【80点】ヴァシュロン・コンスタンタン/ケ・ド・リル・ デイ/デイト&パワーリザーブ・オートマティック

2011.11.29

VACHERON CONSTANTIN QUAI DE L'ILE DAY DATE & POWER RESERVE AUTOMATIC

構成部品をカスタマイズできるケ・ド・リルは、個性を重視する愛好家にふさわしい。ケ・ド・リルは今回のテストで、日常使いにおける実用性も実証してみせた。

アレクサンダー・クルプ:文 Text by Alexander Krupp
ニック・シェルツェル:写真 Photographs by Nik Schölzel
岡本美枝:翻訳 Translation by Yoshie Okamoto

point
・興味深いモジュールコンセプト
・極めて秀逸な作り込み
・美しい自社製ムーブメント

point
・高額
・リュウズで設定できない日付と曜日
・テストウォッチでは精度が不安定

変えられるという贅沢

・ド・リルという、世界で最も贅沢に違いないモジュールシステムが発表されてから、今年で3年経つ。3年前、この新種のタイムピースの購入を決断した愛好家は、ドイツ国内に約100店舗ある専門店で持ち運び可能なカスタマイズ画面を使い、2種類の機能バリエーションと、それぞれに2種類用意された文字盤、そして、極めて多彩なケースコンビネーションから、構成を選ぶことができた。ドイツ国内の専門店では今年から、当時発表されたデイト付き3針モデルと、日付・曜日・パワーリザーブ表示を備えたモデルに加え、アニュアルカレンダー・レトログラードも販売されている。その上、3種類になった機能バリエーションの全モデルに、透明ではない、よりシンプルでプレーンな文字盤も用意されるようになった。

「ケ・ド・リル・デイ/デイト&パワーリザーブ・オートマティック」のテストウォッチにも、プレーンな文字盤が装備されている。3種ある機能バリエーションの中では2番目に複雑な、日付・曜日・パワーリザーブ表示を搭載したモデルである。現行コレクションでは、機能、文字盤、ケースの素材、ストラップから約700通りの組み合わせが可能である。ヴァシュロン・コンスタンタンが審美的な理由から特定の素材の組み合わせを“禁止"していなかったら、ケースにおけるカスタマイズの可能性はもっと増えていただろう。いずれにせよ、このマニュファクチュールはケ・ド・リルにより、ブランドにこだわりを持つ顧客に対して、可能な限り個性的であると同時に、ひと目でモデルを識別できる製品を提供するという、自らに課した要求を満たしているのだ。

クロノスドイツ版編集部は今回のテストのために、18Kピンクゴールドとチタンの標準的なモデルを選んだ。このほか、ケースの一部あるいは全パーツの素材として、白金族の貴金属、パラジウムを選ぶこともできる。ケースは、次の3つの構成グループで成り立っている。前述の通り、ヴァシュロン・コンスタンタンの美意識により、ひとつの構成グループ内では1種類の素材しか選ぶことができない。

1)ベゼル
2)ラグ(ラグの間に位置するアタッチメントとケースバックリングも含む)
3)ケースサイドと裏蓋側のホルダープレート

テストウォッチでは、構成グループ1)と2)が18Kピンクゴールドで、グループ3)はチタンで出来ている。モジュールコンセプトをより明確に打ち出すなら、ベゼルにはチタンやパラジウムを選ぶ方が適切かもしれない。だが、デザインが新しくなったクラシカルな文字盤には、正面をピンクゴールドで統一した方がよく似合うだろう。
ケ・ド・リルでは当初から、コピー防止対策も重要なテーマであった。紫外線に当てると浮かび上がる太陽のモチーフが入ったサファイアクリスタル文字盤のモデルは、2008年の発表以降、現在も入手可能である。ルーペで見ると、微細な文字も読むことができる。このサファイアクリスタル文字盤にはさらに、スイスの紙幣にも使用されている透明保護フィルムが両面に施されており、下側の保護フィルムには、無数の微細なマルタ十字がプリントされている。上側の保護フィルムには、文字盤の中心から外周まで届く放射状の線が60本入っており、ミニッツインデックスとして機能する。

極めて入念なコピー防止対策は、効果の上でも技術的にも興味深くはあるものの、ケ・ド・リルの購入を検討している顧客にとってはそれほど重要ではない。ケースの構造がすでに複雑さを極めていることから、この時計はコピーしようにも本物と寸分たがわぬ正確さでは作れないからである。こうしたことから、ヴァシュロン・コンスタンタン側でも、エレガントさを増した新世代の文字盤では、紫外線プリントの太陽モチーフ以外の安全対策を省略することができた。テストウォッチでは、4時と5時の間に太陽のモチーフを見つけることができる。