美麗なシルエット。
成形加工のプッシュボタンと「GP」のロゴをエングレーブした薄いリュウズがフラットなケース側面を魅力的に演出する。
歴史は電光石火のごとく
1966年。それは、ビートルズが最後のライブ公演を行い、ベトナム戦争が本格化し、宇宙探査機が人類史上初の月面写真を地球に送り、FIFAワールドカップでイングランドが初めて優勝した年である。さまざまな分野の主要な出来事が1966年に集約されていたと言っても過言ではないが、「スウィンギング・シックスティーズ」と形容される1960年代は、政治的・文化的に劇的な変化があっただけではなく、モータースポーツでも熱い局面を迎えた時代である。それを象徴するかのように、アルファ ロメオは1966年にスパイダーを発表する。自動車の歴史でほぼその姿を変えず、最も長い間作られ続けたカブリオレのひとつである。
ジラール・ペルゴも1966年、激動の時代に合わせるかのように、毎時3万6000振動のハイビート機を初めて発表、それから約30年経った1994年には、多事多端な年だった1966年を冠した時計コレクションをリリースする。そして2013年、完全自社製のコラムホイール クロノグラフがここに加わり、ジラール・ペルゴ 1966コレクションがさらに充実した。
モダンなクロノグラフを搭載した新作だが、そのエレガントなボディは過去へのオマージュを感じさせるレトロな仕上がりとなっている。コラムホイールクロノグラフの上品な18Kピンクゴールド製ケースは、1966年に発表されたアルファ ロメオのスパイダーのように、エッジの利いたラインと丸みを帯びたフォルムが融合されており、ラグが先端に向かってスリムになっているケースや、ファセットが施されたクサビ型インデックス、自動車のメーターを彷彿とさせるタキメータースケールとサブダイアル、そして、先端を切り落としたかのように見える針やスクエア型のデイト表示など、各要素のデザイン的なコントラストは明瞭である。さらに詳細に観察してみると、小ぶりで薄いリュウズや、別のカラーではっきりと区別されたタキメータースケール、高低差のある文字盤表面、また、クロノグラフ秒針に付けられた長いカウンターウェイトなど、洗練されたさまざまなディテールを発見することができる。
加工品質はどうだろうか。シンプルなケースは、いささかの疑念も生じさせない素晴らしい仕上がりである。ポリッシュ仕上げは申し分なく、スリムでシンプルなデザインのプッシュボタンはリュウズ同様、ケースへの座りに遊びがなく、しっかりと取り付けられている。
だが、熱狂的なレースの最中に、このジラール・ペルゴ 1966 コラムホイールクロノグラフでお気に入りのマシンの走行時間を計時し、計測時間を素早く読み取ろうとすると、いくつか問題があることに気づく。明るいトーンの文字盤と、ポリッシュ仕上げされた18Kピンクゴールド製の針とインデックスにはあまりコントラストがないことから、判読がやや困難なのである。特に読みづらいのは細いクロノグラフ秒針で、タキメータースケールとサブダイアルに配された数字も非常に小さい。また、日付ディスクが文字盤から奥まった位置にあるため、光の当たり方によってはデイト表示の枠が日付ディスクの上に影を落としてしまう。そのため、大事なレースを観戦する際は、予備としてもうひとつ計測器を持って行った方が賢明かもしれない。
また、このレトロなクロノグラフは、操作自体にも集中力が必要だ。クロノグラフボタンは力を込めてしっかりと押さなければならないからである。それとは異なり、遊びなく取り付けられた薄型のリュウズは驚くほど扱いが快適である。リュウズは、深い刻み目の恩恵により、つかみやすく、指の爪で簡単に引き出すことができる。特にユーザーフレンドリーなのは、リュウズの第1ポジションで行う日付の早送り調整である。
半へり返しで仕立てられたダークブラウンのアリゲーター・ストラップも装着感が素晴らしい。作りは極めてクリーンで、斑の入り方も繊細だ。手放しで称賛し難いのは18Kピンクゴールド製のフォールディングバックルである。バックルを構成するパーツがあまりにも繊細なため、急いで時計を着用したい時には曲がらないか、少しはらはらする。バックルは作りが薄いだけでなく、簡単に開いてしまうため、モーターレースが佳境に入り、熱狂のあまり席に座っていられなくなった場合でも、立ち上がって激しく拍手喝采するのは意図的に控えた方がよいだろう。少なくとも、テストウォッチに関してはこの点がマイナスポイントとなった。