2020年1月30日、BBCやブルームバーグなどの主要メディアが、スイス・ジュネーブのハイジュエラーであるドゥ グリソゴノの倒産を報じた。
「ルワンダ・リークス」が暴いた、倒産への過程
アフリカで最も裕福な女性とされる、イザベル・ドス・サントス氏のスキャンダルにより、彼女と関係の深かった高級宝飾商、ドゥ グリソゴノは倒産を申請した。同社は、パリス・ヒルトンなどが愛用する、豪奢なダイヤモンドジュエリーで知られている。
同社のスポークスパーソンは、数ヶ月の交渉にもかかわらず新たな買い手を確保できなかったと表明。株式の売却交渉が失敗したため、スイス当局に債権者保護の申請を余儀なくされた。受理された場合、65名の従業員はすべて解雇となる。
1993年創業のドゥ グリソゴノは、2012年以降、アンゴラ国営のダイヤモンド会社とイザベル・ドス・サントス氏の夫であるシンディカ・ドコロ氏が最大の株主である。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、イザベル・ドス・サントス氏のスキャンダルを、最近公開された秘密文書の「ルワンダ・リークス」を通じて追求。ドゥ グリソゴノの買収に際して、不明瞭な取引があったと指摘する。
イザベル・ドス・サントス氏はアンゴラ前大統領である、ホセ・エドゥアルド・ドス・サントス氏の長女である。38年間の在職中に、ドス・サントス一族は石油やダイヤモンドといった、アンゴラの主要な権益を手にした。長女であるイザベル・ドス・サントス氏も、国営の石油会社ソナンゴルの責任者や民間銀行の筆頭株主などを務め、20億ドルの資産を持つと言われている。現在アンゴラの検察は、彼女とその仲間が国に10億ドルの負債を負っていると主張し、全額の回収を求めている。
2012年に、シンディカ・ドコロ氏とアンゴラ国営のダイヤモンド会社であるソディアムは、50対50の出資比率でドゥ グリソゴノを買収。しかし「ルワンダ・リークス」によると、ソディアムが買収に7900万ドルを投入したのに対して、ドコロ氏は400万ドルしか投資しなかったとされる。またソディアムは取引の仲介に対して500万ユーロの成功報酬を彼に与えたため、ドコロ氏は自ら出資する必要はなかった。
ソディアムに買収資金の貸し付けを行ったのは、イザベル・ドス・サントス氏が筆頭株主を務める民間銀行だった。ソディアムは同行に対して、年9%の利子を払う必要があり、その利率は、父親の発した大統領令によって保証されていた。ソディアムの現最高経営責任者は、ジャーナリストに対して、ドゥ グリソゴノの買収に伴うローンを完済すると2億ドル以上を失う可能性があると述べた。
またアンゴラ政府は、ソディアムのダイヤモンドが不当に廉売されていたと述べ、同国の情報筋はほぼ10億ドルが失われた可能性があると語った。
ソディアムは、ホセ・エドゥアルド・ドス・サントス氏が大統領を退任した2017年に、ドゥ グリソゴノの株式売却を進めたが失敗。2020年1月に、破産申請を出すに至った。
なお創業者であるファワズ・グルオジ氏は2019年初頭に引退を表明しており、ドゥ グリソゴノの倒産とは関係がない。また2015年以降同社の日本代理店を務めていたムラキは、2019年の12月31日に取り扱いを中止している。