精度の高さ
着用テストでは、一定してプラス1秒/日というわずかなプラス傾向により、秀逸な設計のムーブメントであることを手首の上でも証明してみせた。歩度測定機を使用したテストでは、ムーブメントはすべての姿勢でマイナス2秒/日からプラス2秒/日の間の精度を示した。最大姿勢差も相応に小さく、わずか4秒だった。計算上の平均日差は、わずかプラス0・7秒/日である。精度が優秀だったのに比べると、水平姿勢から垂直姿勢への振り落ちは平均的だった。
GMTマスターⅡの7200ユーロという価格は、中程度の価格帯に属する。セカンドタイムゾーンを装備したマニュファクチュールムーブメント搭載モデルには、GMTマスターⅡよりももっと安価なモデルもあるが、高額なものもある。だが、将来、安定した価値が見込まれることを考慮すれば、ロレックスに比肩し得るモデルはないだろう。
青と黒の新型ベゼルを搭載することで、ロレックスはこれまでで最も美しいGMTマスター Ⅱを完成させた。デザインは過去60年間、ほとんど変わっていないが、GMTマスターはアイコンモデルとしてその地位を確立し、決して時代遅れにはならない、むしろ時代の流行に左右されないクラシカルなルックスを持つ。
ロレックスは絶え間なく技術の向上に励んでおり、自社製のヘアスプリングやセラミックス製ベゼルによって持てるイノベーションを遺憾なく発揮している。ロレックスの技術はすべて、機能性を重視した結果であり、エクステンションからムーブメント、タイムゾーンの設定に至るまで、緻密に熟考されている。精度、視認性、装着性のどれをとっても、レベルが極めて高い。これでトランスパレントバックだったなら、どれほどうれしかったことだろう。GMTマスターⅡは、ブルーアワーだけではなく、いつでもどこでも使える時計なのである。
時計師からひと言
GMTマスターのデザインは過去60年間ほとんど変わっていません。ディテールの改善はわずかにとどまっており、弱点のほとんどない素晴らしい時計です。緩やかなカーブを持つコマで出来たブレスレットとオイスターロッククラスプは特に美しい仕上がりで、手首の形状に沿って完璧になじみます。ただ、加工品質が高いだけに、ディテールの甘さが目立つのが残念です。例えば、クラスプ内部にレーザーエングレービングで配されたロレックスのロゴは、もっと丁寧に入れるべきだったでしょう。