クロノグラフはリュウズを押し込んだ状態で回しながら操作する
着用テストでは、約3秒/日とプラス寄りの安定した日差が観察され、日常使いにもまったく問題ないことが証明された。いずれにしても、30分積算計ではクロノグラフ機能を短時間しか使えないため、クロノグラフを常に作動させておくことはあまり意味がないだろう。それに、クロノグラフを常時作動させたとしても、振り角が特別に良くなるわけでも、精度の向上が持続するわけでもない。今回のテストウォッチは、クロノグラフを駆動するためのエネルギーが1秒から2秒必要だった。そのせいか、クロノグラフ作動時のクロノCOSは約0秒/日に近い日差を記録したが、あくまでも腕に着けたときの数値である。歩度測定器で行ったテストも、着用テストと似たり寄ったりの結果だった。
文字盤の視認性は良好で、大きな時・分針とインデックスにスーパールミノヴァが塗布されているため、暗がりでも問題なく時刻を読み取ることができる。テストウォッチでは、サファイアガラスの風防が片面しか無反射コーティングされていない。そのため、光の当たり方によっては反射してしまって、グレー文字盤の風格が少し損なわれる感があるが、クロノCOSには風防が両面とも無反射コーティングされているモデルも用意されている。裏蓋のサファイアガラスはかなり大きく、シースルーバックを通してハブリング・ツーの技術を堪能できる。これには、ムーブメントを綿密に観察したい愛好家でも、失望させられることはないだろう。
また、クロノグラフ始動時にひっかかりがほとんど感じられない大きなクロノグラフ秒針は、特に強調したい特徴である。ETA7750 では、クロノグラフ秒針がリセットされて戻ったり、ジャンプして先に進んだりしているうちに、誤差が大きくなることが観察されがちだが、クロノCOSにこの欠点はない。リチャード・ハブリングはこれについて、次のように説明する。
「従来の設計では、クロノグラフの始動時に瞬間的な衝撃があります。これが、秒クロノグラフ車とそれに圧着されたクロノグラフ針など、バランスが不安定な構成部品に影響し、クラッチが誤作動する原因となるのです。通常、クロノグラフに不可欠なジャンパバネとレバー機構によって、プッシュボタンを押す場合にかなりの手ごたえがありますが、クロノCOSは最新型のオートマチック・トランスミッションのようにしなやかに切り換わるため、クロノグラフ秒針がジャンプする動作がETA7750の原型モデルよりも目立たなくなっています」
クロノCOSは内部に高い価値を備えたクロノグラフである。また、今の時代には、アンダーステートメントという要素も、かえって購買意欲の促進に貢献するのではないだろうか。
価格はどうだろう。ステンレススティールモデルやデイトモデルなど、さまざまなバージョンで入手することができる。ミドルクラスの上級者でありながら、名だたるマニュファクチュールの同クラスのモデルよりもはるかに手に入れやすい価格である。このクロノグラフは、ありふれた時計では満足しない、内部機構の価値を熟知している愛好家にとって、一考に値する選択肢となるだろう。
■スペック
製造者:ハブリング ウーレンテクニック
Ref.:なし
機能:時、分、スモールセコンド(ストップセコンド仕様)、30 分積算計
ムーブメント:A08COS (ETA7750ベース)、直径13 1/4リーニュまたは30mm、厚さ7.9mm、25石、スイス式レバー脱進機、スムーステンプ、ニヴァロックス・アナクロン製ヒゲゼンマイ、2万8800振動/時、拘束角50°、トリオビス緩急調整装置、片方向巻き上げ式ローター、シングルバレル、パワーリザーブ約48時間(±5%)
ケース:チタン製スリーピース構造、ねじ込み式ベゼルとサファイアガラスのねじ込み式ケースバック、リュウズ、片面無反射コーティング、ライトドーム型サファイアガラス、5気圧防水
ストラップとバックル:レザーとカーボンファイバーのコンビネーションストラップおよびSS製フォールディングバックル
サイズ:直径42mm、厚さ13mm、総重量95g
価格:117万6000円
*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。
精度安定試験 (日差 秒/日、振り角)
平常時:/クロノグラフ作動時
文字盤上:+5/+3
文字盤下:+6/+4
3時上:+5/+1
3時下:+5/+5
3時左:+5/0
3時右:+4/+3
最大日差:2/5
平均日差:+5/+3
平均振り角:
水平姿勢:308°/290°
垂直姿勢:273°/254°