カシオ「オシアナス OCW-T6000A-1AJF」を実機レビュー。初めての1本としても、時計好きが選ぶ1本としても!

2023.12.22

今回のインプレッションはカシオ オシアナスの新作「OCW-T6000A-1AJF」だ。多機能を詰め込んだムーブメントを、ザラツ研磨による優れた仕上げが施されたチタン外装で包んでいる。完成度の高い本作について、「時計購入経験が少ない方に向けた本作の解説」と「時計好きから見たオシアナスとカシオの存在価値」のふたつの視点で述べていきたい。

オシアナス クラシックライン インプレッション

佐藤しんいち:文・写真
Text and Photographs by Shin-ichi Sato
[2023年12月21日公開記事]


カシオ「オシアナス クラシックライン OCW-T6000A-1AJF」のレビュー

 インプレッションするのは2023年10月発表の新作であるカシオ「オシアナス クラシックライン OCW-T6000A-1AJF」だ。オートカレンダーやワールドタイマー、ストップウォッチを備える多機能クォーツ時計であり、価格は15万1800円。15万円前後というのは、時計購入経験の少ない、例えば興味を持ち始めた方にとっては、少し背伸びをして購入する価格帯になるだろう。一方、すでに何本か時計好を所有している愛好家にとっては、手に取りやすい範疇ではないだろうか。

 これら、大きく異なるふたつの価値観を同じ評価基準で語ることはできない。そこで、「時計購入経験が少ない方に向けた本作の解説」と「時計好きから見たオシアナスとカシオの存在価値」のふたつの視点で検討してゆこう。


先進技術をエレガントなスタイリングで包んだオシアナス

オシアナス OCW-T6000A-1AJF

カシオ「オシアナス クラシックライン OCW-T6000A-1AJF」
タフソーラー(光発電)。パワーリザーブ 機能使用時:約5ヵ月、パワーセービング時:約18ヵ月。Tiケース(直径42.4mm、厚さ11.1mm)。10気圧防水。15万1800円(税込み)。

 オシアナスはカシオが展開する時計ブランドのひとつで、その名前はギリシア神話における海の神「オケアノス」から取っている。海から連想される波模様をデザインコードとして持ち、先進的な技術をエレガントなスタイリングでまとめているのが大まかなコンセプトだ。

 本作および多くのオシアナスに共通する主たる機能は、世界6局の標準電波受信による自動時刻修正やタフソーラー、フルオートカレンダー(曜日表示付き)、Bluetooth通信によるスマートフォンとの連携であり、本作はワールドタイム(第2時間帯の同時表示)やストップウォッチも備えるなど充実の内容だ。また、本作のケースはザラツ研磨が仕上げに用いられたチタン製で、ブレスレットもチタン製となる。そして、オシアナスはボトムラインであっても日本製である。


軽量で極めて良好な着用感と微調整可能なバックル

 着用感は極めて良好だ。チタン製で軽量な本作はケース厚11.1mmと薄く、ラグが短く腕に沿っており、薄い仕立てのブレスレットおよびバックルによって重量バランスが良い。チタンの熱伝導率の低さによって冷たさを感じにくく、肌になじむ印象もある。「着用しているのを忘れるぐらい」とはよく着用感の良い時計に使われるほめ言葉だが、本作はまさにそれだ。

オシアナス クラシックライン インプレッション

ブレスレットの可動域が広く、腕に沿うことも着用感の良さに寄与している。軽量かつ着用感が良いためか、厚さ11.1mmという数値よりも薄く感じる。なお、多少ゆるめに装着したとしても、軽量であるため、時計の動きが気になりにくい。

 スリムなバックルにもひと工夫あり、リリースボタンを押すことで約1cmの長さ調整が可能で、フィット感を微調整できる。バックルはプレス成型で、ケースやブレスレットの外観品質の高さに比べて素っ気ないが、着用感向上に寄与しているので筆者は減点要素にしない。


チタン外装とザラツ研磨による優れた仕上げのコンビネーション

 ザラツ研磨が施されたケースは面が整っており、均一なサテン仕上げによるマットな質感と、ポリッシュのコントラストにより、りりしい仕上がりだ。コマの遊びが適切なためか、チタン製かつ薄い仕立てのブレスレットもシャラシャラとした安っぽさは無い。近年の美観に優れる高級ステンレススティールに比べれば暗い色調となるが、優れた成型と磨き技術が相まって引き締まった印象を受け、筆者は好みであった。

オシアナス クラシックライン インプレッション

ザラツ研磨により面で構成されたケースデザインの鋭さが際立っている。これらの造形と仕上げは、本作の満足感を高める大きな要因となる。ベゼル上にはワールドタイマー用の都市名が刻まれている。


印象的かつ落ち着いた配色のダイアルデザイン

 ダークグレーのダイアルにはオシアナスのテーマである波模様が刻まれている。これが光の反射で表情を生み出しつつ、反射光を散らして視認性を高めている。また、メインダイアルとインダイアルに与えられたグリーンのリングがデザインに変化を加えている。このグリーンの調色が絶妙で、彩度は高いが明度が低くて渋い色調であり、印象的ながらシックな仕上がりだ。少し暗い環境ではグリーンがダイアルのグレーにわずかなアクセントを加える程度に落ち着いてくれる。

オシアナス クラシックライン インプレッション

筆者の手首周り周長は約18cm。ビジネス用途をイメージして厚手のOX生地のシャツに合わせた。ビジネス向けにはスポーティー過ぎず、カジュアル用途ではアクティブな印象もあるため合わせやすそうだ。太陽光の下でも視認性は良好である。


多様な表示と機能を成立させる視認性の高さ

 多くのインダイアルや針を有するダイアルデザインながら、時分針が太く、ダイアルとのコントラストが高いため現在時刻を視認しやすい。筆者の好みを言えば、分針と秒針があと1mm長ければ見栄えがさらに良くなって嬉しいところだ。

オシアナス OCW-T6000A-1AJF

多機能機の中には見づらいモデルも存在するが、本作はアナログ表示を基調にメリハリの付いたスタイルを維持している。インダイアルや見返しのグリーンがデザイン上のアクセントとなっているのも、本作の特徴のひとつだ。

 では、本作の特徴となる機能をいくつか紹介しよう。現在地点のタイムゾーンを表示するカレンダーモードでは、現在時刻を時分秒針と日・曜日で指し示す。10時位置のインダイアルが24時間表示だ。3時位置のインダイアルが第2時間帯、5時位置が第2時間帯のデイナイト表示である。2時位置のボタンを長押しすると、それぞれの表示にて第2時間帯と現在地点の時刻の役割が入れ替わる。

 8時位置のボタンを長押しするとストップウォッチモードとなり、2時位置、4時位置のボタンがスタート/ストップおよびリセットに割り当てられ、3時位置のインダイアルが60分および12時間積算計となる。なお、機能を切り替えると8時位置のインダイアルが曜日表示から機能表示へと変わる。

 先に述べた通り、時分秒針の視認性は高く、3時位置のインダイアルも読み取りやすいので、タイムゾーンを正しく把握していれば読み間違いは防げるだろう。24時間表示とデイナイト表示は小さく、読み取り辛さはあるものの優先度は低めなので、実用上は問題にならないと予想される。よって、総じて視認性は高いと評価する。


実用時に長期間の稼働を可能とするカシオの技術力の高さ

 電源供給はタフソーラーによる光発電である。タフソーラーはカシオが長年熟成してきたものであるし、本作では受光面積も広いため安定した充電が望めそうだ。発電無し、かつ機能使用の状態でのパワーリザーブは約5ヵ月、パワーセービング状態で約18ヵ月となる。パワーセービング機能とは、暗所にて一定時間が経過すると運針を停止させて節電する機能である。

 パワーセービング状態であっても時分針は現在時刻を指し続けており、測時を誤る心配はなさそうだ。こまめにパワーセービング状態に移行しているようで、時間を読み取れる程度の暗がりで秒針が停止し、室内の照明を灯すと針が動き出す様子を何度も確認した。このような頻繁な切り替わりにより、発電不足になりがちな環境下であっても実用上のパワーリザーブは5ヵ月よりも長いと予想される。


着用感が良好で時計機能が充実し、外観品質にも優れる完成度の高い1本

 本作は、軽量かつ薄い仕立てで着用感も良く、視認性に優れる。自動時刻修正によって誤差を最小限に抑えながら運用することも可能で、パワーリザーブも長く、安心して使用できる。さらに、外装品質も高い。よって、完成度が高いと評価でき、手に取れば十分に満足できることだろう。

 初めての1本として本作を選び、後により高価な腕時計を入手することになっても、本作の完成度の高さゆえに存在価値が無くなることはないはずだ。これが、深遠なる時計界の前に立つドアマンとしての筆者の見解である。


家電やコンピューターに近いクォーツ時計の進化の方向性

オシアナス クラシックライン インプレッション

タイムゾーン切り替え時に日付をまたぐ場合は、時間はかかるもののデイト表示も切り替わる。ヒーロー願望をくすぐるようなデザインは好みが分かれるところであるが、本作はダイアルの情報量が多いながら整理されており、キレのある外装によって引き締まった印象を受ける。

 以上が「時計購入経験が少ない方に向けた本作の解説」であった。では、ここから「時計好きから見たオシアナスとカシオの存在価値」について述べよう。

 文頭にて本作はクォーツ時計であると述べた。「クォーツ時計」といっても大きくふたつに分類されると筆者は考えている。ひとつは、時を刻む単機能に注目し、精度とムーブメントの外観品質を高める方向に進歩したものだ。グランドセイコー「キャリバー 9F」やシチズンの「キャリバー 0100」が現在の極北である。もうひとつは、本作をはじめとした、多機能化のために進化したものだ。これは時計というよりもむしろ、技術的には時間を刻む機能を有した家電やコンピューターに近い進化と言える。

 前者は時計技術的なアプローチであり、その進歩には大きな価値がある。それを理由に世界的にも高く評価されている。一方、後者の進化には多彩な技術を必要とする。本作を例にとれば、限られたボタンに複数の機能を割り当てることや、タイムゾーンの切り替え、並行してストップウォッチを制御する機能、電波受信やソーラー発電がそれにあたる。


稀有な存在が3社も存在する恵まれた日本市場

 カシオや、オシアナスのライバルとなる「アストロン」や「アテッサ」をラインナップするセイコーおよびシチズンは、このような多機能をコンパクトに詰め込んだ信頼性の高いムーブメントを、美観に優れた外装で包むことができるブランドと解釈できる。こういった時計ブランドは、多くはない。このような稀少な存在が日本には3社も存在する。しかも、いずれの製品も高レベルだ。この点を評価できる時計好きならば、一度、本作をはじめとした多機能クォーツウォッチを手に取ってみるのも良い選択であろう、というのが筆者の提案である。

 ここまで述べたように、本作の機能は充実しており、機械式時計よりも継続稼働時間が長いのは明らかだ。よって、日常使いのみならず、各位の基準時計として十分な仕事をしてくれることだろう。時計好きが気になって仕方がない外観品質も本作は優れている。購入を検討する理由は十分だ。少なくとも筆者は、今度の週末に店頭で比較検討してみようと考えている。


Contact info:カシオ計算機お客様相談室 Tel.0120-088925


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