ルイ・モネが2021年に発表した「アストロネフ」。ふたつのトゥールビヨンが搭載されており、かつ、それぞれが文字盤上を“逆方向”に高速回転する機構を備えたモデルだ。23年、このアストロネフがGerman Design Award 2024のプロダクトデザイン部門(ラグジュアリーグッズカテゴリー)において、特別賞を受賞した。ルイ・モネが同アワードで受賞したのは、今回で6度目となる。
ルイ・モネ「アストロネフ」が獲得したGerman Design Award 2024
ルイ・モネの「メカニカル ワンダーズ」コレクションの中の「アストロネフ」が、German Design Award 2024のプロダクトデザイン部門(ラグジュアリーグッズカテゴリー)において、特別賞を受賞した。この賞は1953年にドイツ連邦議会により設立されたドイツデザイン評議会が主催する国際的なデザイン賞である。世界各国のデザイン賞の受賞歴があり、かつドイツデザイン評議会の推薦を受けた作品のみが審査対象としてノミネートされる。
賞はプロダクトデザイン、建築、コミュニケーションデザインの審査部門に分かれており、ノミネートされた作品の中から優れたデザインに対してGold(最優秀賞)・Winner(優秀賞)・Special Mention(特別賞)が与えられる。アストロネフが獲得したのは、特別賞だ。なお、ルイ・モネが同アワードで受賞したのは、今回で6度目である。
独創性溢れる機構と意匠を備えた「アストロネフ」
手巻き(Cal.LM105)。56石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。18KPGまたはTiケース(直径43.5mm、厚さ18.3mm)。10m防水。世界限定8本。18KPGケースが7150万円、Tiケースが6380万円(いずれも税込み)。
時計師ルイ・モネの技術力・創造性・独自性を現代に継承し、機械式時計の機構に注目したコレクションがメカニカル ワンダーズだ。今回German Design Award 2024で特別賞を獲得したのは、このコレクションの中のアストロネフというタイムピース。
文字盤上に、高低差を付けてふたつのトゥールビヨンが配されているのがまず目に飛び込んでくるだろう。このトゥールビヨン、それぞれが逆方向に高速回転するというギミックを備えている。
高い箇所に取り付けられたトゥールビヨンは、時計回りに5分で1回転する。一方のトゥールビヨンは反時計回りに、10分で1回転だ。3分20秒ごと、1時間に18回ふたつのトゥールビヨンはすれ違い、また逆方向へと進んでいくのだ。トゥールビヨンであるため、キャリッジも60秒で1回転している。キャリッジのようなパーツが増えると負荷がかかり、安定的な駆動が途端に難しくなるものだが、ルイ・モネは軽量化によって、キャリッジの重量を0.25gに抑えた。また、ふたつの香箱によって、トゥールビヨンにエネルギーが供給されている。さらに、一定の回転速度のために、バランスウェイトをあしらうという工夫を凝らしている。
なお、この機構を実現する手巻きムーブメントCal.LM105は3年の開発期間が要されている。471のパーツで構成されたムーブメントは、組み上げるだけでも1カ月かかるという。
ラグが中空となっているため、正面のみならず、ケースサイドからもボックス型サファイアクリスタル風防を通して、ふたつのトゥールビヨンの動きを垣間見ることができる。インナーベゼルはこの風防の上部に取り付けられた。力強い時分針や、奥行きのある文字盤によってメリハリが効いており、複雑機構でありながら判読性が高い。
裏蓋側からの意匠も興味深い。ふたつの香箱やコート・ド・ジュネーブ装飾が施されたブリッジがのぞく他、さらにファンクションキーが設けられている。このファンクションキーは、リュウズによる主ゼンマイ巻き上げと時刻調整の機能切り替え装置だ。
機構はもちろん、意匠やディテールを見ても、受賞に納得できる逸品ではないだろうか。
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