであった。2020年、この時計はオークションに出品され、イギリス当局によって、国の文化遺産級の品物であるとみなされた。
ブレゲからトゥールビヨンとシンパティック・クロックを購入したジョージ4世
1810年に病弱な父ジョージ3世の摂政王太子の座に就いたジョージ4世は、1814年にトゥールビヨンを購入した。このトゥールビヨンは、おそらくすべてのトゥールビヨンの中で最も権威のあるものだろう。事実、これはブレゲが円錐形に取り付けた大型のデモンストレーション用モデルであった。
アブラアン-ルイ・ブレゲは、何度も展示してきたこの作品を手放すことに同意した。芸術と文化をこよなく愛し、彼の顧客の中でおそらく最も博識な時計愛好家であったジョージ4世の依頼を、彼は断れなかったのである。
同年、ジョージ4世はウィンザー城で現在も使用されているシンパティック・クロック「No.666/721」を手に入れた。この時計はエリザベス2世(1926-2022)の正式な許可を得て、2009年にルーヴル美術館で開催された大規模な展覧会「ブレゲ、ヨーロッパ時計製造の頂点」において展示された。展示のため、No.666/721はエリザベス2世の夫であるエディンバラ公フィリップの寝室から取り外され、約3ヵ月の間部屋を留守にした。
ジョージ4世は1820年に国王となったが、現在もロイヤル・コレクションとして保管されている、ふたつのムーブメントを備えた木製レギュレーター、ふたつのムーブメントを備えたレゾナンス・ウォッチ、そしてゴールドの乗馬用時計を含む、何点かの作品も購入している。
ヴィクトリア女王に献上された、巻き上げ機構を備えた薄型時計「No.5102」
1838年7月17日、前年に即位したばかりのヴィクトリア女王(1819-1901)は、ブレゲの時計「No.5102」を購入した。この時計は非常に小さく、薄型で、オフセンターの文字盤を備えていた。そして1830年にブレゲが導入した、まだ珍しいローレット加工のリュウズによる、ペンダント式の巻き上げ機構を搭載していた。
しかし、1901年まで続いた在位期間中に、ヴィクトリア女王がこの時計を着用したかどうかは定かではない。
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