実用性が大幅アップデート! オリエントスターの最新ダイバーズウォッチを実機レビュー

2023.10.31

オリエントスターのダイバーズウォッチ、「M42 ダイバー1964 2nd エディション F6 デイト 200m チタン」をレビューする。本作は、1964年の同社製ダイバーズウォッチのデザインを踏襲し、外装にチタンを採用したモデルだ。優れた耐食性や軽快な着用感が、高い実用性をもたらしている。

オリエントスター ダイバーズウォッチ レビュー

今回は、「M42 ダイバー1964 2nd エディション F6 デイト 200m チタン」のレビューを行う。本作は1964年にオリエントが発表したダイバーズウォッチのデザインを踏襲しているが、そのデザインに古臭さは微塵も感じられない。
野島 翼:文・写真
Text and Photographs by Tsubasa Nojima
2023年10月31日掲載記事


1964年にルーツを持つ、オリエントスターの最新ダイバーズをレビュー!

 オリエントスターは、今年の10月にコレクションを再編し、新たに「Mコレクションズ」を立ち上げた。このコレクションには、フランスの天文学者であるシャルル・メシエが作成した「メシエカタログ」に収録された天体の番号が与えられており、現在では、プレアデス星団(別名すばる)を表す「M45」、ペルセウス座の「M34」、オリオン大星雲の「M42」の3つに分類されている。

 今回のインプレッションで取り上げるのは、M42に属する「M42 ダイバー1964 2nd エディション F6 デイト 200m チタン(型番:RK-AU0701B)」だ。海神ポセイドンの子であるオリオンに由来するM42には、高い防水性を備えたダイバーズウォッチがラインナップする。それらは大別すると、「ダイバー1964 1st エディション」と「ダイバー1964 2nd エディション」に分けられる。いずれも、1964年に登場したダイバーズウォッチを復刻したデザインを与えられている。

 少々ややこしいが、オリエントは1964年に手巻き式と自動巻き式のダイバーズウォッチを発表している。手巻き式は「オリンピア カレンダー ダイバー」、自動巻き式は「カレンダー オート オリエント」の名を持つ。

1964年に発表された「カレンダーオートオリエントダイバー」。高い視認性や回転ベゼルが与えられており、ダイバーズウォッチらしい意匠となっている。

 復刻モデルとしては、前者をモチーフとしたものを1st、後者をモチーフとしたものを2ndとしている。現行ではいずれのモデルも46系の自動巻きムーブメントを搭載しているが、ダイアルのデザインを変更することで、異なる雰囲気を持たせている。

オリエントスター ダイバーズウォッチ レビュー

オリエントスター「M42 ダイバー1964 2nd エディション F6 デイト 200m チタン」RK-AU0701B
自動巻き(Cal.F6N47)。22石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。Tiケース(直径41mm、厚さ14.3mm)。200m防水。17万6000円(税込み)。

 今回インプレッションを行うモデルは、自動巻き式をモチーフとした2ndだ。


ユニークな時計を作り続けてきたオリエント。そのDNAはダイバーズウォッチにも息づく

 オリエントと言えば、ユニークなデザインや機構を持った時計を数多く開発してきたことで知られている。一例を挙げるならば、一覧性の高いカレンダーを持つスピードデータや万年カレンダー機構、「ルミナス」と「フラッシュ」が搭載した照明機能などだろう。時代の変化にも柔軟に対応し、1970年代に時計の電子化が進むや否や、ディスプレイのタッチによってLEDを点灯させ、時刻を表示する「タッチトロン」を発表している。

 ダイバーズウォッチに関しても、創意工夫に溢れたその姿勢は変わらない。1964年に同社初のダイバーズウォッチを発表後も研究開発を重ね、1969年に驚異の1000m防水を誇る「キングダイバー1000」、1970年には機械式水深計を備えた「クロノエース キングダイバー」を発表した。

1969年に発表された「キングダイバー1000」。1000m防水を誇るハイスペックダイバーズウォッチであり、また、耐磁性能を与えるため、軟鉄製インナーケースを有していた。

 さらに、ダイバーズウォッチの開発で培った技術は、日常的に楽しく使える防水時計をも生み出す。ダイアルに世界地図をあしらった「ワールドダイバー」や1980年代のアジア市場で絶大な信頼を寄せられたカラフルな「SK(スーパーキングダイバー)」は、その好例だ。1964年のオリンピア カレンダー ダイバー、およびカレンダー オート オリエントは、見た目こそ“オリエントらしくない”オーソドックスなダイバーズウォッチだが、その後の同社製品の基礎体力向上に寄与したマイルストーンのひとつなのだ。


単なる素材バリエーションに非ず! グレーダイアルによってイメージを一新

 今回レビューを行うモデルは、平たく言えば、先行するステンレススティールモデルの外装素材をチタンに変更したバリエーションである。しかし、実際に両者を比較すると、単に素材が異なるだけではないことに気付かされる。

 最も顕著なのは、ダイアルとベゼルの色味だろう。ステンレススティールモデルでは、同社がミラーブラックと呼ぶグロッシーなブラックダイアルに、同色のベゼルを採用していた。これは、1964年のオリジナルの特徴を継承したものだ。対して本作では、ダイアルとベゼルともに艶を抑えたグレーで統一している。時分針にはヘアラインが与えられ、こちらもマットな印象だ。

オリエントスター ダイバーズウォッチ レビュー

チタン製のケースやブレスレットに合わせ、ダイアルとベゼルは濃い目のグレーを採用している。6時位置に追加された“TITANIUM”のイエローがアクセントとなっている。12時位置にはオリエントスターを象徴するパワーリザーブインジケーターを備える。

 これらのディティールは、ややグレーのかかったチタンに調和するよう変更されたと考えられるが、同時に視認性が増し、より実用性を向上させることに寄与している。ステンレススティールモデルが、オリジナルの雰囲気を味わうことができるピュアな復刻モデルであるとすれば、本作はオリジナルのエッセンスを程よく残しつつも、よりダイビングツールとしてストイックな仕様に改めたモデルと言えるだろう。

 そして忘れてはならないのが、6時位置にイエローの“TITANIUM”の文字が追加されたことだ。一目でチタン製であることが分かるだけでなく、モノトーンのダイアルにアクセントを添えてくれている。ただし反面、4行にもわたる文字列を少々煩雑に感じることも否めない。


往年のデザインをベースに、ISO規格に適合した本格仕様へアレンジ

 ステンレススティールモデルとの比較はここまでにして、ここからはオリジナルとの比較を交えつつ、もう少し詳しく見ていこう。

オリエントスター ダイバーズウォッチ レビュー

デザインは1964年のモデルから範を取っているが、パワーリザーブインジケーターが追加され、また、デイト窓の縁にも夜光を塗布したインデックスが与えられた。

 本作のダイアルは、3時位置にデイト窓、12時位置にパワーリザーブインジケーターを配している。インデックスは、トライアングル、ドット、バーの3種類の形を組み合わせており、これによって時計の向きを即座に認識することが可能だ。3つの針も、それぞれ異なる形状を取る。時針はいわゆるタコ針、分針は先端に向かって僅かに広がるペンシル型、秒針は夜光塗料がしっかりと塗布されたロリポップ型だ。インデックスと針には夜光塗料が充填されているため、暗所での視認性も問題ない。高い硬度を誇る両球面サファイアクリスタルにはARコーティングが施され、光の反射を抑えている。

 細かな仕上げは除き、オリジナルとのデザインの大きな違いはふたつある。ひとつはパワーリザーブインジケーターが追加されたこと。もうひとつは、デイト窓の横に夜光塗料を加えた小さなインデックスが配されたことだ。前者は、オリエントスターらしさを表すアイコニックな意匠として取り入れたものであり、後者は、2018年に改訂されたISO6425が定めるダイバーズウォッチとしての条件に則ったものだ。

オリエントスター ダイバーズウォッチ レビュー

外装の素材はチタンだ。ケース直径41mm、厚さ14.3mmと、一般的なダイバーズウォッチの中ではスタンダードなサイズ感で、扱いやすい1本となっている。

 オリジナルが誕生した1960年代は、マリンスポーツが流行し、それに合わせて各社から続々とダイバーズウォッチが発売された時期である。当時のダイバーズウォッチは、回転ベゼルや視認性の高いダイアルなど、ある程度似通った外観や機能を有していたが、それらはあくまでもデファクトスタンダードであり、公的な機関が定めたものではなかった。

 1964年のカレンダー オート オリエントのデザインをほぼ忠実に復刻した本作が、現代の規格に適合したダイバーズウォッチとして認められるということは、具体的なスペックはさておき、少なくとも外観においては、当初から完成度が高かったと言っても差し支えないだろう。


外装に高級感を宿す、磨き分けられたチタン

 ケースデザインは、シンプルなラウンド型を採用する。4つのラグは、先端に多面的なカットを加えることで、力強さを感じさせるシャープなラインを描く。ケースの直径は41mmと、回転ベゼルを有したダイバーズウォッチとしては標準的なサイズだ。

 ここで注目したいのが、本作がケースとブレスレットに純チタン(グレード2チタン)を採用しているにも関わらず、サテンとポリッシュに仕上げ分けられている点である。一昔前は、純チタンにはサンドブラスト仕上げが与えられることが多かった。これは、柔らかい素材ゆえに加工しにくく、高級な仕上げを施すことが難しかったためである。

 今でこそ、サテンやポリッシュで仕上げた純チタンは珍しくなくなってきたが、それでも採用するモデルはそこそこ値が張る場合が多い。特に高級機であれば、アルミニウムやバナジウムなどを加え合金(グレード5チタン)とすることで、硬く仕上げやすくすることが主流だ。本作は抑えられた価格ながら、ケースサイドやラグの上面をサテンにしつつ、ラグのエッジにポリッシュを加えることで、光を受けた際の立体感を強く感じることができる。柔らかい純チタンだが、本作ではプロテクトコーティングを施すことによって、耐摩耗性を向上させている。

オリエントスター ダイバーズウォッチ レビュー

純チタンを採用しながらも、サテンとポリッシュに磨き分けることで高級感を宿したケースとブレスレット。ややグレーが強いが、パッと見た印象ではステンレススティールに遜色ない美観を持つ。

 ケースバック中央には、オリエントスターのロゴが刻印されている。その周囲は12角形に成形されているが、これはオリジナルの意匠を踏襲したものだ。ここに工具をあてがい、ケースバックをミドルケースにねじ込んでいたのである。ただし本作では、あくまでもデザインであり、ねじ込む際に工具を引っかける溝は、さらにその外周に配されている。

 ブレスレットの弓カンの隙間からのぞくバネ棒にも注目したい。ツバのない太いバネ棒は、脱落や破損がしにくいダイバーズウォッチ用だ。細かな部分だが、本作がプロフェッショナルユースとしての用途を想定された製品であることを感じさせる。ケースとブレスレットを分離する際、このタイプのバネ棒は、ケースサイドの穴から細い棒で突く必要がある。

オリエントスター ダイバーズウォッチ レビュー

ケースバック中央にはオリエントスターのロゴが刻まれている。太いバネ棒は、衝撃に強く剛性の高いダイバーズ用だ。ソリッドバックのため見ることはできないが、内部には昭和46年から進化を続ける46系のCal.F6N47が収められている。

 チタン製のブレスレットは、しなやかに動く5連タイプ。サテンとポリッシュを交互に織り交ぜることで、高級感と立体感をもたらしている。コマの連結はCリング式だ。

 バックルの構造にもダイバーズウォッチらしさが見て取れる。不用意に外れてしまうことのないよう、ダブルロックタイプを採用しており、肉厚のプレートは、衝撃を受けても簡単に歪んだりすることはないだろう。また、本作にはダイバーエクステンションが搭載されており、ウェットスーツの上から着用する際に、少しだけブレスレットを延ばすことができる。ワンタッチとはいかないが、バックルサイドの穴とバネ棒によって長さの微調整が可能だ。


軽快な装着感が魅力。操作感も良好

 一通り外観を観察したところで、実際に着用してみよう。筆者の腕周りは約16.5cmだが、本作の直径41mmのケースは難なく収まる。ちなみにケースの縦は、筆者の実測で49mmほどであった。チタンを採用することによって、本作はステンレススティールモデルと比較して約35%の軽量化を達成している。14mmを越える厚みはそれなりだが、その軽さゆえに腕への負担になることはなかった。

オリエントスター ダイバーズウォッチ レビュー

200m防水を達成するため、ケースはなかなかにボリューミー。ただし、軽量なため腕への負担は少ない。逆回転防止ベゼルの溝は斜めに刻まれ、掴みやすさを高めている。

 装着感はサラリとしていて不快な感覚はない。ケースバックやブレスレットの内側など、肌と直接接する部分にサテン仕上げが施されていることが要因だろう。シースルーバックは、内部のムーブメントを鑑賞できる反面、汗を掻いたときにはべたつきが気になってしまう。実用重視のツールウォッチとして考えるならば、本作のようなソリッドバックの方が好ましい場合もあるだろう。

 さすがダイバーズウォッチと言うべきか、視認性や判読性は抜群だ。夜光の形がそれぞれのインデックスや針で異なるため、時計の向きが分かりにくい暗所でも正確に時間を読み取ることができる。艶を抑えたダイアルは、強い直射日光下であっても眩しさを感じさせず、快適に使用することが可能だ。ただ一点だけ、デイトディスクがやや奥まった位置にあるためか、若干日付表示を見にくく感じたことだけは挙げておきたい。また、これに関しては好みが分かれるだろうが、日付の切り替わりは瞬転式ではなく、23時過ぎからじわじわと動き出す。

オリエントスター ダイバーズウォッチ レビュー

ダブルロックタイプのバックルを採用する。フリップを跳ね上げ、ボタンを押下することでバックルを解除することが可能だ。しっかりとした硬さがあり、不用意に開いてしまうようなことはないだろう。

 試しにダイバーエクステンションを使用してみよう。腕から時計を外し、バックルを解放した状態でエクステンションを展開するのだが、これには少々コツが要る。筆者も壊してしまわないかヒヤヒヤしたが、同社の公式HPに公開されていた動画付きの説明を見ることであっけなく展開することができた。こういった情報を分かりやすく公開してくれているのは、ユーザーフレンドリーでうれしい限りだ。エクステンションは勘合式のため、畳んだ状態でもあまり厚みを取らず邪魔にならない。

オリエントスター ダイバーズウォッチ レビュー

バックルにはダイバーエクステンションが備わっている。ダイビングだけではなく、スキーウェアや登山服の上から着用する際にも重宝する。

 回転ベゼルは、1周120クリックである。指先にはっきりとした感触が伝わるのではなく、粘りのある中にカチカチという音が入り混じるような回し心地だ。精密感が頼もしい。また、ベゼルの滑り止めはやや斜めに刻まれている。真横ではないため、ベゼルを押さえつけながら回すようにしてもスムーズに扱える分、使い勝手が良い。

 リュウズはねじ込み式であるため、ねじ込み解除したポジションで手巻き、1段引きで日付のクイックチェンジ、2段引きで時刻調整を行うことができる。リュウズそのものは薄めだが、ベゼルがミドルケースから大きく張り出していないこと、リュウズガードがないことから、操作する指に干渉するものがなく、簡単にねじ込みを解除することができる。リュウズは正逆ともに、ほぼ同じトルクで回すことが可能だ。リュウズを押し込んだ際の針飛びも見られなかった。特筆すべき部分はないが、ロングセラーな実用ムーブメントの系譜に相応しい安定感はさすがと言うべきだろう。


高い実用性と上品なカラーリングが幅広いシーンをカバーする、懐の深いモデル

 ここまで見てきたように、本作はISO6425規格に則った本格的なダイビングツールでありながら、日常使いにも優れる取り回しやすさを兼ね備えた実用時計である。その要となっているのは、外装に採用されたチタン素材だ。高い耐食性は海水への耐性を持ち、純チタンの持つ柔らかいというウィークポイントをプロテクトコーティングで補っている。耐アレルギー性に優れ、軽量であるため、長時間の着用でも腕への負担が少ない。もちろん、ダイバーズウォッチに求められる防水性と視認性、堅牢性は、陸上でも大きなメリットをもたらす。

 さらに、幅広いシーンで着用しやすいことも付け加えておきたい。グレーを基調としたカラーリングは、ダイバーズウォッチでありながらも落ち着きのあるエレガントな印象を与える。あまりにもかしこまった場面には不向きだが、カジュアルからビジネスシーンまで違和感なく溶け込んでくれることだろう。

 往年のオリエントファンには言うまでもなく、初めて機械式腕時計を使ってみようと考えている方にもそっと寄り添ってくれる、フレンドリーな1本だ。


Contact info:オリエントお客様相談室 Tel.042-847-3380


オリエント70年の物語 ーオリエント70年のマイルストーン

https://www.webchronos.net/features/41433/
機械式時計は日本が誇るオリエントから。おすすめモデル13選

https://www.webchronos.net/features/40279/
オリエントスターの復刻ダイバーズウォッチ第2弾、「ダイバー1964 2ndエディション」が登場

https://www.webchronos.net/news/80303/