【81点】パネライ/ ルミノール サブマーシブル1950 アマグネティック スリーデイズ オートマティック チタニオ - 47mm

2018.09.09
発光と反射

 ダイバーズウォッチの場合、水中での視認性が特に重視される。サブマーシブルの風防は、水中の方が陸上よりも反射しない。また、蓄光塗料が十分に塗布されていることから、時刻を素早く読み取ることができる。ベゼルの蓄光マーカーと分針は青色に、他の表示要素は緑色に発光し、潜水時間に関する表示要素を蓄光塗料の色で識別できるので、時刻と潜水時間を見分けるのもたやすい。スモールセコンドも発光するため、水中で時計が動いているかどうか確認するのにも役立つ。

 水中から上を見ると、氷の層はすりガラスで出来た板のように見え、上昇用の穴はまるで窓のようである。ダイバーが発する気泡が上昇して氷の下に集まり、大きな塊となる。極めて幻想的な光景だ。冬は特に、浮遊物や藻が少なく、水中での視界が良好なため、その光景は一層際立つ。

 サブマーシブルの防水性能は30気圧だが、今回、これを実証するテストを行うことはできなかった。湖の水深は40mもなく、安全用のロープも10mと、短かったためである。

パネライのサブマーシブルには過酷な温度環境下での正確な作動だけでなく、硬い氷との接触にも耐え抜くことが求められる。

ダイバーが発する気泡が上昇して氷の下に集まり、大きな塊となって輝く。幻想的な光景である。


 3回の潜水セッションを終え、サブマーシブルを詳細に観察してみた。結果は期待通りで、サファイアクリスタル製の硬い風防と堅固なセラミックベゼルに傷はひとつもない。傷が付いていたなら、かなり目立つ場所である。チタン製ケースも裸眼では無傷に見える。ルーペを使用して初めて、サテン仕上げのケース側面に細かな傷を認めることができた。尾錠式バックルはやや状況が異なり、潜水用の硬い装備品との接触によって2カ所に擦り傷が入っていた。だが、これはサテン加工で除去することができるレベルのものである。しかも、尾錠のスペアは3万2000円で手に入れることができる。

 精度も、衝撃や過酷な温度環境に影響されることはなかった。歩度測定器で測定された計算上の平均日差はプラス1.7秒/日と良好である。ただ、最大姿勢差は10秒と、少々残念な結果だった。

 こうして、氷に閉ざされた水中という、厳しい環境で行った耐久性試験にサブマーシブルは見事、合格したのである。このようなスペックを持つ腕時計なら、水中以外でも着用したいと考えるのは当然のことだろう。この点、サブマーシブルは軟鉄製のインナーケースを備え、磁束の影響から内部機構が守られることから、身の回りに強力な永久磁石があふれる現代の日常生活でも十分に使用することができる。

 操作性はどうだろうか。サブマーシブルは、簡単に解除できるリュウズプロテクターやストップセコンド機能を備え、1時間刻みで合わせられる時針が追加されたことで、非常に使い勝手が良い。この時針は、サマータイムへの切り替えには便利な一方で、通常の日付早送り機構よりも日付の調整に少し手間が掛かるのがデメリットである。

耐久性の高いムーブメント

 サブマーシブルに搭載されているムーブメントはキャリバーP.9010である。これは、パネライの自社開発ムーブメント、キャリバーP.9000を2016年に改良したバージョンだ。キャリバーP.9010は6㎜の厚さでP.9000よりも約2㎜薄いため、高い防水性と耐磁性インナーケースを備えるサブマーシブルを、かなりスリムに仕上げることに貢献している。またおよそ72時間、つまり約3日間のパワーリザーブを備えていることから、金曜日の夜に手首から外して置いていても、月曜日の朝にはまだ動いている。このパワーリザーブの長さは、ふたつの香箱と両方向巻き上げ式のローターによって確保されている。巻き上げノイズがはっきりと聞こえるとはいえ、やはりロングパワーリザーブはユーザーにとってありがたい。刻み目の付いたネジで高さを調整できるテンプブリッジは、より一層の堅牢性と安定した精度を約束する。テンワに取り付けられた補正ネジで微調整を行うフリースプラングテンプも高い精度とそれを可能とする正確な微調整に貢献する。パネライに多く見られる他のムーブメントと同じように、ムーブメントは全体的に受けで覆われているが、線彫り模様やポリッシュ仕上げのネジ、面取りとポリッシュの施されたエッジなどの装飾を見ることができる。

約72時間のロングパワーリザーブを持つ、自社開発ムーブメントのCal.P9010。クイックコレクトデイトに替えて、時針のみを1時間ずつ前後にジャンプさせる時針単独調整機能を有する。

 価格はどうだろう。121万円という価格は、パネライでは中価格帯に位置付けられる。この腕時計は、素晴らしい長所をいくつも備えており、高い加工品質によって説得力があるが、パネライにはもっとコストパフォーマンスに優れたモデルが他にもある。

 いずれにしても、サブマーシブルが際立つことを好み、危険を顧みない、特徴的なキャラクターの持ち主にふさわしいモデルであることは確認できた。とはいえ、この場合の危険とは、あくまでも想定の範囲内のものに限られる。つまり、あえて命にかかわるような危険に身を置く必要はなく、サメの泳がない氷結した湖でのアイスダイビングで十分なのである。