【85点】オリス/アクイス デイト キャリバー400

2024.07.31

オリス/アクイス デイト キャリバー400

小規模ながらも効果的なマイナーチェンジ
オリスがウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブで新世代のアクイス デイトを発表した。一見、旧知の友に会ったときのような「変わらない」印象を受ける。しかし、このスポーティーなツールウォッチ、「アクイス デイト キャリバー400」をよく観察してみると、多くのディテールが見直されていることに気づく。

アクイス デイト キャリバー400

マルティーナ・リヒター:文 Text by Martina Richter
オリス:写真 Photographs by Oris
岡本美枝:翻訳 Translation by Yoshie Okamoto
Edited by Yousuke Ohashi
[クロノス日本版 2024年7月号掲載記事]

プラスポイント、マイナスポイント

+point
・見事にリニューアルされた名機
・マニュファクチュールムーブメント
・良好な精度
・ロングパワーリザーブ
・優れた耐磁性
・実用的なクイックアジャストシステム
・メーカー保証とメンテナンス不要期間が長い

-point
・ダイビングベゼルに15分までしか1分単位の目盛りがない

アクイス デイト キャリバー400の化粧箱

大半の素材が再生紙で出来ている新しい化粧箱。文字盤の色と同じくブルーだ。厚紙を組み立てて作られているフラットパックシステムを採用しており、容易に解体することができる。

 オリス自身、新しい「アクイス デイト キャリバー400」を「現代的なラグジュアリーを醸し出し、ユーザーにとって理にかなった、日常使いのための普遍的なプロフェッショナルウォッチの次世代モデル」と表現している。

 新作では、スイスの腕時計製造技術、機構、デザインが重視されているだけではない。博識な時計愛好家以外の人々に対しても説得力を持たせるべく、持続可能性にも力が注がれている。

 新作アクイス デイト キャリバー400では時計を収める化粧箱も刷新された。オリスは今回の取り組みを、ブランドの野心的な二酸化炭素排出削減プログラムにおける大きな一歩と位置づけている。

 オリスは2022年、続く3年間にわたり毎年10%の二酸化炭素排出量削減を目標に定めた。ここで注目されたのが腕時計の包装である。従来の化粧箱は製造コストがかかるうえに、廃棄されてしまうことも多かった。新しい箱は軽くコンパクトで、リサイクルされた段ボールで出来ており、使用後に資源としてリサイクルすることも可能だ。

 新しいボックスは腕時計を安全に保管し、顧客体験を損なうことなく、オリスのプラスティック消費量を年間1.5t以上、そして、梱包による二酸化炭素排出量を50%も削減することに貢献している。

 導入当初に抱かれていた懸念に反し、この化粧箱は高く評価されるものとなった。以前の化粧箱に比べ、65%も軽量化されたにもかかわらず、手に取ると、価値と重みをしっかりと感じることができる。

仕上がりの秀逸な新ケース

 美しいブルーカラーの新作アクイスデイトは、まるで深い海の底から浮かび上がってきたかのような姿だ。頑丈なツールウォッチとして陸上での着用を想定しつつ、プロ仕様のダイバーズウォッチとしての機能も兼ね備えている。

 複数の部品で構成される直径43.5mmのステンレススティール製ケースは、ダイバーズウォッチに不可欠な逆回転防止ベゼルを備えている。30秒刻みでかみ合うベゼルには、セラミックスがはめ込まれており、最初の15分までは1分単位、その後は5分単位で目盛りが刻まれている。新生アクイスにおける他のディテール同様、ベゼルも慎重に設計が見直されている。

 ベゼルの角度はわずかに下げられ、ドーム型のサファイアクリスタル製風防と一体感のあるラインを描いている。なお、風防には片面反射防止加工が施されている。

安全に留まるステンレススティール製ブレスレット

アクイス デイト キャリバー400

以前のモデルと比べて、リュウズの保護パーツはテーパーが強くかかり、よりスリムな形状となった。風防と一体化した印象を与えられるように、ベゼルの形状はやや下向きに修正された。

 リュウズの保護パーツも形状が見直された。以前のモデルと比べてやや小さいリュウズの側面を守るこのパーツは、テーパーを強くすることで厚みが抑えられた。

 側面に溝が刻まれたねじ込み式リュウズの操作性は良好だ。ねじ込みの解除も容易であり、1段引き、2段引きとポジションを変更しても、安定して操作することができる。元に戻すときには、軽く押すだけでねじ込むことができる。

 堅固な印象を受けるラグは、エッジやファセットが再設計されたことで、この腕時計全体のシルエットに変化をもたらした。

 アクイス デイト キャリバー400で注目すべき点は「クイックストラップチェンジ」を搭載した、腕時計から簡単に外すことができる3連ブレスレットだ。オリスが特許を取得したこの機構は、腕時計とブレスレットがしっかりと接続していることを実感できる実用的なものだ。ブレスレットに設けられたジョイントの爪を、腕時計のケースに付いたバネ棒に通した後に内側に折り込み、ブレスレット上に突き出た金属パーツにカチッとはめ込むことで装着が完了する。

アクイス デイト キャリバー400

ブレスレットに注目すると、中央列のコマの1コマ目にある「クイックストラップチェンジ」の爪がしっかりとケースに付いたバネ棒を押さえていることがわかる。このシステムのおかげで、ストラップを容易に変更できる。

 また、オリスが特許を取得した新しい「クイックアジャストクラスプシステム」を備えたブレスレットは、快適な装着感に貢献している。腕時計を手首から外すことなく、クラスプの両サイドにあるふたつのボタンを軽く押し、中留めプレートの位置をずらすと、2段階で最大約5mm伸ばすことができる。加えて、クラスプには15mmの調整が利くダイバーズエクステンションも内蔵されている。ブレスレット周辺の修正を見るに、オリスが機能性を重視していることが理解できる。

 ステンレススティール製ブレスレットのフォルムも見直された。ブレスレット全体の形状はバックルに近づくに連れて細くなり、中央のサテン仕上げのコマは幅が広くなった。

アクイス デイト キャリバー400のブレスレット

今回取り上げた最新の「アクイス デイト キャリバー400」の大きな変更点はブレスレットのクラスプだ。「クイックアジャストクラスプシステム」と名付けられた、マイクロアジャスト機構を搭載している。

文字盤の色に合わせた日付表示ディスク

 次は文字盤を見てみよう。時針と分針は、アルファ針に近い形状をしており、ポリッシュされたアワーインデックスは盾を連想させる形だ。これらのパーツには蓄光塗料が塗布されているため、暗闇の中でブルーに光り輝く。秒針のドットも同じく暗所で光るため、暗い海でダイビングしていても、腕時計が正常に稼働していることが確認できる。

アクイス デイト キャリバー400

暗所で蓄光塗料がブルーに輝く針とインデックス。蓄光塗料は時針、分針、インデックスの広い範囲で塗られており、暗所での視認性は良好だ。

 6時位置にはインデックスの代わりに日付表示窓が置かれ、その外側にひとつの小さなドットが配されている。日付ディスクは文字盤に合わせたブルーで、日付を示す白い数字とのコントラストが美しい。

 日付表示窓の上にはモデルネームや300m防水と約5日間のパワーリザーブを表す文字が、アクイスシリーズのみで採用された新しいフォントで記されている。

ダイビングのためのロングパワーリザーブ

Cal.400

Photograph by Masanori Yoshie
オリスの自社開発によるCal.400は、2020年に登場した頑丈なムーブメントだ。ラックとピニオンで緩急針を保持する微動緩急針を採用して、衝撃を受けたときの緩急針の針跳びを防止している。また、ガンギ車やアンクルにシリコンを用いることで耐磁性も有している。

 この腕時計は、サファイアクリスタル製のシースルーバックとねじ込み式リュウズを備えた強固なケースにより高い防水性が確保されている。

 2020年に発表されたマニュファクチュールムーブメント、Cal.400は約120時間ものロングパワーリザーブを有する。これは、直列に接続されたダブルバレルによって実現したものだ。

 Cal.400はマイナス3秒/日からプラス5秒/日の間で調整されており、公認クロノメーターよりも厳しい条件をクリアした仕様だ。着用テストでは、フルに巻き上げた状態での平均日差がプラス2秒弱/日、着用時はわずかプラス1.5秒/日だった。振り幅が安定していたことも注目に値する。

 ロングパワーリザーブに加え、アクイス デイト キャリバー400は秒針停止機能を備え、日付はクイックチェンジで切り替えることができる。自動巻きローターにはボールベアリングではなく、スライドベアリングが採用されている点は珍しい。

 オリスによると、スライドベアリングは負荷試験では5000Gに相当する衝撃に耐えたという。さらに、Cal.400は高い耐磁性能を備え、着用時、周囲にあふれる磁気の影響をなるべく受けないよう、シリコン製のアンクルやガンギ車をはじめ、30点を超える部品に耐磁性を備えた材料が使われている。

 こうした技術改良の恩恵により、オリスは10年間のメーカー保証を提供しており、メンテナンス不要期間も約10年と長い。

 信頼性を追求したCal.400は、ダイバーズウォッチ「アクイス デイト」においてきわめて重要な役割を果たしている。そのムーブメントは、サファイアクリスタル製シースルーバックを通して観賞できる。

 ラグジュアリー、パフォーマンス、洗練を同時に求める現代のコスモポリタン。その要望を満たすスポーティーなツールウォッチを提供するという、オリス アクイスが目指すビジョンがここに実現されている。