OMEGA Speedmaster Mark II
デザインに典型的な特徴を持つのがいわゆる70年代モデル。その復活は、単なる懐古主義ではお話にならない。当時のエナジーを彷彿とさせるのは、デザインだけではなく、未来を見据える技術革新にあった。
イェンス・コッホ: 文 Text by Jens Koch
ニック・シェルツェル: 写真 Photographs by Nik Schölzel
市川章子: 翻訳 Translation by Akiko Ichikawa
ニック・シェルツェル: 写真 Photographs by Nik Schölzel
市川章子: 翻訳 Translation by Akiko Ichikawa
+point
・考え抜かれたレトロデザイン
・精度に優れている
・汎用機からかなり向上したムーブメントを搭載
-point
・日付修正時に早送りができない
・ケース本体が若干ボリューム過多
70年代のエナジーを乗せて
スピードマスターを語る時、必ず引き合いに出されるのは月面着陸だ。
これは確かに興味深いエピソードのひとつではあるが、同時期に生まれたマークⅡが地球を飛び出して月へ到達していなくても、その魅力はなんら変わることはない。肝心なのは、マークⅡが徹頭徹尾スピードマスターそのものであるということなのだ。
スピードマスター マークⅡが最初に発売されたのは、アメリカ航空宇宙局(NASA)のアポロ11号が月面着陸に成功した1969年のことだった。当時、オメガが打ち出したかったのは時代に見合ったデザインだ。ケースとブレスレットはそれにふさわしい形状に仕立て、クロノグラフ針と積算計の針や目盛りにはオレンジの差し色を使用し、クラシックな文字盤スタイルよりも押し出しの強さを優先した。ひょっとすると、オメガはこれをもって従来のスピードマスターのクラシックなイメージの刷新をもくろんでいたのかもしれない。しかし、NASAは既に自身で検査して認定した時計を、また新たにテストし直してまで別のものに替えるつもりはなかったのだろう。オメガにとってNASAとの共同開発は威信を懸けたものだったが故に、旧来のモデルも作り続けることになったのである。