ブルーナー先生絶賛、ブルガリ「オクト フィニッシモ クロノグラフGMT オートマティック」

2019.03.24
オクト フィニッシモ クロノグラフGMT オートマティック


 バーゼルワールドの期間中、さまざまなジャーナリストに会った。そのひとりが、クロノス読者にもお馴染み、ギズベルト・L・ブルーナー氏である。彼にお勧めモデルを5つ挙げてもらった。筆頭に挙がったのが、オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT オートマティックだった。

 このモデルは、筆者の知る限りで言うと、世界で最も薄い機械式クロノグラフである。少なくとも、自動巻きクロノグラフとしては、最も薄い物だろう。ムーブメント厚はわずか3.3mm。しかも、3時位置にはGMT機能を備えるほか、9時位置のボタンを押すと、時針が1時間おきにジャンプする。

 ベースとなったのは、おそらくフィニッシモの自動巻き。その大きな地板を生かして、ブルガリはクロノグラフ機構を巧みに盛り込んだ。このムーブメントがどのようなクラッチシステムを採用しているのかは不明だったが、実物を見て合点がいった。これは、古典的な水平クラッチを採用している。しかも、スイングピニオンではなく、本格的なキャリングアームだ。厚みを考えると、垂直クラッチの搭載が難しいのは分かる。しかし、この薄さに、きちんとした水平クラッチを盛り込むとは想像外だった。

 写真で見ると、テンワの上を覆うように、巨大なプレートが見える。おそらくはこれが、クロノグラフ中間車と、それを搭載する作動レバーである。薄くて耐衝撃性が低そうに見えるが、そこはブルガリ。プレートを厚く切り、その先端を受けにもぐりこませることで、耐衝撃性を確保している。そして、センターの秒クロノグラフ車は、古典機よろしく、6時位置の30分積算車を直接駆動する。あくまで推測だが、ブルガリは薄さという言い訳をすることなく、本格的なクロノグラフを作りたかったのだろう。

 このクロノグラフには、12時間積算計がなく、代わりに24時間表示のGMT針が付いている。理由は不明だが、おそらくは、12時間積算計の機構が、スペースを取るためだろう。これは、ピアジェのクロノグラフも同じである。代わりに、日の裏車から減速歯車を介して動くGMT針を3時位置に設けている。仕組みとしては簡単だが、うまい解決策に思える。




オクト ムーブメント


 またブルガリは、このムーブメントが、多少ラフに使われることを考慮したのだろう。テンプの受けは両持ちに変更されている。個人的にはフリースプラングテンプであればなお理想的だが、理論上の耐衝撃性は高いはずだ。

 ケースとブレスレットは、フィニッシモでお馴染みの、ブラス仕上げのチタン製。バックルもやはり、ブレスレットに内蔵される、凝ったタイプのものだ。チタンのため極めて軽く、またケース厚が6.9mmしかないため、既存のフィニッシモ同様、装着感は良いはずだ。

 大先生が絶賛も納得の、オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT オートマティック。いや、これは本当に良い時計だと思う。ブルガリのフィニッシモは傑作と言ってよいコレクションだが、本作は、その筆頭にあげていいかもしれない。本当に素晴らしい。(広田雅将)