ティファニーは、1912年に製造した歴史的な懐中時計を記録的な価格で落札したことを発表した。英国で開催されたオークションにおいてティファニーが197万ドル(約3億1083万円、1米ドル=157.83円、2024年12月27日現在、以下同)で落札したこの18Kゴールド製の懐中時計は、 タイタニック号関連のものとしては過去最高額となる。
ティファニー、タイタニック号事故の生存者が送った懐中時計を約3億円で落札
イギリスのオークションハウス、ヘンリー・アルドリッジ・アンド・サンに出品されたティファニー製の18Kゴールドの懐中時計が、ティファニー自身の手によって197万ドル(約3億0811万円)で落札された。この懐中時計は、タイタニック号の3人の乗客から、救助を行った客船カルパチア号船長のアーサー・H・ロストロン氏に感謝の意を込めて贈られたものだ。救助された3人の女性の名前は、マデリーン・タルメージ・アスター夫人、マリアン・ロングストレス・セイヤー夫人、エレノア・エルキンズ・ワイディーナー夫人である。
ティファニー・アーカイブが所蔵する台帳には、ワイディーナー夫人が後にこの腕時計を購入したことが記されている。この懐中時計には、「1912年4月15日、タイタニック号の生存者3名より、心からの感謝と敬意を込めてロストロン船長に贈呈。ジョン・B・セイヤー夫人、ジョン・ジェイコブ・アスター夫人、ジョージ・D・ワイディーナー夫人」という言葉が刻まれている。さらにはロストロン船長のイニシャルと関連があると思われる、ARHのモノグラムがあしらわれている。
感謝の意を示した黄金の懐中時計は、生存者のうちのひとりである、アスター夫人がアメリカ合衆国・ニューヨークの邸宅で主催した昼食会で船長に贈られた。当時の地元紙は、タイタニック号の生存者が集まった親密で有意義な会だと報じたのだった。
オークションに関わった関係者の言葉
ティファニーの副社長であるクリストファー・ヤングはこのように述べている。「ティファニーのジュエリーやオブジェは、19世紀半ば以来、世界のラグジュアリーの礎となってきました。ロストロン船長の懐中時計は、感謝の気持ちを表現した素晴らしいアイテムであり、この特別な宝物を再びティファニーに迎えることができて、身の引き締まる思いです」。
また、今回のオークションを主催したイギリスのオークションハウス、ヘンリー・アルドリッジ・アンド・サンのマネージングディレクター、アンドリュー・オルドリッジ氏は以下のように述べた。「タイタニック号に乗船していたすべての人たちには語られるべき物語があります。私たちは彼らの思い出の品を通して、100年の歳月を経た物語を語っているのです。このウォッチはアーサー・ロストロン氏の勇気と、タイタニック号で最も大きな影響力をもっていた3人の男性の妻から彼への敬意の証です。ティファニーがこのピースを販売してから112年後に買い取ったという事実は、ひとつの物語が完結し、この時計が故郷に帰ってきたことを示しています」。
長い時計製造の歴史を誇るティファニー
タイタニック号の遺品であるこの金の懐中時計は、ティファニーがウォッチとクロックの小売を始めた1847年までさかのぼる、長い歴史を誇る時計製造を象徴する、重要なシンボルなのだ。
1847年という年は、スイス・ジュネーブの中心部にティファニーがマニュファクチュールを設立した年でもある。そこでは、さまざまな複雑機構を備え、エナメルにエングレービング、宝石のセッティングなど、豪華な装飾が施された時計が製造されていた。