「オクト フィニッシモ」によって、薄型時計というジャンルにイノベーションを起こしてきたブルガリ。このイノベーターが最新作で描いたのは、制約のない、自由な薄型時計の在り方だった。
ジュネーブ・ウォッチ・デイズ2023で発表されたモデル。従来のコレクション同様、薄型ケースとブレスレットを持つ。バックルも厚みを抑えるため、閉じるとブレスレットの内側にプレートがビルトインする仕様だ。ミドルケースはチタン製。自動巻き(Cal.BVL305)。30石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約60時間。Ti×カーボンケース(直径40mm、厚さ7.6mm)。100m防水。予価1327万7000円(税込み)。
Edited & Text by Chieko Tsuruoka
[クロノス日本版 2024年1月号掲載記事]
オクト フィニッシモ カーボンゴールド パーペチュアルカレンダー
ブルガリが2014年に発表して以来、「オクト フィニッシモ」コレクションは〝最薄〞としての世界記録を更新してきた。この記録が華々しいことは間違いないが、同時に薄型時計にとって革新的であったために、市場でも成功を収めている。
ブルガリがオクト フィニッシモで起こした「革新」は、次のふたつだ。ひとつは、薄型時計でありながらも面を多用した複雑な造形によって、立体的な外装を得たこと。もうひとつは、耐衝撃性や防水性、あるいは操作性が犠牲になりやすい薄型時計を実用的にしたことだ。
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独自のアプローチを強みに、コレクションを成熟させてきたブルガリ。23年に打ち出した最新作が「オクト フィニッシモ カーボンゴールド パーペチュアル カレンダー」だ。21年発表の世界最薄自動巻きパーペチュアルカレンダーを搭載したモデルで、ケース厚は7.6mmと世界最薄ではないが、コンプリケーションらしからぬ極薄ケース、広い文字盤に散らされ、判読性を高めた各種カレンダー機構はそのままに、カーボンファイバーを素材として用いた。ケース、ブレスレット、文字盤にカーボンファイバーのパターンが強く出ており、既存のオクト フィニッシモとも、ドレッシーな意匠が多い従来の薄型時計とも、異なるキャラクターを確立している。一方で精緻な造形やゴールドカラーによって高級機らしい装いとなり、このユニークであることとラグジュアリーの両立が、非凡な意匠を創り上げている。
薄型時計というキャンバスは、デザイン面で制約が多い。そもそも製造が難しく、また、薄さが実現するエレガンスを損ねないことが求められるためだ。ブルガリはこういった制約を超え、〝自由〞な薄型時計を本作で示したと言える。
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ジュネーブ・ウォッチ・デイズではパーペチュアルカレンダー搭載モデルとともに、3針オートマティックのモデルもリリースされた。同じくムーブメントにはピンクゴールドカラーが施されている。自動巻き(Cal.BV138)。36石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約60時間。Ti×カーボンケース(直径40mm、厚さ6.9mm)。100m防水。387万2000円(税込み)。
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