新型コロナウイルス禍から脱却した2023年、時計業界は好景気に沸いた。この勢いを象徴したのが、各ブランドがリリースした23年発表モデルである。秀作ぞろいの顔触れは、まさに百花繚乱だ。今回のTop10ランキングは、23年に発表されたモデルのうち、特筆すべきマスターピースをテーマとした。秀作があふれる中で、上位にランクインしたモデルの票差は拮抗した。1位となったのはグランドセイコーの「エボリューション9 コレクション テンタグラフ」である。

[クロノス日本版 2024年3月号掲載記事]


2023年を象徴するマスターピース

10位 カルティエ/タンク ノルマル

24point / 2persons

カルティエ「タンク ノルマル」

カルティエ「タンク ノルマル」
手巻き。Ptケース。世界限定100本。811万8000円(税込み)。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00

●近年評価が高まる一方のカルティエのアーカイブ。その人気と勢いをそのまま形にしたような1本でありながらも、それを凌駕する仕上げの良さが際立った。オリジナルを超えたという印象。(安藤)

●新しさはないが、完璧無比なヴィンテージ感で記憶に残った1点。余計な演出なしのピュアな極上ドレスウォッチだ。(菅原)

9位 IWC/インヂュニア・オートマティック 40

30point / 2persons

IWC「インヂュニア・オートマティック 40」

IWC「インヂュニア・オートマティック 40」
自動巻き。SSケース。169万4000円(税込み)。(問)IWC Tel.0120-05-1868

●ジェラルド・ジェンタのデザインが再評価を受ける中、ラグスポの名作のひとつとしてファンから待望されていたモデルが復活。インヂュニアは耐磁時計ということもあり、今の時代にもピッタリ。ほどよくモダナイズされている点も高評価。(安藤)

●薄型のケースやエルゴノミックなデザインも含め、好バランスな時計。(篠田)

8位 ジャガー・ルクルト/レベルソ・トリビュート・クロノグラフ

36point / 3persons

ジャガー・ルクルト「レベルソ・トリビュート・クロノグラフ」

ジャガー・ルクルト「レベルソ・トリビュート・クロノグラフ」
手巻き。SSケース。ブティック限定。365万2000円(税込み)。(問)ジャガー・ルクルト Tel.0120-79-1833

●使えるサイズに面白いギミックを盛り込んだクロノグラフが復活した。そもそも優れていたベースを、今のジャガー・ルクルトが手直ししたのだから、完成度の高さは推して知るべし。しかも、内容を考えれば価格は妥当だ。受注の再開は朗報! (広田)

7位 ショパール/L.U.C 1860

37point / 3persons

ショパール「L.U.C 1860」

ショパール「L.U.C 1860」
自動巻き。ルーセントスティール™ケース。360万8000円(税込み)。(問)ショパール ジャパン プレス Tel.03-5524-8922

●ケース径36.5mmというサイズはジェンダーレスな時代に即したものだが、同時に小径化のトレンドも捉えている。もちろん、サーモンピンクのギヨシェダイアルとスティール製ケースのマッチングも素晴らしい。(名畑)

●デザインの趣向は原点回帰だが、新しさは独自の再生素材のルーセントスティールの活用にある。今後の取り組みにも目が離せない。(菅原)

6位 オーデマ ピゲ/CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ ウルトラ コンプリケーション ユニヴェルセル (RD#4 )

38point / 2persons

オーデマ ピゲ「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ ウルトラ コンプリケーション ユニヴェルセル(RD#4)」

オーデマ ピゲ「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ ウルトラ コンプリケーション ユニヴェルセル(RD#4)」
自動巻き。18KWGケース。要価格問い合わせ。(問)オーデマ ピゲ ジャパン Tel.03-6830-0000

●Cal.3120以降、着々とマニュファクチュール化を進めてきたオーデマ ピゲ。2023年のユニヴェルセルは、その集大成だろう。機能の多さもさることながら、使える操作性と十分な安全機構は他に類を見ない。2020年代を代表する時計となるはず。(広田)

5位 チューダー/ブラックベイ 54

39point / 4persons

チューダー「ブラックベイ 54」

チューダー「ブラックベイ 54」
自動巻き。SSケース。54万6700円(税込み)。(問)日本ロレックス/チューダー Tel.0120-929-570

●37mmの小径ケースのスポーツモデルは、マッチョすぎず、まさに業界待望の1本だった。細部までよく仕上げられており、簡単に長さを微調整できるバックルなど実用性も高い。それでいてこの価格を実現できている点に驚いた。(安藤)

●デザイン、サイズ、価格。すべてよし。(篠田)

4位 A.ランゲ&ゾーネ/オデュッセウス・クロノグラフ

40point / 4persons

A.ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス・クロノグラフ」

A.ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス・クロノグラフ」
自動巻き。SSケース。価格要問い合わせ。(問)A.ランゲ&ゾーネ Tel.0120-23-1845

●デザインを保持しながら、クロノグラフを追加。リュウズ操作でプッシャーの役割を変更するシステムにも驚き。(菅原)

●人気の“ラグスポ”、オデュッセウスのデザインコードを完全に死守しながら、新たにクロノグラフ機構を付加した点がいかにもA.ランゲ&ゾーネらしいこだわり。その凄みは、手にして操作してこそ実感できる。(安藤)

3位 ブレゲ/タイプ XX

40point / 5persons

ブレゲ「タイプ 20 2057」

ブレゲ「タイプ 20 2057」
自動巻き。SSケース。258万5000円(税込み)。(問)ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211

●ブレゲが満を持して発表したタイプ 20の新作は、アーカイブの良さをしっかりと盛り込んだ点が魅力。軍用のタイプ 20と民間用のタイプ XXの両方のスタイルが同時に発表されたのも面白い。個人的には2カウンター好きなのでタイプ 20を選定。(安藤)

2位 オメガ/スピードマスター スーパーレーシング

52point / 3persons

オメガ「スピードマスター スーパーレーシング」

オメガ「スピードマスター スーパーレーシング」
自動巻き。SSケース。179万3000円(税込み)。(問)オメガ Tel.0570-000087

●コーアクシャル、マスター クロノメーターにスピレートシステムを加え、日差0~±2秒という超高精度。挑戦を続けるオメガの技術が素晴らしい。(菅原)

●新開発の「スピレートシステム」により超精密調整を可能にしており、日差0~±2秒という高精度を実現。耐磁や精度の追求など「機械式腕時計の純粋な進化」を目指すオメガの、“極めてらしい”1本となった。歴史に残る時計だろう。(安藤)

1位 グランドセイコー/エボリューション9コレクション テンタグラフSLGC001

53point / 4persons

グランドセイコー「エボリューション9 コレクション テンタグラフ SLGC001」

グランドセイコー「エボリューション9 コレクション テンタグラフ SLGC001」
自動巻き。ブライトチタンケース。181万5000円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー)Tel.0120-302-617

●グランドセイコーとしては初となる機械式クロノグラフだが、10 振動/秒のハイビートで10気圧防水、コラムホイールと垂直クラッチの装備など、あらゆる点で世界水準をクリアした高級クロノグラフである。(名畑)

●グランドセイコー初となるメカニカルクロノグラフは、それだけで大きなインパクトがあった。性能的にも期待にしっかりと応えており、ハイビートでありながら、約72時間というロングパワーリザーブを実現した点も評価したい。(安藤)