多くの時計愛好家から支持を得るジラール・ペルゴの時計。なぜ、同社の時計は玄人を引きつけるのか。その理由をジラール・ペルゴを取り扱う時計専門店oomiyaの心斎橋店と京都店のブランド担当者に聞く。長い歴史と進化を続けようとする気概が、その秘訣だと語る。
Photographs by Takafumi Okuda
髙井智世:取材・文
Text by Tomoyo Takai
[2023年7月19日公開記事]
なぜ、ジラール・ペルゴは玄人好みのブランドなのか?
昨今、“高級時計ブーム”の話題を耳にするようになって久しい。日本各地の時計店の多くは、ブームの中心にあるラグジュアリースポーツウォッチを筆頭として、在庫確保に奮闘する日々が続いている状況だ。
しかし一方で、世情にとらわれることなく愛好家たちから情熱を注がれ続けるブランドも存在する。その最たる例が、ジラール・ペルゴだろう。なぜジラール・ペルゴは、他と一線を画す“玄人向けブランド”という立ち位置が確立されてきたのだろうか?
その理由を探るべく、時計専門店「oomiya」で日々、愛好家たちと接している各店のスタッフから話を聞いてきた。
5つの店舗が展開される時計専門店「oomiya」
関西圏を中心に5つの時計専門店oomiyaと、6つのブランドブティックを展開するオオミヤは、1978年の創業から今年で45周年を迎える老舗だ。店舗ごとに愛好家を満足させる充実のラインナップが取りそろえられ、幅広い要望に応え続けている。
今回は中心市街地である大阪ミナミの心斎橋店と、京都の四条通に位置する京都店を訪問し、それぞれの店舗のジラール・ペルゴ担当者に話を聞いた。
oomiya 心斎橋店が考えるジラール・ペルゴの魅力とおすすめモデル
〒542-0081
大阪市中央区南船場4-7-6
TEL:06-6251-0077
営業時間:11:00~19:00(水曜日定休)
2016年に移転オープンした「oomiya 心斎橋店」は大阪ミナミのラグジュアリーブランド街・心斎橋の御堂筋から西に1本入った南船場エリアに位置する。多彩なラインナップを誇るoomiyaの中でも、心斎橋店のみの取り扱いブランドを多数導入するなど目の肥えた愛好家から注目されている店舗だ。
ジラール・ペルゴは21年9月から取り扱いが開始されている。同店のジラール・ペルゴ担当、中住裕典さんに話を伺った。
まず、oomiya 心斎橋店におけるジラール・ペルゴの顧客には、ブランドや時計の知識を十分に備えた愛好家たちが多いと中住さんは話す。
「心斎橋店の特徴として、当店のみの取り扱いブランドが多いことが挙げられます。例えばジャガー・ルクルト、H.モーザー、ユリス・ナルダン、ロジェ・デュブイ、クロノスイス、エベラール、ゴリラなどをご覧いただけるのは、全国のoomiyaの中でも心斎橋店のみです。
珍しいモデルも入ってきますので、大半のお客様がいろいろな時計を見たいという理由で来店されます。そのようなお客様には、要望をお伺いした上で『こんなブランドや時計がおすすめですよ』とこちらからご提案をすることが多いです。それに対して、すでに欲しいものが明確に決まった上でご来店されることが多いブランドが、ジラール・ペルゴです」
ブランドが育んできた深い歴史がジラール・ペルゴの魅力
ジラール・ペルゴが愛好家の心を強くつかむ理由。中住氏に尋ねたところ、ブランドの歴史の深さにあるだろうと話してくれた。
「創業年の古さだけでなく、例えば“ラグスポ”モデルのロレアートひとつを取っても業界でいち早く1975年から展開しています。このジャンルのいわゆる先駆者として知られるのは、72年に誕生したオーデマ ピゲ「ロイヤル オーク」で、他にも“第1世代のラグスポ”として有名な時計には76年のパテック フィリップの「ノーチラス」や、77年のヴァシュロン・コンスタンタン「222」があり、これらと同時期に誕生しています。
長年の愛好家の方々はそういった“昔からあるラグスポ”という位置付けを理解し、大切にされています」
そう語る中住さんに、ジラール・ペルゴの現行モデルからおすすめを2本教えてもらった。
oomiya 心斎橋店が選ぶジラール・ペルゴのおすすめ時計①:「ロレアート 42mm クロノグラフ」
自動巻き(Cal.GP03300)。63石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。SSケース(直径42mm、厚さ12.01mm)。100m防水。244万2000円(税込み)。
「まずは『ロレアート 42mm クロノグラフ』ですね。ロレアートの特徴であるラウンドと8角形を組み合わせたベゼルがこのモデルにも採用されています。
本モデルの特徴は、ケースからブレスレットまで高耐食の特性を持つ904Lステンレススティールが用いられている点です。クロノグラフ秒針は青焼き針です。ロレアートの中でも高級感を求めている方におすすめです」
oomiya 心斎橋店が選ぶジラール・ペルゴのおすすめ時計②:「フリーブリッジ」
自動巻き(Cal.GP01800-1170)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約54時間。SSケース(直径44mm、厚さ12.2mm)。30m防水。283万8000円(税込み)。
もう1点には「フリーブリッジ」が挙げられた。フリーブリッジはムーブメントのブリッジをデザイン要素に昇華させた1860年代のオリジナルモデルに範を取る、ブリッジコレクションのモデルだ。
「ブリッジコレクションには「スリーブリッジ」や「ネオブリッジ」など、さまざまなシリーズがありますが、フリーブリッジはその中で最も求めやすい価格帯にあるモデルです。しかし作り込みは他に劣らず、立体感のある文字盤や、サンドブラスト仕上げなど細部まで徹底されています。ジラール・ペルゴの技術力や歴史が詰まった1本です」
oomiya 京都店が考えるジラール・ペルゴの魅力とおすすめモデル
〒600-8007
京都府京都市下京区立売西町72
TEL:075-229-6689
営業時間:11:00~19:00(水曜日定休)
続いて、2022年2月に京都市内で現在地へと移転し、ジラール・ペルゴの取り扱いを開始した京都店を訪問した。京都市営地下鉄「四条駅」ならびに阪急京都線「烏丸駅」から徒歩1分の大丸京都店向かいという好立地にあり、ショッピングエリアにあることから主に地元の常連客が多く訪れる店舗だ。
同店ではジラール・ペルゴ担当の内田有香さんが話を聞かせてくれた。
進化を続けようとする気概がジラール・ペルゴの魅力
ジラール・ペルゴが愛好家たちを引き寄せる理由。それを尋ねると内田さんは「職人気質」にあると答えてくれた。
「ブランドの歴史をひもとくと、ジラール・ペルゴは毎時3万6000振動/時の高振動を世界で初めて実現したり、クォーツウォッチの先駆者であったりするなど、数々の輝かしい歴史を持つブランドであることが分かります。
今でも新しいモデルを手に取るたびに、現状に甘んじることなくより良い時計を作ろう、老舗としてのプライドや独自性を大切にしようと前進しているブランドの気概が、昔から今まで変わらずにあり続けていることが感じられます」
oomiya 京都店が選ぶジラール・ペルゴのおすすめ時計①:「ヴィンテージ 1945 XXL ラージデイト&ムーンフェイズ」
内田さんにもジラール・ペルゴからおすすめを2モデル選択してもらい、その理由を尋ねた。最初に挙がったのは、トノーケースにシースルーダイアルやムーンフェイス付きの自動巻きムーブメントを搭載した「ヴィンテージ 1945 XXL ラージデイト&ムーンフェイズ」だ。
自動巻き(Cal.3300-0105)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。SSケース(縦36.1×横35.25mm、厚さ11.74 mm)。30m防水。249万7000円(税込み)。
「ヴィンテージ 1945 XXL ラージデイト&ムーンフェイズでまず伝えたいのは、その薄さです。本モデルは腕に沿って湾曲したケース形状をしています。湾曲ケースの時計はムーブメントの構造上、分厚くなりがちですが、本モデルは12mm以下という薄さに収められていて、なおかつ時刻表示以外にも2枚のカレンダーディスクやムーンフェイズ機能まで搭載されています。
これは高い技術力があってこそのものです。また、装着感の良さも伝えたいです。このモデルは大ぶりでありながら、ラグの角度まで計算が行き届いているため、フィット感がとても優れています。
分厚い時計にも存在感や男らしさなど良い点がありますが、薄い時計には上品さや、スマートさ、色気が感じられます」
内田さんは自身の腕に実機を載せながら「女性の私の腕ですらこれだけ安定感が出ます」と見せてくれた。
さらにその時計に顔を近づけ、「シースルーダイアルのため文字盤からムーブメントが透けていて、ブリッジまでコート・ド・ジュネーブやサーキュラーグレインなど仕上げ装飾が組み合わされているのが分かります。
また視認性のためにインデックスがサテン仕上げであることも私は“ミソ”だと考えます。ここまでやるかという部分まで計算の行き届いた、職人気質を感じさせる1本です」と話してくれた。
oomiya 京都店が選ぶジラール・ペルゴのおすすめ時計②:「ロレアート 42mm」
内田さんがもう1本選んだのは、ジラール・ペルゴの代名詞ともなっている「ロレアート 42mm」だ。2017年にレギュラーモデルとして復活して以来、コレクションを象徴している3針モデルである。
自動巻き(Cal.GP01800)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約54時間。SSケース(直径42mm、厚さ10.68mm)。100m防水。188万1000円(税込み)。
「こちらも知っていただきたいのは着け心地の良さです。腕に載せたとき、ヴィンテージ 1945と同様に腕とラグにわずかしか隙間ができないことに注目してください。加えて、ロレアートはブレスレットに装着感への工夫が見られます。
一般的には幅が一定のブレスレットが主流ですが、これが太いと重くなったり、締め付け感が出たりしますし、逆に細すぎても安定感がなくなったりします。ロレアートのブレスレットはラグからバックルにかけてひとコマずつ幅が異なっており、さらに厚みもケースとの重さのバランスが絶妙に計算されていて、安定感が高いです。
それから、やはりデザインが良いです。文字盤のクル・ド・パリ装飾をはじめ、ケースやパーツには惜しみなく複数の仕上げが施されています。またケースからラグにかけて流れるラインが美しいです。私は時計のラインの美しさはケース、ラグ、ブレスレットにかけての側面で決まると思います。
この時計は横から見ても、また裏側から見ても堪能できる時計です。ムーブメントにも複数の装飾仕上げが施されており、サファイアクリスタルケースバックから面取り部分が時折キラッと光って見えます」。
確かに使えば使うほど、魅力が見えてくる1本であることは随所から感じ取ることができる。
oomiya 心斎橋店と京都店では「ジラール・ペルゴ フェア」を開催中
oomiyaの心斎橋店と京都店では7月30日(日)まで「ジラール・ペルゴ フェア」を開催中だ。期間中にジラール・ペルゴの腕時計を購入すると、特典としてジラール・ペルゴオリジナルのウォッチスタンドがノベルティとしてもらえる。
また、oomiyaは常時アフターサービスに力を入れている。oomiyaで購入した顧客は時計を各店舗に持ち込めば精度チェック、磁気帯び検査、ブレスレット洗浄、ベルトの付け替え・サイズ調整などがいつでも無料で受けられる。
蛇足ではあるが、両店舗では購入検討時にお店からコーヒーが出されることがあればぜひ、ご堪能いただきたい。これは和歌山にある珈琲専門店からoomiyaのために特別にブレンドされた豆を取り寄せたもので、豆は毎朝その日に挽かれ、提供されるようだ。
ささやかなサービスではあるが、oomiyaが顧客との丁寧なコミュニケーションを重視するあらわれのひとつでもある。この機にジラール・ペルゴの実機を手に取り、また店舗の雰囲気や販売員の皆さんとの会話も楽しんでもらいたい。
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