ロンジン、大空を舞うパイオニアスピリット

2023.08.08

190余年の歴史のなかで、パイロットウォッチの開発にも数々の足跡を残してきたロンジン。その長き伝統を凝縮させた新作が、現代的な利便性まで網羅したGMTモデルとフライバック付きのクロノグラフである。レトロを超えた高い完成度は、たゆまぬ開発精神の賜物と言えるだろう。

ロンジン スピリット Zulu Time

ロンジン スピリット Zulu Time
伝統的なパイロットウォッチの機能や意匠をベースに、最新技術をフィーチャーしつつ、歴史と革新を融合させたモデルがそろう「ロンジン スピリット」。本機は“空の歴史”における先駆者との自負を持つロンジンが打ち出すGMTモデルだ。新たに細い手首の人にもうれしい直径39mmモデルが登場した。自動巻き(Cal.L844.4)。21石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SS(直径39mm、厚さ13.5mm)。10気圧防水。45万3200円。
吉江正倫:写真
Photographs by Masanori Yoshie
長谷川剛:文
Text by Tsuyoshi Hasegawa
Edited by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2023年9月号掲載記事]


長年の経験と知識を持つパイオニアだから実現できた「ロンジン スピリット」

ロンジン スピリット フライバック
20世紀初期からパイロットウォッチにおける技術革新をリードしてきたロンジン。その足跡を形にしたフライバック付きクロノグラフが満を持してリリース。バイコンパックスレイアウトやペンシルハンドがクラシックな雰囲気を盛り上げる。C.O.S.C.認定のムーブメントはシリコン製ヒゲゼンマイを採用。自動巻き(Cal.L791.4)。28石。2万8800振動/ 時。パワーリザーブ約68時間。SS( 直径42mm、厚さ17mm)。10気圧防水。64万1300円。

 ロンジンの創業は1832年。その歴史のなかで、数々の傑作を生み出している実力派ブランドだ。世界で初めてクロノグラフを商品化したメーカーのひとつであるなど、当時から優れた技術力で、現在スタンダードとされる時計機構をいち早く世に広めた偉業はつとに有名。そんなロンジンの卓越したパイオニア精神と開発力を軸に、現代的な利便性を追求した近年の人気シリーズが「ロンジン スピリット」である。かつてのパイロットウォッチに範を求めたデザインは、時計愛好家のみならず幅広い層から支持を得ている。

(左)ロンジン スピリット Zulu Time
パイロットウォッチに確かな経験と知識を持つ古豪が、現代的アプローチで打ち出したGMTモデル。その最新作である直径39mmケースには18Kイエローゴールド製リュウズを使用し、さらにベゼルにキャップゴールドを施したモデルも加わった。自動巻き(Cal.L844.4)。21石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SS×18KYG(直径39mm、厚さ13.5mm)。10気圧防
水。60万3900円。
(右)ロンジン スピリット フライバック
20世紀の初期から高機能なパイロットウォッチを開発してきたロンジン。その伝統を詰め込んだフライバッククロノグラフが登場。ブルー文字盤のモデルは特にモダンかつクリーンな印象を持つ。自動巻き(Cal.L791.4)。28石。2万8800振動/ 時。パワーリザーブ約68時間。SS(直径42mm、厚さ17mm)。10気圧防水。65万6700円。

 新作のひとつである「ロンジン スピリット Zulu Time」は、飛行時計における先駆者たる矜恃を具現化した、実用的なGMTウォッチだ。そもそも複数の時間帯を表示する時計に関し、ロンジンは100年以上の経験と知識を有している。古くは1908年、2組の時分針によってふたつのタイムゾーンを示すポケットウォッチの開発に成功している。そして11年には最初の、18年には2番目の複数時間帯表示機能に関する特許を取得しているのだ。さらに25年には時分針に加え、12時間で1周する副時針を追加することで第2時間帯表示までを可能にした「ズールータイム」を完成させている。

Cal.13ZN

Cal.13ZN
ロンジンのCal.13.33をベースに1930年代に開発されたCal.13ZN。フライバック機能を有した、ロンジンを代表するクロノグラフムーブメントである。今なおヴィンテージファン垂涎の名機だ。コラムホイール。水平クラッチ。手巻き。18石。1万8000振動/時。直径29.8mm。厚さ6.05mm。

 また、飛行中の時間計測に便利なフライバッククロノグラフに関しても、同社は長年にわたりパイオニアを自認してきた。少なくとも25年には初の腕時計型フライバッククロノグラフを開発していたロンジンは、36年に同機構の特許を取得、同年に歴史的名機として知られるキャリバー13ZNを送り出す。フライバッククロノグラフは実際にフライトで活用された。世界初の南極大陸探検を実施したアメリカ人飛行士リチャード・バードは、39年、その3回目の南極探検において、フライバック機能を備えたキャリバー13ZN搭載モデルを着用していた。そしてこのたび、伝家のフライバックを搭載した「ロンジン スピリット フライバック」を追加し、スピリットシリーズをより魅力あるコレクションへと進化させたのである。

リチャード・バード

飛行家にして米国海軍士官であったリチャード・バード。世界初となる南極飛行(1929年)で彼を支えたのが、ソーラーコンパスとロンジンの時計だった。1939年の3度目のチャレンジでは、Cal.13ZN搭載のクロノグラフを着用していたという。

 GMTやフライバッククロノグラフなど、優れた実用機能の開発を世界に先駆けて行ってきたロンジン。その輝かしいヘリテージをアップデートし、継承していくことにも余念がない。それらの機構を搭載した新作は、単純な多機能ウォッチではない。長年の経験と知識を持つパイオニアだから実現できた、熟成の完成度にこそ大きな見どころがあるのだ。

ロンジンが開発したフライバック付きクロノグラフにおける特許は、1935年に出願され1936年に登録されている。その事実は公文書として確かに残されているのだ。

複数のタイムゾーンを示す機能を備えた時計開発に関してもパイオニアであるロンジン。写真は1925年リリースの初代ズールータイム。文字盤に描かれたZ信号旗から、ロンジン スピリット ZuluTimeはインスピレーションを得ているという。


Contact info: ロンジン Tel.03-6254-7350


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