【77点】ポルシェデザイン/ モノブロック・アクチュエーター 24H クロノタイマー

2017.12.29

ポルシェ GT3とは異なり、モノブロック・アクチュエーターはエンジン部が外から見えるのも愉悦のひとつ。ETA7754は汎用機だが、ロゴをかたどったローターでオリジナリティを表現している。


トラディショナルなデザイン

 こうしたパーツの作りや動き、スリットの入り具合には、技術者の技法がよく表れているように思う。なにしろすべてがわずかな力でスムーズに作動するのだ。手間の掛かっていることを感じさせるが、それはデザインの良さに基づいている。ポルシェの911が多くのクルマの中でも数少ないアイコンのひとつで、その存在には長い伝統があるように、ポルシェデザインのクロノグラフもまた、自身の伝統を形作ってきたことで知られている。今回のテストウォッチの色は、1972年に発表された同ブランド初のクロノグラフが黒いケースだったことを踏襲している。また、チタン素材とモノブロックロッカーアームおよびタキメーターが特徴的な文字盤を備えたデザインコンセプトは、1980年に登場したモデルに由来する。こうしたディテールのすべてをポルシェデザインはトノーのフォルムで現代的にまとめ上げた。

 

 ともあれ名高いデザインアイコンを手に入れるには、悦楽に酔う前にやるべきことを済まさねばならない。最高速度が時速320㎞のGT3は価格が2115万円(税込)。だが、GT3の走りをライプチヒにあるポルシェ所有のサーキットで体験したいと思ったら、いきなり購入しなくても、まずは2日間の走行トレーニングを体験できる。料金は4750ユーロだが、忘れ難い思い出が作れるに違いない。

ストラップは溝の入れ方が至ってシンプル。サーキットでの走行を終え、ドリフトを体験したGT3のタイヤをどことなく思わせるような作りだ。

 一方、モノブロック・アクチュエーターはブラック&ラバーのバージョンでは体験走行よりは若干値が張る92万円となる。しかし硬いチタンカーバイド加工のケースの仕上がりの良さや、巧みな仕組みのモノブロックロッカーアームを考えると、見合った価格と言えるだろう。

 サーキットを何周かして、フラット6エンジンを止める時が来た。GT3の座席から身を起こし、外へ出ると、熱気を帯びたクルマは朝日を受けて燦然と輝きながら、名残惜しくもコース外の元の位置へと遠ざかって行く。そして腕時計に目をやると、自分で操作する悦びが手元にもあることを再確認できた。クルマに腕時計はよく似合う。そして、それぞれが操縦の魅力に溢れているのだ。