今年で第9回目を迎える、隔年開催のチャリティーオークション「オンリーウォッチ」が、2021年11月6日(土)14時(日本時間22時)にジュネーブで開催される。実際に撮影した写真とともに、出品されるユニークピースを紹介する。
年々勢いを増すチャリティーオークション
50を越える時計ブランドが、世界で1本しか存在しないユニークピースを製作することで知られ、年々注目を高めている隔年開催のオークション「オンリーウォッチ」。その第9回目が、2021年11月6日(土)14時(日本時間22時)より、ジュネーブのイベント会場である「パレクスポ」にて開催される。
このオンリーウォッチは、モナコ大公アルベール2世の発案によって設立され、モナコ筋ジストロフィー協会が運営するチャリティーオークションだ。神経筋疾患、特にデュシェンヌ型を含む筋ジストロフィーの治療研究費用を集めることを目的としている。
遺伝子異常が引き起こす病気のひとつである筋ジストロフィーは、日本でも推定2万5000人以上の患者がいる指定難病。筋肉を構成するうえで必要な遺伝子に変異があるために、徐々に筋肉が弱ってしまう筋疾患である。その中でデュシェンヌ型は、筋肉の構造を保つために重要な「ジストロフィン」というタンパク質が作られず、筋力低下などを引き起こしてしまう。
2005年の初開催から、このチャリティー活動に賛同するブランドは回を重ねるごとに増え、これまでで約4000万スイスフラン(約49億8937万円:1スイスフラン=124.73円、2021年11月5日現在、以下同)を超える収益を得ており、そのすべてが研究費用として直接還元されている。
編集部が注目する25のユニークピース
今年のオンリーウォッチで最も注目されるモデルのひとつが、F.P.ジュルヌが製作したユニークピース「FFCブルー」。その特異な外観は、発表されるや否や多くの人が関心を寄せただろう。「手で時刻を示す」というアイデアは、著名な映画監督であるフランシス・フォード・コッポラによるもので、5本の指を出すパターンによって1〜12時までを表示する。自動巻き(Cal.FFC 1300.3)。2万1600振動/時。パワーリザーブ約120時間。タンタル製ケース(直径42mm、厚さ10.70mm)。30m防水。ユニークピース。落札予想価格:30万〜40万スイスフラン(約3733万〜4978万円)。
オンリーウォッチでは例年、9月開催のモナコヨットショーでそれぞれのユニークピースを発表し、世界の主要都市を巡回する展示会を行う。今年はコロナ禍であったため巡回展示実行の可否が問われたが、無事にワールドツアーを終えた。
モナコからスタートし、ドバイ、東京、シンガポール、香港、ジュネーブを巡る。日本では2021年10月8日から10日の間、クリスティーズの東京オフィスで展示会が開かれたため、編集部は日本で直接実機を目にする機会を得た。ここでは、注目すべきユニークピースの数々を一挙紹介する。
LOT 41/パテック フィリップ「コンプリケーテッド・デスククロック」
手巻き(Cal.86-135 PEND IRM Q SE)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約31日。925シルバー製ケース(縦164.6×横125mm、厚さ76.3mm)。非防水(湿気・埃にのみ対処)。ユニークピース。落札予想価格:40万〜50万スイスフラン(約4983万〜6229万円)。
今回のオンリーウォッチオークションで特に注目を集めるアイテムが、パテック フィリップが提供する複雑デスククロックRef.27001M-001だ。新型ムーブメントCal.86-135 PEND IRM Q SEを搭載し、永久カレンダー、ムーンフェイズ、週表示、約31日間のパワーリザーブ表示を備えるうえ、日差±1秒に調整されているというから驚かされる。
これらを実現するため、パテック フィリップは9つの特許を申請中だ。今回の出品作は、1923年6月にパテック フィリップがアメリカの自動車王ジェームズ・ウォード・パッカードに収めた歴史的なデスククロックをモチーフとし、そのオリジナルは現在、パテック フィリップ・ミュージアムに保存される貴重なものだ。
LOT45/リシャール・ミル「RM 67-02 シャルル・ルクレーク プロトタイプ」
自動巻き(Cal.CRMA7)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。クォーツTPT®︎ケース(縦47.52×横38.7mm、厚さ7.8mm)。30m防水。ユニークピース。落札予想価格:27万〜33万スイスフラン(約3367万〜4116万円)。
モナコ出身の若手レーシングドライバー、シャルル・ルクレークとともに作られたプロトタイプ。RM67-02は既存のモデルだが、素材やカラーリングを独自のものにカスタマイズしている。ケースには軽量で耐衝撃性に優れたクォーツTPT®︎を、ムーブメントの主要パーツにはチタンを使用した、極限まで軽く丈夫なドライバーズウォッチである。
LOT6/オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク 15202 “ジャンボ” エクストラシン オンリーウォッチ」
自動巻き(Cal.2121)。36石。1万9800振動/時。パワーリザーブ約40時間。Ti×Pd基合金(直径39mm、厚さ8.1mm)。5気圧防水。ユニークピース。落札予想価格:16万〜32万スイスフラン(約1995万〜3991万円)。
1972年のロイヤル オークで採用されたムーブメント、Cal.2121が搭載される最後のRef.15202。特筆すべきは、8角形ベゼルと裏蓋、ブレスレットを繋ぐスタッズに、パラジウム基合金である「バルク金属ガラス」を初めて採用したことだ。非常に高硬度で耐腐性に優れるこの素材は、ガラスと似た性質を持ち、鏡面仕上げにより眩く光を反射する。
LOT35/ルイ ヴィトン「タンブール カーブ GMT フライング トゥールビヨン オンリーウォッチ 2021」
自動巻き(Cal.LV82)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。18KPG×Ti(直径46mm、厚さ13.15mm)。50m防水。ユニークピース。落札予想価格:8万〜10万スイスフラン(約997万〜1247万円)。
今年の新作「タンブール カーブ GMT フライング トゥールビヨン」を一層華やかにしたユニークピース。カーブという名称の通り、12時から6時方向に大きく湾曲したケースが特徴で、軽量なチタンと重厚感のある18Kピンクゴールドを組み合わせた独創的な外装を持つ。気分を高揚させるビビッドなオレンジカラーが、オーナーを旅へと誘う。
LOT28/ウブロ「ビッグバン トゥールビヨン オンリーウォッチ」
自動巻き(Cal.MHUB6035)。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。サファイアクリスタル製ケース(直径45mm、厚さ15.30mm)。30m防水。ユニークピース。落札予想価格:16万〜18万スイスフラン(約1993万〜2242万円)。
オンリーウォッチ2021のテーマカラーであるオレンジをベゼルやストラップなどにあしらったユニークピース。サファイア素材に取り組むウブロは、ケースだけでなく受けもサファイアに変えることで、ヌケ感のあるトゥールビヨンを完成させた。本作はその色違い。写真が示すとおり、ムーブメントのヌケ感は比類ない。
LOT17/ショパール「アルパイン イーグル XL クロノ オンリーウォッチ」
自動巻き(Cal.Chopard 03.005-C)。45石。2万8800振動/時。ルーセント スティール A223ケース(直径44mm、厚さ13.15mm)。100m防水。ユニークピース。落札予想価格帯:3万〜5万スイスフラン(約374万〜623万円)。
近年の一大トレンドである“ラグスポ”然としたデザインで人気を集める「アルパイン イーグル」に、フライバッククロノグラフを備えたXL クロノ。本作の文字盤には、コレクションを印象付ける“鷲の目の虹彩”ではなく、スイスで採られた天然の花崗岩が採用されている。ブルーやグリーンなどのさまざまな色が混じり合った、アートな1本だ。
LOT 08/ベル&ロス「BR01 サイバースカル サファイア オンリーウォッチ」
手巻き(BR-CAL.209)21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。サファイアクリスタルケース(縦45×横43.3mm、厚さ14.07mm)。30m防水。落札予想価格:9万〜11万スイスフラン(約1121万〜1370万円)。
2020年に発表された「BR 01 サイバースカル」を本オークションのためにバージョンアップした特別限定モデル「BR 01 サイバースカル サファイア オンリーウォッチ」。ポイントはケースやスカルの素材にサファイアクリスタルを採用している点だ。ケースは3つ、スカルダイアルは6つのサファイアクリスタルから切り出したものである。
しかも、スカルには本オークションを象徴する色であり、ベル&ロスがモチーフとする航空計器のエマージェンシーカラーでもあるオレンジを採用。加えて、主ゼンマイを巻き上げるためにリュウズを回すと、世界にひとつのオレンジスカルの顎が動き、不敵な笑みを浮かべ、その下顎の背後に香箱が見え隠れする。スカルの脳を構成する無煙炭のテンプと併せて、機械式の鼓動を演出する。