大塚ローテックが、ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)2024のチャレンジ部門で、グランプリに輝いた。チャレンジ部門は価格3000スイスフラン(約50万円)以下の時計を対象としたものであり、同部門でグランプリを獲得するのは、国産時計として初となる。
世界でも認められた、大塚ローテックの実力
2024年11月13日、ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)2024の授賞式が執り行われた。各部門で2024年を象徴する時計たちが選出される中、見事チャレンジ部門のグランプリに輝いたのが、大塚ローテックの「6号」だ。
チャレンジ部門は、価格3,000スイスフラン(約50万円)以下の時計を対象としたものであり、毎年フレンドリーな価格ながら優れたパフォーマンスを秘めたモデルがノミネートされる。GPHG2023ではレイモンド ウェイルの「ミレジム」がグランプリを獲得し、一躍注目を集めたことも記憶に新しい。また、国産時計としてチャレンジ部門のグランプリに選ばれたのは、今回の6号が初であり、まさに快挙と言えるだろう。国産時計のプレゼンスが向上するのは喜ばしい限りだ。
レトログラード機構を特徴とする「6号」。6時位置にはディスク式の秒表示、4時位置には日付表示が配されている。自動巻き(MIYOTA9015+自社製レトログラードモジュール)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。SSケース(直径42.6mm、厚さ11.8mm)。日常生活防水。44万円(税込み)。
6号は、2015年に誕生した時分同軸のレトログラード機構を特徴とする時計だ。6時位置から時針と分針が伸び、まるで機械のメーターのようにダイアル上の目盛りをなぞっていく。針が右端に到達すると瞬時に帰零し、また針を進める。その精密な動きは、大塚ローテックの創業者兼代表である片山次朗氏が開発したモジュールによって実現したものだ。
2024年には、動作の安定性と耐久性の向上を狙い、6号はリニューアルを遂げる。基本的なデザインは不変だが、ケース素材をSUS303からSUS316Lへ、風防をミネラルガラスからサファイアクリスタルガラスへと変更し、加えてベゼルやダイアルに配されたビスや時分針の両サイドに面取りを施すなど、これらは一例に過ぎないが、内外ともに大幅なブラッシュアップを遂げた。
今回の受賞について、片山氏は次のように語った。
「世界中の素晴らしい時計が集まるコンペティションで選ばれたことを大変光栄に思います。私の時計製作は、約20年前ヤフオクで旋盤を購入し、機械の練習のつもりで腕時計の外装部品を作ったことから始まりました。どんどん楽しくなって、やりたいことが増えていきました。5番目に作った時計を恐る恐る売ったところ、喜んでくれる人がいたことが嬉しくてこれまで時計を作り続けてきました。これからも大塚で時計作りを続けていきます。」
今年、厚生労働大臣が定める卓越した技能者(現代の名工)に選出されたことでも話題となった片山氏。彼が率いる大塚ローテックは、これからも独自の世界観を表現した魅力的な製品によって、世界中の時計愛好家を虜にしていくに違いない。