定番をただ守るだけでは、スタイルは更新されない。ラフに羽織れる革ジャンの強さと、エレガントウォッチの落ち着いた上品さ。異なるふたつの表情をあえて重ねることで、装いは新しい均衡を見せる。強さが上品さを引き立て、上品さが強さを洗練へと導く。そんな“ギャップの妙”こそが、時代の感性に寄り添う大人にふさわしい美学だ。革ジャン×エレガントウォッチという組み合わせに、定番を進化させるためのヒントがある。ここでは、6つのカテゴリーに分けて、その“最適解”となるスタイリングを提示する。

菊池陽之介:スタイリング
松本和也(W):ヘア&メイク
Lim(BE NATURAL):モデル
安部 毅:編集・文
※価格はすべて消費税を含んだ税込み価格です。
青の質感と月相の静かな動きが、装いに澄んだ調和をもたらす

ブルーのグラデーションが美しいラムスエードジャケットは、光の当たり方で表情を変え、装いに奥行きを与える1着。その手元で響き合うのが、ロンジンの「ロンジン マスターコレクション」だ。サンレイ仕上げのブルーダイアルの6時位置には、ムーンフェイズとデイト表示が配され、高精度な自動巻きムーブメントが日常の時間を安定して刻む。SS製ブレスレットの端正さが、レザーの柔らかい質感にほどよい緊張を与え、青がつくる陰影の深さを際立たせている。

ムーンフェイズ × デザインアレンジ系

チューダー初のムーンフェイズを備えた最新作。華やかなシャンパンカラーをまとったダイアルの6時位置には、縁が滑らかに面取りされたムーンフェイズ機構を搭載し、詩的なムードを演出している。アラビア数字とアロー型インデックスが交互に並び、3時位置にはデイト表示をレイアウト。自動巻き(Cal.T607-9)。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径39mm、厚さ10.1mm)。100m防水。38万600円。(問)日本ロレックス / チューダー Tel.0120-929-570
ロンジンの「ロンジン マスター コレクション ムーンフェイズ」は、ブルーのサンレイ文字盤に月齢表示を備えたエレガントウォッチである。6時位置のムーンフェイズとデイト表示が視線を引き寄せ、アプライドインデックスが落ち着いた秩序をつくる。その機構を日常に溶け込ませた腕時計に合わせたのは、ひとひねりを加えたデザインが魅力の革ジャンだ。
深いブルーのサンレイダイアルが、夜空の移ろいを思わせる「ロンジン マスターコレクション」のムーンフェイズモデル。6時位置に配された月齢表示が静かなリズムを刻み、クラシカルなエレガンスを引き立てる。40mm径の端正なプロポーションが、手元に落ち着きと気品をもたらす1本だ。自動巻き(Cal.L899)。21石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径40mm、厚さ11.1mm)。3気圧防水。40万9200円。(問)ロンジン Tel.03-6254-7350
グレーのグラデーション文字盤に浮かぶ白蝶貝の月が、柔らかな光を放つムーンフェイズ搭載モデル。星団すばるを模した型打ち模様とクリアな塗装が、夜空の深さを思わせる。新開発のCal.F8A62はシリコン製ガンギ車を備え、約70時間駆動を実現。コードバンの替えストラップが付属する。手巻き(Cal.F8A62)。20石。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39.5mm、厚さ11.9mm)。3気圧防水。47万3000円。限定100本。(問)オリエントお客様相談室 Tel.042-847-3380
サルトのダブルブレステッドジャケットは、ル・コルビュジエが愛用したジャケットを着想源にフォルムを再解釈したもの。羊革と山羊革の特性を兼備したハイブリッドレザーを0.8mmに漉き、軽さと柔らかさを実現。裏地にはウールリネンのオンブレチェックの生地を採用(写真1)。エー レザーのスエード製フーディーは、日本産原皮を染料のみで仕上げた柔らかな牛革を使用。定番服をスエードで置き換えた発想が新鮮で、同色の裾と袖リブが一体感を生む。裏地は吸湿速乾性を備え、着心地も快適だ(写真2)。アルマのラムスエードブルゾンは、ブラッシングによりブルーの繊細な濃淡を表現。リラックスフィットのシルエットが空気を含み、視覚的にも手触りとしてもモード感を宿す。その佇まいに老舗ファクトリーの技術力が表れている(写真3)。
ムーンフェイズ機構がもたらす静寂のムードと個性の異なるレザーアウターの質感が交差すると、装いの印象は柔らかく整う。 月相の表情を携えた腕時計は、素材の多様性を受け止め、スタイルに品格をもたらす存在となるのだ。

2_26万4000円、エー レザー。(問)エー ブティック Tel.070-3223-7530
3_19万2500円、アルマ。(問)ノウン Tel.03-5797-8950P



