【82点】ジン/EZM10.TESTAF

2014.06.03

Sinn EZM10.TESTAF

子供時代に空を飛ぶ夢を見たことのない者はいないだろう。ジンのEZM10.TESTAFを身に着ければ、この夢が現実となる。パイロットウォッチ標準規格に基づくテストで認定されたクロノグラフが現実世界でも機能するか、検証を試みる。

ユリア・クナウト: 文 Text by JULIA KNAUT
OK-PHOTOGRAPHY: 写真 Photographs by OK-PHOTOGRAPHY
岡本美枝: 翻訳 Translation by Yoshie Okamoto


point
・堅固なケース
・暗所での視認性に優れる

point
・バックルの作りが簡素
・高額
 

パイロットとともに

僚から送られたメールを急いで読み、すぐに電車に乗り込む。1時間後には、ニューヨークに住む友人とスカイプの約束があるのだ。スマートフォンのディスプレイをひと目見て、それまでにどのくらい時間があるかを確認する……。日増しにデジタル化が進む我々の世界では、機械式腕時計は愛好家の遊び道具として、時代錯誤的な遺物と見なされているようにさえ思われる。だが、時計産業における売上高が増加の一途をたどっている現実を見れば、実際にはそうではないことがよく分かる。

テンプ、脱進機、香箱を備えた時計を所有することは、ステータスシンボルや美しいデザインを手に入れることだけが理由ではない。ジンのEZM10・TESTAFは、飛行機やヘリコプターのコックピットで機械式時計も緊急時の予備計器として、十分に機能することを証明するモデルなのだ。
EZM10・TESTAFは、アーヘン応用科学大学の協力を受けて、2008年に誕生したモデルである。TeStaFとは、「パイロットウォッチ標準規格」(原語:Technische Standard für Fliegeruhren)の略語である。「パイロットウォッチ標準規格」とは、民間機の飛行において腕時計が満たすべき諸条件を規定した、ダイバーズウォッチの規格のようなものである。TeStaFに基づくテストでは、機能性、外部応力に対する耐久性、安全性と適合性の、それぞれの分野で審査が行われる。TeStaFの審査で認定されれば、航空機に装備された各種計器が故障し、計器飛行が不可能になった場合、手動操縦に必要なすべての計時をこの時計で行えることが保証される。ジンの既存モデルとしてすでに供給されていたEZM10は、TeStaF認定書が交付された最初のモデルのひとつである。それを示すのが、文字盤の7時と8時の間に配されたグレーの小さなTeStaFマークである。EZM10・TESTAFとなったことでジンが変更しなければならなかった要素はわずかである。センター配置のクロノグラフ分針に蓄光塗料を加え、クロノグラフ秒針の発光面を拡大した点である。