スイス・ジュネーブ州で制定されているジュネーブ・シールは、厳格な審査基準が定められている時計規格だ。ヴァシュロン・コンスタンタンは、ジュネーブ・シール取得時計を数多く生み出しているブランドである。主なコレクションと人気モデルをチェックしておこう。
優れた品質の証「ジュネーブ・シール」
ジュネーブ・シールはごく少数の高級ブランドのみに与えられるムーブメント規格だ。内容を混同しやすいC.O.S.C.との違いも押さえておこう。
スイスにおける最高峰の時計規格
ジュネーブ・シールは、伝統的な技法で最高の仕上げが施されていることを証明する、スイスにおける最高峰のムーブメント規格である。ジュネーブ州の技術規格法24条に定められた検定に合格した時計にのみ、ジュネーブ・シールが与えられる。
ネジの頭部上面はポリッシュ仕上げまたはサーキュラーグレイン仕上げとするなど、かつての認定基準は時計の仕上げに関するものが主であった。しかし、2013年からは時計全体の実用性や品質にも照準が置かれるようになっている。
ジュネーブ・シールが与えられているのは、ヴァシュロン・コンスタンタンやショパールといった一部の高級ブランドのみだ。認証を受けた時計には、ムーヴメントにジュネーブ市章が刻印される。
C.O.S.C.との違い
C.O.S.C.とはムーブメントの精度の高さを認定する規格である。スイス公式クロノメーター検定機関(Controle Officiel Suisse des Chronometres)の略語であり、公式検定所の規格をパスすれば、C.O.S.C.認定を受けたことになる。
ジュネーブ・シールと同様、C.O.S.C.認定にも厳格な基準が設けられており、認定機として認められれば大きな付加価値を持つ時計となる。
ロレックスの現行モデルは、すべてがC.O.S.C.認定を取得済みだ。またブライトリングに関しては、生産終了モデルも含めたすべての時計がC.O.S.C.認定機である。
ジュネーブ・シール取得モデルがあるヴァシュロン・コンスタンタンのコレクション
ヴァシュロン・コンスタンタンは、数多くのジュネーブ・シール取得モデルをリリースしているブランドだ。まずは、取得モデルがあるコレクションの特徴を見ていこう。
実用性に優れたラグスポ「オーヴァーシーズ」
1996年に誕生した「オーヴァーシーズ」は、ヴァシュロン・コンスタンタンのラグジュアリースポーツウォッチコレクションであり、メゾン初のスポーツウォッチとなった「Ref.222」の後継機である。
優れた防水性、耐磁性、視認性を誇り、スポーツウォッチならではのスペックを備えている。ブランドの誇りを示す「マルタ十字」の意匠を取り入れたベゼルも特徴的だ。
金属製のブレスレットに加え、レザーとラバーの2種類のストラップが付属しており、インターチェンジャブル機構によってストラップの交換を容易にしている。
クラシックとモダンの融合「フィフティーシックス」
ヴァシュロン・コンスタンタンの「フィフティーシックス」は、現代的なエレガンスと親しみやすい雰囲気を併せ持つ時計だ。2018年登場の比較的新しいコレクションである。
フィフティーシックスのデザインは、メゾンの1956年製モデル「Ref.6073」から着想を得たもので、フィフティーシックスの名称も、Ref.6073が誕生した年を由来としている。
ダイアルやリュウズにはメゾンのシンボルであるマルタ十字のロゴがレイアウトされているほか、マルタ十字をアレンジしたラグは、Ref.6073の意匠が継承されたものである。
至高のドレスウォッチ「パトリモニー」
「パトリモニー」はヴァシュロン・コンスタンタンが誇るドレスウォッチラインである。1950年代の作品を現代的に解釈し直し、2004年に発表された。
伝統とモダンが調和したデザインによる、上品かつシンプルな佇まいを特徴としており、文字盤の曲面に沿ってセットされた時分針が、優美な表情を見せている。
豊富なラインナップが用意されていることも魅力だ。シンプルなスタイルから複雑機構モデルまでそろっており、サイズ展開も幅広い。
古典の再現「トラディショナル」
パトリモニーの派生モデルとして2007年に誕生したのが「トラディショナル」だ。ドーフィン針やレイルウェイトラックなど、クラシカルなディテールを備えている。
トラディショナルは1930~50年代の時計に敬意を表した時計である。パトリモニーが古典を再解釈しているのに対し、トラディショナルはクラシカルな要素をより強めている。
複雑機構搭載モデルを数多くラインナップしている点も、トラディショナルの大きな特徴である。パーペチュアルカレンダーやトゥールビヨンなどを搭載した、多彩なモデルを展開している。
ヴァシュロン・コンスタンタンのジュネーブ・シール取得済み人気モデル
ヴァシュロン・コンスタンタンの代表的なコレクションには、ジュネーブ・シール取得済みモデルが数多くラインナップされている。おすすめモデルの特徴や魅力をチェックしておこう。
オーヴァーシーズ・デュアルタイム 7900V/000R-B336
自動巻き(Cal.5110 DT)。37石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KPGケース(直径41mm、厚さ12.8mm)。15気圧防水。695万2000円(税込み)。
「オーヴァーシーズ・デュアルタイム(Ref.7900V/110A-B333)」は、デュアルタイム機構を備え、異なるふたつの時間帯をひとつのダイアルに表示させることを可能にしたモデルだ。
自社製自動巻きムーブメントCal.5110 DTは、約60時間持続するパワーリザーブを誇る。リュウズを両方向に回すことで、ふたつの時間帯の時刻調整を行える。
ブレスレット、レザーストラップ、ラバーストラップは、好みに合わせて付け替え可能だ。レザーストラップとラバーストラップは、工具を一切使用せずに交換できる。
フィフティーシックス・トゥールビヨン 6000E/000R-B488
自動巻き(Cal.2160/1)。30石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約80時間。18KPGケース(直径41mm、厚さ10.94mm)。3気圧防水。価格要問い合わせ。
フィフティーシックス初のトゥールビヨン搭載機がRef.6000E/000R-B488だ。トゥールビヨンとは、姿勢差による誤差を解消する、代表的な複雑機構である。
メゾンのアイコンであるマルタ十字が、トゥールビヨンキャリッジやリュウズ、ラグに施されたデザインはこのモデルでも踏襲されている。
約80時間のパワーリザーブを誇るムーブメントCal.2160/1の22Kゴールド製ペリフェラルローターを、トランスパレントバックから鑑賞可能だ。
パトリモニー・レトログラード・デイ/デイト 4000U/000P-H003
自動巻き(Cal.2460 R31R7/3)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。Ptケース(直径42.5mm、厚さ9.7mm)。3気圧防水。888万8000円(税込み)。
「パトリモニー・レトログラード・デイ/デイト(Ref.4000U/000P-H003)」は、1920年代や30年代の時計から着想を得たデザインとなっている。メゾンを代表するプラチナ950製ケースとサーモントーンの文字盤が特徴的なモデルだ。
サンバースト仕上げが施された文字盤には、パトリモニーのデザインコードが用いられている。12時位置にはメゾンのアイコンであるマルタ十字がレリーフ状に配されている。
ジュネーブ・シール取得のムーブメントCal.2460 R31R7/3には、マルタ十字から着想を得たオープンワークの22Kゴールド製ローターが備わっている。
トラディショナル・オートマティック 87172/000R-9302
自動巻き(Cal.2455/1)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KPG(直径38mm、厚さ8.02mm)。3気圧防水。433万4000円(税込み)。
「トラディショナル・オートマティック(Ref.87172/000R-9302)」はケース径約38㎜のクラシックモデルだ。全体のバランスが整った、端正かつ上品なデザインに仕上がっている。
ケース素材には18Kピンクゴールドを採用。外周のレイルウェイ型ミニッツトラックや根元にくびれを加えたドーフィン針など、クラシカルな美しさが際立つ。
トランスパレントバックからは、マルタ十字の形状に着想を得てデザインされた22Kゴールド製のローターを鑑賞できる。
雲上ブランドの高品質時計を堪能しよう
ジュネーブ・シールはスイスにおける最高峰の時計規格だ。選ばれしブランドの時計のみにジュネーブ市章の刻印が許される。
ヴァシュロン・コンスタンタンは、ジュネーブ・シール取得モデルを数多く生み出しているブランドのひとつである。気になる時計を手に取り、高品質たる理由をその目で確かめてほしい。
参考サイト:ヴァシュロン・コンスタンタン
https://www.webchronos.net/features/72588/
https://www.webchronos.net/features/77850/
https://www.webchronos.net/features/74619/