今年はサファイアクリスタルケースの新作がいくつも発表された。どれも貴重で高価なモデルばかり。それゆえ順位をつけるのは野暮だろう。注目したいサファイアクリスタルケースの新作・5選を紹介する。
どれも貴重なモデルばかりの、サファイアクリスタルケース
今年はサファイアクリスタルケースの新作がいくつも発表された。
サファイアクリスタルはダイヤモンドに次ぐ硬度をもち、そのため加工が非常に困難。それがほぼ同時に複数発表されたのには何か理由があるのだろうか。
真相は残念ながら分からなかったが、しかしそれでも感慨深い。紛れもない時計の加工技術の進化の証だからだ。
サファイアクリスタルケースの代表作というと、やはり2012年のリシャール・ミル「RM 056 トゥールビヨン スプリットセコンド コンペティション クロノグラフ フェリペ・マッサ サファイア」になるのだろう。
センチュリーやアラン・シルベスタインなどサファイアクリスタルをケースに使用した時計は以前にもあったが、金属製のパーツを一切使用しない100%サファイアクリスタル製ケースはこれが世界初。しかも精巧なリシャール・ミルのケースに作り上げたのは本当に感嘆すべきこと。時計史に残る革新的出来事だ。
2016年にはウブロが「ビッグ・バン ウニコ サファイア」を発表。やはりサファイアクリスタルの塊を削り、精巧な複合構造ケースに仕上げたことに驚嘆する、これも時計史に残る名作だ。
また、同じ2016年にはベル&ロスもサファイアクリスタルケースの「BR-X1 スケルトン クロノグラフ サファイア」を発表。これも大きな話題となった。
そして今年は、そんなサファイアクリスタルケースが一気に増えたというわけだ。どれも貴重で高価なモデルばかり。それゆえ順位をつけるのは野暮だろう。
リシャール・ミル「RM 056 トゥールビヨン スプリットセコンド コンペティション クロノグラフ フェリペ・マッサ サファイア」
ケースサイズ50.5×42.7mm
手巻き(Cal.RM CC1)
35石
2万1600振動/時
50m防水
サファイアクリスタル
世界限定5本
販売終了
2012年のS.I.H.H.で発表され、世界中を驚かせた、時計史に残るモデル。サファイアクリスタルケースのモデルはこれまでにもあったが、金属製パーツをまったく使用しない100%サファイアクリスタルケースはこれが世界初。サファイアクリスタルのインゴッドをカットし、磨き上げ、ケースを完成させるのに3ヶ月、約1000時間を費やすというのも驚嘆すべきこと。超複雑機構の搭載と相まって1億4700万円という超ハイプライスが付けられたが、この革新性と完成度を鑑みると適正といえる。実際、世界限定5本はS.I.H.H.の開幕直後に即完売した。
シャネル「J12 X-RAY」
直径38mm
自動巻き(Cal.3.1)
21石
2万8800振動/時
30m防水
サファイアクリスタル
世界限定12本
6810万円(税別)
「J12」は2000年にシャネルのシグネチャーカラーのブラックでデビュー。2003年にもうひとつのシグネチャーカラーであるホワイトが加えられた。そして今年は「J12」の誕生20周年。これはその記念モデルのひとつで、ブラックでもない、ホワイトでもない、透明なサファイアをケースとブレスレットに使用したのが革新的。しかもブレスレットまでサファイアというのは、おそらくこれが世界初。ダイアルもサファイアでバゲットカットダイヤモンドのインデックスとムーブメントが宙に浮かんでいるように見えるのが美しく魅力的だ。
ボヴェ「リサイタル26 ブレインストーム チャプターワン」
直径48mm
自動巻き(Cal.17DM04-SMP)
43石
1万8000振動/時
30m防水
サファイアクリスタル
世界限定60本
3730万円(税別)
昨年のジュネーブサロンで発表されたディミエコレクションの新作。ライティングテーブル(傾斜をつけた筆記用机)から着想を得たライティングスロープ型ケースは2016年から2018年にかけての天体3部作で用いられたもの。その複雑なフォルムをサファイアクリスタルでつくりあげた技術力が素晴らしい。また、ブルーのダイアルは水晶で、硬く脆い天然の水晶をドーム状に美しく仕上げたのも白眉。その12時位置のムーンフェイズはアヴェンチュリンガラスと、さまざまな素材使いがされているのも注目点。さらに今年はレッドダイアルの新作が登場している。
ジラール・ペルゴ「クエーサー アジュール」
直径46mm
自動巻き(Cal.GP09400-1035)
27石
2万1600振動/時
30m防水
サファイアクリスタル
世界限定8本
予価3256万円(税別)
昨年、ジラール・ペルゴはブランド初のサファイアクリスタルケースモデル「クエーサー」を発表。ジラール・ペルゴのアイコンであるスリーブリッジトゥールビヨンを現代的に再構築し、フルスケルトンにした美しくシャープなデザインも大きな話題となった。そして今春にブリッジまでサファイアクリスタルにした「クエーサー ライト」を発表。この「クエーサー アジュール」は、そのさらなる新作だ。モデル名のとおりにサファイアクリスタルケースをアジュール=ブルーにしたのが特徴。チタンのブリッジとのシルバー×ブルーの洒脱な色合わせも魅力的だ。
ウブロ「ビッグ・バン ウニコ イエロー サファイア」
直径42mm
自動巻き(Cal.HUB1280 UNICO)
43石
2万8800振動/時
5気圧防水
サファイアクリスタル
世界限定100本
1003万円(税別)
ウブロは2006年にケースもダイアルもインデックスも針もすべてが黒の「ビッグ・バン オールブラック」を発表。すべてが黒で時間の見えないモデルは時計の常識を覆す革新作であった。そしてその10周年の2016年に真逆のケースもダイアルもすべてが透明の「ビッグ・バン ウニコ サファイア」を発表。サファイアクリスタルケースによりすべてを透明にしたこのモデルも時計の常識を覆す革新作だ。これはその最新作で昨年開発した黄色のサファイアクリスタルが特徴。そう、ウブロはサファイアクリスタル自体を開発できる、同素材のエキスパートなのだ。
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https://www.webchronos.net/features/37036/