2023年上半期に発表された新作ダイバーズウォッチのうち、特に注目したいモデルを6選取り上げていく。高い防水性や堅牢性、そしてアウターベゼル等が象徴する独特のデザインコードによって、ダイバーズウォッチはオールシーズンかつオールシーンで人気を誇る。当然各ブランドも力を入れているジャンルであり、2023年はいっそう豊富な新作モデルが出そろうこととなった。
Text by Shin-ichi Sato
[2023年7月30日公開記事]
見るべき2023年新作「ダイバーズウォッチ」
2023年上半期に発表された魅力的な新作を、ジャンル別にブランド横断で俯瞰する企画として「ダイバーズウォッチ」を取り上げる。防水性能を始めとした信頼性に対する技術力が色濃く表れるジャンルであるのに加えて、シティーユースとしての支持も厚いため、各社の特色を垣間見ることだろう。
チューダー「ブラックベイ 54」
ミドルクラスでダイバーズウォッチを選ぶなら外せないのがチューダーである。新作でも魅力的なモデルが複数追加された。その中で「ブラックベイ 54」を紹介しよう。
このモデルは、1954年発表で同社初のダイバーズウォッチである「オイスター プリンス サブマリーナ Ref.7922」を現代的に復活させたモデルだ。Ref.7922はフランス海軍とアメリカ海軍に採用されたことで知られるモデルで、ケース径37mmと現代基準では小ぶりであり、リュウズガードがないことが特徴であった。
また、後のモデルではアイコンとなる赤いトライアングルも採用されていないシンプルな外観を備えていた。本作はそれらを余すことなく受け継いでおり、抑えられたトーンや赤の挿し色がないためか、渋い雰囲気を醸し出している。
オリジナルモデルのアイコニックな雰囲気を求める層の他、コンパクトだが本格派なモデルを求める人に響くことだろう。オリジナルに準じたブレスレットの他に、現代的なラバーブレスレットも用意されるのに加え、コンパクトなモデルでもムーブメントのスペックに妥協がない点も、単なるトリビュートモデルに留めないチューダーの姿勢がうかがえる。
本作の登場により、ブラックベイのダイバーズモデルは、ケース径41mm、39mm、37mmと細かくラインナップされることとなる。歴史やスタイリングに応じて選ぶ楽しみに加えて、手首のフィット感で比較検討できる点は素晴らしい。自動巻き(Cal.MT5400)。27石。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径37mm)。200m防水。(左)46万3100円(税込み)。(右)49万600円(税込み)。(問)日本ロレックス/チューダー Tel.0120-929-570
https://www.webchronos.net/features/72589/
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G-SHOCK 「MRG-BF1000R」
各ジャンルに合わせた優れたツールウォッチをラインナップするG-SHOCKのダイバーズモデル「フロッグマン」の最高峰となる「MRG-BF1000R」が追加された。
G-SHOCKのラインナップ構成を少しおさらいしながら紹介すると、本作は高い性能と外観品質を備えるG-SHOCKの最高峰シリーズの「MR-G」に属する。また、特定の環境に特化した機能軸での分類として「MASTER OF G」の「SEA」に分類されている。この分類の中に、本作のような本格ダイバーズモデルの「フロッグマン」と、船舶での使用を想定した「ガルフマン」が含まれている。
さて、本作は、G-SHOCK初のISO規格に準ずるダイバーズモデルの系譜であるフロッグマンの最高峰モデルとなる。手の甲への引っ掛かりを回避しつつ、アイコンとなっている左右非対称シェイプのケースはチタン製である。
このケースは、MR-Gに相応しい外装品質を実現するために70以上のパーツ(Oリングや緩衝材を含む)に分割して、それぞれに仕上げが施されたのちに組み上げられている。外装だけではなく、機能面も充実しており、ダイブモードでは時分針が重なって「一本針状態」となって経過時間を読み取りやすくする機能や、潜水場所と時間などのダイビングログ機能を備える。
タフソーラー。Tiケース(直径49.7mm、厚さ18.6mm)。200m防水。59万4000円(税込み)。(問)カシオ計算機お客様相談室 Tel.03-5334-4869
https://www.webchronos.net/features/72589/
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ジン「T.50 ゴールドブロンズ」
ダイバーズウォッチを細分化して、用途に合わせたモデルを多数ラインナップするのがジンだ。会社の正式名称は「ジン特殊時計」であり、各ジャンルのプロフェッショナルに最適なツールウォッチを製造し続けている。
そんなジンのダイバーズウォッチの新機軸と言えるのが、ブロンズに12.5%のゴールドを配合した「ゴールドブロンズ125」を用いた「T.50 ゴールドブロンズ」である。本作は、ブロンズ特有のパティーナが生じて質感が変化する楽しみと、ゴールドによる海水に対する耐食性を両立している。ケース径41mm、時計仕上がり厚さ12.3mmに抑えつつ、500mの防水性能を備え、本格派のダイバーズウォッチとして性能は申し分ない。
また、欧州潜水器具規格に基づく検査・認定を受けるほか、負圧耐性を備える。さらに、脱落を防止する特殊勘合方式の回転ベゼルは「押して回す」誤作動防止機能を備える。このように数値スペックに現れない実践的な性能を有する点も見逃せない。ダイアルは手作業による個体固有のスクラッチ加工が施されて、光の反射による表情も与えられている。
自動巻き(Cal.SW300-1)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。ゴールドブロンズ125ケース(直径41.0mm、厚さ12.3mm)。500m防水。110万円(税込み)。世界限定300本。(問)ホッタ Tel.03-5148-2174
https://www.webchronos.net/features/72589/
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セイコー「プロスペックス 1968 メカニカルダイバーズ 現代デザイン GMT」
数あるセイコーのお家芸のひとつがダイバーズウォッチだ。今回の新作として、セイコーのダイバーズウォッチでは初となる24時間表示針付きモデルの「プロスペックス 1968 メカニカルダイバーズ 現代デザイン GMT」が発表された。
「現代デザイン」が示す通り、このモデルにはオリジナルが存在する。それは、1968年にセイコーが発表したダイバーズウォッチで、3万6000振動/時のハイビートムーブメントを搭載しつつ、ワンピース構造によって300m防水を実現したプロフェッショナルダイバーズウォッチである。
オリジナルの太くエッジの立ったラグや、4時位置のリュウズ、視認性の高い時分針とインデックスといったデザインコードを踏襲しつつ、本作ではイエローの24時間針が追加された。搭載される新ムーブメントのCal.6R54は、パワーリザーブ約72時間を備えるほか、24時間表示針の単独調整が可能となっている。
(右)セイコー「プロスペックス 1968 メカニカルダイバーズ 現代デザイン GMT SBEJ011」
自動巻き(Cal.6R54)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径42.0mm、厚さ12.9mm)。200m防水。20万9000円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室 Tel.0120-061-012
今回、定番モデルとしてグリーンモデルとブラックモデルが、そして「Save the Ocean」シリーズの限定モデルとして、極地に広がる壮大な氷河をテーマに、型打ち模様を施したアイスブルーダイアルのモデルが用意された。
この限定モデルには、ペットボトル再生原料を100%用いた、製紐(せいちゅう)と呼ばれる日本の伝統技術に基づく技法で編み込まれたファブリックストラップも付属する。
自動巻き(Cal.6R54)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径42.0mm、厚さ12.9mm)。200m防水。23万1000円(税込み)。世界限定4000本。(問)セイコーウオッチお客様相談室 Tel.0120-061-012
https://www.webchronos.net/features/72589/
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ベル&ロス「BR 03-92 ダイバー ホワイト ブロンズ」
コックピットクロックのデザインを腕時計に取り込んだ「BR 01」のイメージをそのままに、ダイバーズウォッチの性能を備えるのがベル&ロスの新作「BR 03-92 ダイバー ホワイト ブロンズ」である。
自動巻き(Cal.BR-CAL.302)。2万8800振動/時。ブロンズケース(直径42mm)。300m防水。世界限定999本。63万8000円(税込み)。(問)ベル&ロス 銀座ブティック Tel.03-6264-3989
特徴的なスクエアケースには300mの防水性能が与えられており、コックピットクロック譲りの高い視認性が特徴である。ケースにはブロンズを採用し、その色調とマッチするようにベゼルインサートにはブラウンが組み合わされている。
ダイアルカラーはパールホワイトと、ストイックさを押さえたクラシカルなヨットを想起させるデザインが与えられている。ストラップはケース幅に合わせた極太のものが合わせられ、際立った存在感を備える。
一方、落ち着いた印象にまとめられている点は、マロンカラーにライトブラウンのステッチを組み合わせたストラップを用いるなどベル&ロスのコーディネートの上手さによるものだろう。
https://www.webchronos.net/features/72589/
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パネライ「ラジオミール カリフォルニア」
イタリア海軍の特殊潜水隊員との歴史的なつながりが深いのがパネライである。イタリア海軍の要望に応じて特殊作戦に必要なダイバーズウォッチの他、照準器や照明、魚雷使用時に用いる計算機や信号灯の製造を行ってきた歴史を持つ。
今回発表された「ラジオミール カリフォルニア」は、ISO規格の観点で分類するダイバーズウォッチからは大きく外れるが、その歴史を鑑みてピックアップした。ラジオミールは、特殊潜水隊員用に作られた初期のダイバーズウォッチのデザインを色濃く伝えるモデルだ。
本作はカリフォルニア ダイアルと呼ばれる、時間インデックスのうちダイアル12時側半分をローマンインデックス、6時側半分をアラビアインデックスとした特徴的なダイアルを備える。また、パネライでカリフォルニア ダイアルと呼称する場合は、特に1930年代から40年代にかけて製造されたRef.3646と呼ばれるモデルをベースとしたものを指している。
手巻き(Cal.P5000)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約192時間。eスティールケース(直径45mm)。100m防水。163万4600円(税込み)。(問)オフィチーネ パネライ Tel.0120-18-7110
これまでパネライでは、Ref.3646と特徴を引き継ぎ、カリフォルニア ダイアルは47mmに限って用いられてきたが、本作にて初めて45mmモデルに採用された。ダイアルカラーはミリタリーテイストにあふれるオリーブグリーンのグラデーションであり、eスティール製ケースはブルニートと呼ばれる、使い込まれたかのようなエイジング加工が施されている。
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