文字盤上で月の満ち欠けを表示するムーンフェイズは、所有欲をかき立てる機構のひとつだ。ヴァシュロン・コンスタンタンは、そんな魅力的なムーンフェイズ搭載モデルを多数発表している。そこで今回は、同ブランドのムーンフェイズのおすすめモデルを紹介する。
文字盤上の小宇宙「ムーンフェイズ」
ムーンフェイズとは、その日の月相を文字盤上で示す機能のことである。仕組みや歴史、高精度ムーンフェイズについて、理解を深めておこう。
月の満ち欠けを見せる仕組み
多くのムーンフェイズ機構搭載時計は、左側から月が出て上弦となり、12時位置の満月を経て右側に消えていくという表示で、月が見えない間は窓に隠れ、再び左側から月が出てくるという表示だ。
月の満ち欠けが一巡する周期は約29.5日である。一般的なムーンフェイズには29.5×2=59の歯数を持つ回転ディスクが組み込まれており、ディスクにはふたつの月が描かれている。
59の歯数を持つ回転ディスクが1周する間に、ふたつの月がそれぞれの満ち欠けを見せる仕組みになっている。これがムーンディスクの基本的な構造である。
ムーンフェイズの歴史
ムーンフェイズは元々、実用性を求めて誕生した機構だとされている。曇りや雨で月が見えない日でも、ムーンフェイズが示す月相を確認すれば、目視でもリアルな月の表情を把握できたのだ。
かつて月のメカニズムは人間の生活と密接に関係しており、人々は月の満ち欠けからさまざまな影響を受けていた。時計にムーンフェイズがたびたび搭載されてきたのも、月相を確認する必要性があったためであろう。
ムーンフェイズが腕時計に取り入れられたのは、1940年代に入ってからである。しかし、基本的なメカニズムは、16世紀ごろには既に発明されていたといわれている。
生涯動き続ける高精度ムーンフェイズ
59の歯数を持つ回転ディスクを使ったムーンフェイズは、約2年8カ月で1日分、実際の月の動きとのずれが生じる。この誤差を埋めるべく、より精度が高いムーンフェイズも登場している。
現在の高級機械式時計に搭載されているムーンフェイズに関しては、「約122年で1日の誤差」という精度がスタンダードだ。ヴァシュロン・コンスタンタンで使われている高精度ムーンフェイズもこのタイプである。
約122年で1日の誤差なら、生涯にわたり調節する必要はないだろう。なお、IWCは「577.5年で1日の誤差」、A.ランゲ&ゾーネは「1058年で1日の誤差」という超高精度の機構を開発している。
ヴァシュロン・コンスタンタンのムーンフェイズモデル
では、ヴァシュロン・コンスタンタンのムーンフェイズ搭載モデルを、各コレクションの特徴と併せて紹介しよう。いずれのモデルも、組み込まれているムーンフェイズは約122年に1回しか調節の必要がない高精度機構である。
フィフティーシックス・コンプリートカレンダー
自動巻き(Cal.2460 QCL/1)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KPGケース(直径40mm、厚さ11.6mm)。3気圧防水。638万円(税込み)。
「フィフティーシックス」は、クラシカルなデザインを特徴に持つコレクションだ。伝統とモダンを融合し、普遍的なスタイルを確立している。
ムーブメントはジュネーブ・シール取得のCal.2460 QCL/1が搭載され、日付・曜日・月を表示するコンプリートカレンダーが備わる。
ムーンフェイズは5N 18Kピンクゴールドの月が満ち欠けを見せ、白文字盤と見事に調和している。
パトリモニー・ムーンフェイズ & レトログラード・デイト
自動巻き(Cal.2460 R31L/1)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KWGケース(直径42.5mm、厚さ9.7mm)。3気圧防水。708万4000円(税込み)。
「パトリモニー」はヴァシュロン・コンスタンタンの伝統を現代的に再解釈したドレスウォッチラインである。正統派のオーソドックスなスタイルで、多くの時計愛好家の支持を得ている。
シンプルな文字盤は、指針式のレトログラード日付表示と高精度ムーンフェイズが共存し、視認性が高められている。
ホワイトゴールドのパール状ミニッツトラックは、緩やかにカーブした文字盤をエレガントに装飾する意匠だ。
オーヴァーシーズ・ムーンフェイズ・レトログラード・デイト
自動巻き(Cal.2460 R31L/2)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。SSケース(直径41mm、厚さ10.48mm)。5気圧防水。予価629万2000円(税込み)。ブティック限定。
1996年に誕生した「オーヴァーシーズ」は、実用性に優れたラグジュアリースポーツウォッチである。高い耐磁性・防水性を備えながら、エレガントな雰囲気も漂わせている。
2023年の新作である、オーヴァーシーズのムーンフェイズ搭載モデルは、コレクションの中で初登場となるレトログラードデイトと高精度のムーンフェイズが組み合わされている。
ワンタッチで付け替え可能なブレスレットとストラップが付属しており、シーンに合わせてスタイルをチェンジできることも魅力のひとつだ。
トラディショナル・コンプリートカレンダー
手巻き(Cal.2460 QCL/1)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KPGケース(直径41mm、厚さ10.72mm)。3気圧防水。651万2000円(税込み)。
「パトリモニー」の派生モデルとして2007年に登場したのが「トラディショナル」だ。パトリモニーが古典の再解釈なら、トラディショナルは古典の再現といえるだろう。
このトラディショナルに、ムーンフェイズ、そしてコンプリートカレンダーを搭載させた本作。ポリッシュ仕上げが施された、優美なラウンドフォルムのケースはクラシックである一方で、スレートグレーカラーの文字盤はコンテンポラリーな印象をも、もたらしている。
搭載するムーブメントは、フィフティーシックス・コンプリートカレンダーと同じく、ジュネーブシール取得のCal.2460 QCL/1だ。
意匠の見事さもさることながら、3気圧防水、そして耐磁性能が備わるなど、実用性に配慮されている点も見逃せない。
女性にもおすすめできる、エレガントなムーンフェイズモデル
女性の手元をエレガントに装うムーンフェイズモデルも、ヴァシュロン・コンスタンタンから展開されている。その一部を紹介しよう。
トラディショナル・ムーンフェイズ
手巻き(Cal.1410 AS)。22石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KPGケース(直径36mm、厚さ9.1mm)。3気圧防水。646万8000円(税込み)。
トラディショナルの中でも直径36mm、厚さ9.1mmと上品なサイズ感の「トラディショナル・ムーンフェイズ」。また、81個のダイヤモンドがセッティングされ、ケースとバックルに採用されている素材は18Kピンクゴールドという点もエレガントである。
ケースバックからは、手巻きムーブメントCal.1410 ASの美しい仕上げを鑑賞することができる。
エジェリー・ムーンフェイズ
自動巻き(Cal.1088 L)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KPGケース(直径37mm、厚さ10.08mm)。3気圧防水。814万円(税込み)。
「エジェリー」は、ヴァシュロン・コンスタンタンがオートクチュールとオートオルロジュリーからインスピレーションを得た、女性に捧げるコレクションである。
ムーンフェイズは、1時と2時の間にある36個のラウンドカットダイヤモンドが装飾されたリングによって輝きが引き立てられている。
マザー・オブ・パールを重ねて表現した雲の上に星がきらめく夜空が広がり、これが回転することで2つのゴールドの月を鑑賞することができる。
神秘的な魅力を放つ機構を堪能
ムーンフェイズの仕組みや歴史を知れば、この機構を搭載したモデルへの興味や愛着がより湧いてくるだろう。単なる装飾の一部ではなく、ムーンフェイズを通してブランドの信念や時計の発展の歴史にも触れることができるのだ。
スイスの名門ヴァシュロン・コンスタンタンのムーンフェイズ搭載時計を手に取り、神秘的な魅力を放つ機構を堪能してみよう。
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