シャネル ウォッチメイキング クリエイション スタジオ ディレクターのアルノー・シャスタンは、昨年発表されたケニッシ製ムーブメントを搭載した直径33mmのJ12について、こう語った。
クリエイション・ファーストを貫くウォッチメイキング
「最も留意したのは、モデル全体の重量バランスを取り、理想の装着感を実現することです。自動巻きムーブメント搭載モデルは、デザインのバランスを取らないと、どうしてもケースが厚くなってしまいます。J12のスポーティーな感覚は残しつつも、バランスの取れた理想の装着感を実現することが課題でした。そもそもJ12は、シャネルのフィロソフィーを具現化したものでなければなりません」
創業者のガブリエル・シャネルが体現した「クリエイションの自由さ」に加え、決して違和感を覚えさせないフィット感。このふたつを兼ね備えて初めて〝現代の女性にフィットする〞直径33mmの自動巻きJ12は完成することができたのだ。
シャネル ウォッチメイキング クリエイション スタジオ ディレクター。1979年、フランス生まれ。ストレート・スクール・オブ・デザインを卒業後、時計・宝飾ブランドに勤務。2013年5月にシャネル入社後、「プルミエール」「J12」「ボーイフレンド」「コード ココ」「ムッシュー ドゥ シャネル」等のデザインに携わる。彼が手掛けた時計は、2017年、18年、19年のジュネーブ ウォッチグランプリ(GPHG)において3年連続で受賞した。
「私にとって時計のデザインにおける〝シャネルらしさ〞とは〝時間のクリエイション〞にほかなりません。そして、そこには必ず〝スタイル〞が必要です。そのスタイルを築き上げるのが、私の役割なのです」
彼はこう語りながら、新作「ムッシュー ドゥ シャネル トゥールビヨン メテオライト」を例に挙げ、さらに説明を続ける。
「スタイル、そしてクリエイションが最優先のシャネルでは、ムーブメントを前提に時計をデザインするのではなく、ムーブメント開発者が我々に『どんな時計を創りたいか?』と聞くのです。シャネルではいつもクリエイションが先なのです。新作のムッシュー ドゥ シャネル トゥールビヨン メテオライトは、キャリッジの中心にダイヤモンドを置く既存のフライングトゥールビヨン、キャリバー 5のダイヤモンドをチタン製の獅子に変更したものですが、それは言うほど簡単なことではありません。トゥールビヨンキャリッジのバランスを取るのが非常に難しいのです」
こうした技術的な〝壁〞にぶつかった時、〝クリエイション・ファースト〞のシャネルの本領が発揮されるのだという。
「たとえ〝悪夢〞のように困難な技術的課題であっても、できないからといってクリエイションを妥協することはありません」
こうした時、シャネルでは時間的な制約がない。実際、キャリバー 5のキャリッジ中心のダイヤモンドをチタン製の獅子に置き換えるには4〜5年を要したほどだ。
スタイルと技術。このふたつが解決して初めて、新たなクリエイションが生まれる。シャネルのウォッチメイキングが、他のどのメゾンともまったく異なる理由だ。
トゥールビヨンキャリッジを支えるブリッジを持たないフライングトゥールビヨンを6時位置に配したムッシュー ドゥ シャネルの新作。メテオライトを文字盤に採用し、キャリッジの中心にはチタン製の獅子のモチーフを置いた。手巻き(Cal. 5.1)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。高耐性マットブラックセラミック×SSケース(直径42mm)。30m防水。1661万円(税込み)。
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