クロノグラフ×ニットで最高の週末を！（前編）

通常の計時機能に加え、ストップウォッチ機能を搭載し、複雑かつ精緻なダイアルデザインで人気を博すクロノグラフ。僕らが大好きな腕時計を主役に、今改めてその魅力を堪能する。舞台設定は心地よい時間を刻む、最高の週末。安らぎと温もりを与えてくれる着心地のよいニットを相棒に選んで、6つのカテゴリーで提案する。

〝パンダ〟ダイアルのクロノグラフ×派手柄ニット

レトロなムードが添える柔らかくて優しいニュアンス

　ホワイトダイアルにブラックのインダイアルを配したクロノグラフは、その見た目がパンダの目元と口元に見えることから〝パンダ〞ダイアルの愛称で親しまれている。レーシングウォッチが注目を集めた1960～70年代に一躍脚光を浴びた腕時計だ。写真のタグ・ホイヤー「タグ・ホイヤーカレラ クロノグラフ」のように、白黒反転したものを〝逆パンダ〞ダイアルと呼び、現代ではその色使いが往時の趣をたたえる意匠として人気を博している。

ティソ「PRX オートマティック クロノグラフ」
人気の「PRX」コレクションより、1970年代のスポーツウォッチを彷彿とさせるメカニカルクロノグラフ。シルバーダイアルの背景に対照的なブルーのインダイアルをレイアウトし、ブレスレットと一体型の特徴的なケースデザインはサテン仕上げのステンレススティール製でタイムレスな魅力を放つ。自動巻き（Cal.ETA A05 H31）。2万8800振動／時。パワーリザーブ約60時間。SS（直径42mm）。10気圧防水。28万7100円（税込み）。 ティソ Tel.03-6254-5321

ジン「356 フリーガー・クラシック JUB」
「356」シリーズの25周年記念モデルで、バイコンパックスのダイアルや、厚さ約5mmのサファイアクリスタルから削り出したハイドーム型風防が特徴。専用ボックスには写真のヌバックボアレザー製グレーストラップやサンドカラーのストラップ、バンド交換用工具が付属。自動巻き（Cal.SW510）。27石。2万8800振動／時。パワーリザーブ約56時間。SS（直径38.5mm、厚さ15mm）。10気圧防水。世界限定500本。72万6000円（税込み）。 ホッタ Tel.03-5148-2174

　今回、そんな腕時計と組み合わせたのが派手柄のニット。クロノグラフ同様に、どこか昔懐かしいレトロなムードをまとった下の写真の3点だ。

　まずはヴィンテージのモヘアカーディガンをデザインソースに開発されたというストライプ柄のカーディガン（写真❶）。上質なモヘアブレンド素材を使用し、最終工程でブラッシング起毛を施すことでヴィンテージライクなシャギーモヘアの毛並みが表現されている。右ページで紹介している通り、デニムと合わせることでグランジテイストに楽しめる。そしてグレー×ピンクの配色でノルディック柄を表現したカーディガン（写真❷）。シルケット加工を施したウールの混紡素材で、滑らかな肌触りが魅力だ。アーティスティックな抽象柄が目を引くカーディガンはウール×ナイロン×キッドモヘアの混紡素材（写真❸）。いずれも装いに柔らかくて優しいニュアンスを与えてくれる逸品である。

フライバック機能付きクロノグラフ×ショールカラーカーディガン

もう〝持ちぐされ〞しない計測機能の有用な!?活用術

　パイロットのために開発された計器としてのクロノグラフには実用性を物語るさまざまな機能がある。ロンジンの「ロンジンスピリット フライバック」に備わるフライバック機能もそのひとつ。異なる飛行ステージのタイミングを連続的に計ることで容易なナビゲーションを可能にした。彼らにとってクロノグラフは信頼のおける道具であると同時に命綱でもあったのだ。たとえ僕らの日常においては少々オーバースペックだとしても、そんな背景にロマンを感じるのが男心というものだ。カップ麺にお湯を注いで待つ時間を計測しながら、そうやって大空への想いを巡らせる。そんな穏やかな休日に似合うのは、ショールカラーのニットカーディガンだ。ここでは優雅な印象を与える３点を厳選した。

フレデリック・コンスタント「フライバック クロノグラフ マニュファクチュール」
6年の歳月をかけて開発した自社製のフライバック機能付きクロノグラフムーブメントを搭載しながら、驚きの低価格を実現した話題作。3時位置には30分積算計、6時位置には指針式デイト表示、9時位置にはスモールセコンドを搭載。自動巻き（Cal.FC-760V4H4）。32石。2万8800振動／時。パワーリザーブ約38時間。ローズゴールドプレート加工SS（直径42mm）。5気圧防水。64万9000円（税込み）。 フレデリック・コンスタント相談室 Tel.0570-03-1988

ロンジン「ロンジン スピリット フライバック」
190年以上の歴史の中で培われた、時計製造の伝統と先端技術を注いだフライバック機能付きのクロノグラフ。両方向回転ベゼルを備え、シースルーバックからのぞく高精度ムーブメントは耐磁性に優れたシリコン製ヒゲゼンマイを採用し、C.O.S.C.のクロノメーター認証を取得する。自動巻き（Cal.L791.4）。28石。2万8800振動／時。パワーリザーブ約68時間。SS（直径42mm、厚さ17mm）。10気圧防水。69万4100円（税込み）。 ロンジン Tel.03-6254-7350

　まずはウールにカシミヤをブレンドした柔らかな肌触りが魅力のカーディガン（写真❶）。身頃部分は存在感のある畦編みを用いており、ショール部分は編み地を変化させてデザインを際立たせている。落ち着きのあるブルーが目を引くのは、カシミヤとフォックスの混紡素材を使用した、袖と裾がリブ仕様のタイプ（写真❷）。そして右ページでも着用したのが、2019年に英国のロンドンで始動したニットブランドによって上質なウールで編まれたもの（写真❸）。スコットランドの歴史あるファクトリーの伝統的なものづくりが光る贅沢な逸品。いずれも心地よい休日におすすめのニットである。

フライバッククロノグラフって何？

「フライバック」とはタイム計測中にリセットボタンを1回押すだけで計測を中断し、即座に帰零、間髪を入れずに新しいタイムの計測を開始する機能のこと。フライバック機能が搭載されていないクロノグラフで必要なストップ／リセット／再スタートという3段階に及ぶ手順を一度の操作で済ませられる。レース中のラップタイムを連続で計る際などに重宝される。リセットボタンを押したとき、飛ぶようにクロノグラフ針が戻るため、フライバックの名称が付いた。 正式名称は「リスターティング・フライバック」。

ダイバーズウォッチ由来のクロノグラフ×ケーブル編みニット

海を主戦場とする男のギアそんなルーツに想いを馳せて

　ダイバーズ系、パイロット系、レーシング系。クロノグラフをあえてカテゴライズするなら、大半はこの３つに属すると言っていいだろう。1950～80年代にフランス海軍の公式サプライヤーとして腕時計を納入していた実績を誇るチューダーの「ペラゴスＦＸＤ クロノ〝アリンギ・レッドブル・レーシング〞」は、そのルーツをダイバーズウォッチとするクロノグラフだ。そんなダイバーズ由来の腕時計との組み合わせにおすすめしたいのが、ケーブル編みニット。その故郷は15〜16世紀の北大西洋、寒風吹き荒ぶ北欧の島々で漁夫や水夫の作業着として親しまれてきたものだ。海を主戦場とする男に愛された腕時計とニット、これほど相性の良い組み合わせもない。

チューダー「ペラゴス FXD クロノ “アリンギ・レッドブル・レーシング”」
熾烈なヨットレースの世界観を体現する本作はハイテクカーボンコンポジットをチタンとSSに組み合わせ、AC75の船体と同じ色調のマットなダイアルカラーを採用。固定されたストラップバーにはジャカード織りのファブリックストラップを備える。自動巻き（Cal.MT5813）。41石。2万8800振動／時。パワーリザーブ約70時間。ブラックカーボンコンポジット（直径43mm）。200m防水。67万2100円（税込み）。 日本ロレックス / チューダー Tel.0120-929-570

エドックス「デルフィン オリジナル クロノグラフ」
1961年、世界初の特許を取得した防水機構ダブル-Oリングと特殊な内部構造、堅牢な特殊ケースの採用で200m防水を実現した「デルフィン」。本作はその系譜に連なるバイコンパックスのクロノグラフで、特徴的な12角形ベゼルと鮮やかなブルーダイアルを採用している。クォーツ（Cal.EDOX101/RONDA5021.Dベース）。SS（直径43mm、厚さ12.9mm）。200m防水。19万8000円（税込み）。 ジーエムインターナショナル Tel.03-5828-9080

　厳選したニットはまず、カールした襟と袖口が特徴的なバーガンディ色のハイネックニット（写真❶）。複数の編み地を用いることで、雨、みぞれ、あられなどコロコロと変わる冬の天気を表現したものだ。本作には「万化」という名前が付けられており、何とも情緒的なデザインに心奪われる。そして右ページでも着用したキャメルカラーのタイプ（写真❷）。厳選されたウールとナイロンを混紡した糸を使用して編まれており、ふっくらと柔らかく保温性の高さも魅力の逸品だ。ウールにアンゴラやシルクを混紡したライトグレーのニットもまた抜群の着心地で、編み地を変えた表情豊かな仕上がりが特徴となっている（写真❸）。